著者
有田 秀穂
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.129, no.2, pp.99-103, 2007 (Released:2007-02-14)
被引用文献数
3 5 1

ストレス状態は視床下部・下垂体・副腎皮質軸および交感神経アドレナリン系の亢進に特徴づけられる.ストレスを緩和させるには,これらの制御系の働きを逆転させる必要がある.ストレス回避や安静・睡眠は消極的な方法である.一方,積極的な制御系の逆転は,涙を流すことである.流涙は,脳幹の上唾液核にある副交感神経の過剰な興奮によって誘発される.ドラマを見たり,心理療法を受けて,涙が溢れるとき,共感に関与する内側前頭前野において,特徴的な血流変化が認められる.予兆としての緩やかな血流増加と,それに続く一過性の急峻な血流増加がある.後者が出現すると,激しい涙と泣きが継続し,一時的に自己制御できなくなる.自律神経のバランスは,覚醒状態にありながら,極端な副交感神経の興奮状態にシフトする.この時,POMS心理テストでは混乱の尺度が著明に改善し,すっきり爽快の気分が現れる.すなわち,ストレス緩和の神経回路の存在が予想される.このデータを笑いのデータと比較し,涙の効用を議論する.
著者
有田 秀穂
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.129, no.2, pp.99-103, 2007
被引用文献数
1 5

ストレス状態は視床下部・下垂体・副腎皮質軸および交感神経アドレナリン系の亢進に特徴づけられる.ストレスを緩和させるには,これらの制御系の働きを逆転させる必要がある.ストレス回避や安静・睡眠は消極的な方法である.一方,積極的な制御系の逆転は,涙を流すことである.流涙は,脳幹の上唾液核にある副交感神経の過剰な興奮によって誘発される.ドラマを見たり,心理療法を受けて,涙が溢れるとき,共感に関与する内側前頭前野において,特徴的な血流変化が認められる.予兆としての緩やかな血流増加と,それに続く一過性の急峻な血流増加がある.後者が出現すると,激しい涙と泣きが継続し,一時的に自己制御できなくなる.自律神経のバランスは,覚醒状態にありながら,極端な副交感神経の興奮状態にシフトする.この時,POMS心理テストでは混乱の尺度が著明に改善し,すっきり爽快の気分が現れる.すなわち,ストレス緩和の神経回路の存在が予想される.このデータを笑いのデータと比較し,涙の効用を議論する.<br>
著者
有田 秀穂
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1279-1280, 2012 (Released:2012-11-29)
参考文献数
2
被引用文献数
4 5

To gain insight into the neurophysiological mechanisms involved in Zen meditation, we evaluated the effects of abdominal (Tanden) breathing in novices. We investigated hemodynamic changes in the prefrontal cortex (PFC), an ttention-related brain region, using 24-channel near-infrared spectroscopy during a 20-munite session of Tanden breathing in 15 healthy volunteers. We found that the level of oxygenated hemoglobin in the anterior PFC was significantly increased during Tanden breathing, accompanied by a reduction in feeling of negative mood compared to before the meditation session. Electroencephalography (EEG) revealed increased alpha band activity and decreased theta band activity during Tanden breathing. EEG changes were correlated with a significant increase in whole blood serotonin (5-HT) levels. These results suggest that activation of the anterior PFC and 5-HT system may be responsible for the improvement of negative mood and EEG signal changes observed during Tanden breathing.
著者
有田 秀穂
出版者
国際生命情報科学会
雑誌
国際生命情報科学会誌 (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, 2015

脳幹・背側縫線核のセロトニン神経はオキシトシン受容体を備えているので、脳内オキシトシンの分泌が増えるとセロトニンが活性化され、不安や緊張、鬱などストレスフルな気分を解消させる。オキシトシンは子宮収縮や乳汁分泌を促す母親のホルモンとして古くから知られてきたが、最近の研究で、男性も未婚の女性も、すなわち性別や年齢に関係なく分泌される脳内物質であり、その役割は、視床下部のストレス中枢を抑制して、HPA軸(視床下部・下垂体・副腎システム)を抑え、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌を減少させることが明らかにされた。その活性化因子は、グルーミング行動であり、マッサージ、エステ、リフレクソロジーなど心地よいスキンシップ、友人や家族との団欒、などである。これらの社会的癒し行動は、ストレス解消術として知られてきたが、その背景に、オキシトシンという脳内物質が働いていることが判明した。この点について、我々の最近の研究を紹介しながら、解説する。
著者
坂本 正裕 有田 秀穂
出版者
東邦大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本年度は、ネコの脳幹を免疫組織化学的方法で染め出し、特定の表情筋を支配する顔面神経核内の細胞群とそこに投射する伝達物質を含有する神経終末の分布様式を化学顕微鏡で調べた。1)セロトニン含有終末は、顔面神経核内のいずれの亜核においても細胞体や近位の樹状突起に対して付着している様に見えた。その中で特に腹内側核と腹外側核には強い投射が観察された。このセロトニン入力の起始細胞は脳幹の縫線核にあると考えられる、縫線核の細胞の活動は日中増大し、夜間には減少する。したがってセロトニン入力の役割が覚醒時の口唇部の緊張維持に関係していることが示唆された。2)「痛み」に関係している伝達物質とされているエンケファリンは、主に眼輪筋を支配する運動神経細胞の樹状突起の遠心部に付着しているが、セロトニンにはそのような付着がみられなかった。このことは眼の周囲の表情形成にはエンケファリンの影響が強いと考えられる。3)p物質は主に近位の樹状突起に付着しており、鼻の周囲以外の表情筋の緊張(特に口唇部において)に関与している可能性があった。上記の研究成果は、情動表出における表情筋の動きが顔面神経核レベルでの神経伝達物質含有終末の分布差に影響されていることを示唆している。しかし、表情表出パターンの生成は、より上位の中枢で行われているらしい。そこで表情パターンの発生機構を探るために、予備実験をラットを用いて行った。顔面神経核に投射を持つ扁桃核を電気刺激した結果、中心核より深い部位の刺激は、血圧の上昇とともに刺激と同側の眼球突出や耳、口唇の動きを誘発した。また、顔面神経核に逆行性標識物質を微量注入して、扁桃核の吻側部の中心核付近に標識細胞を見いだした。これらのことは扁桃核が表情表出パターンの生成に直接に関与していることを示唆した。
著者
有田 秀穂 滝本 裕之
出版者
International Society of Life Information Science
雑誌
国際生命情報科学会誌 (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.73, 2016 (Released:2016-08-01)

脳幹のセロトニン神経は各種のリズム運動(丹田呼吸法、自転車漕ぎ、ガム噛みなど)によって活性化され、その結果として、脳波に開眼覚醒状態で、β波の中にα2成分(10−13Hz)が混入するようになる。この時、全血中のセロトニン濃度が増加し、POMS心理テストでネガティブな気分の改善が認められることを既に報告してきた。通常、α波は開眼から閉眼に移行すると直ちに出現することが知られているので、開眼状態で、かつ、リズム運動実施5分位から出現するα波に着目して、本研究では各種のセラピーによってセロトニン神経の活性化を検討した。その結果、眼球のリズミカルな運動と、顔面および背部のリズミカルなマッサージがセロトニン神経の活性化に有効であることを見出した。なお、マッサージは脳内オキシトシン分泌を促す効果が知られているので、オキシトシン受容体を持つセロトニン神経が二次的に活性化されたものと推察した。