著者
坂本 達昭 細田 耕平
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.142-149, 2015 (Released:2015-12-26)
参考文献数
24

【目的】小学校5年生の給食の食べ残し状況,給食を残さず食べる自信および給食の楽しさとQOL(Quality of Life)との関連性を検討した。【方法】2014年9月から10月にかけて福井県内の小学校9校の5年生607名を対象に調査を実施し,有効回答が得られた566名を解析対象とした。QOLの測定には,6つの下位領域(身体的健康,精神的健康,自尊感情,家族,友だち,学校生活)から構成される小学生用のQOL尺度(Kid-KINDLR)を用いた。児童を給食の食べ残し状況,給食を残さず食べる自信,給食の楽しさについての質問項目の回答により,それぞれ2群に分け,QOL総得点および下位領域の得点をMann-WhitneyのU検定により比較した。【結果】男子においては,給食を残さず食べている児童は,給食を残すことがある者に比べて,また,給食を残さず食べる自信がある児童は,自信がない者に比べて QOL総得点が有意に高かった。一方,女子においては,給食の食べ残し状況および給食を残さず食べる自信の有無により,QOL総得点に差は認められなかった。給食の時間をとても楽しいと感じている児童は,男女ともにQOL総得点および精神的健康,自尊感情,友だち等の下位領域の得点が有意に高かった。【結論】給食の時間を楽しいと感じることは,男女ともに精神的健康,自尊感情,友だち等の下位領域を含めたQOLの良好さに関連することが示唆された。
著者
山本 浩範 竹井 悠一郎 香西 美奈 田中 更沙 坂本 達昭 池田 涼子
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.514-518, 2013-09-25 (Released:2017-08-10)

1,25-Dihydroxyvitamin D_3, an active form of vitamin D_3, which plays a central role in the regulation of calcium and bone homeostasis through vitamin D receptor (VDR). In 1994, Morrison and colleagues first reported that bone mineral density was associated with single nucleotide polymorphisms (SNPs) in the intron 8 of human VDR gene. In 1997, we clarified the whole structure of the human VDR genome and reported the relationship between FokI and Cdx-2 SNPs in the human VDR gene and bone density in Japanese women. Osteoporosis is known as one of multifactorial genetic diseases and its occurrence is associated with not only genetic factors but also environmental factors, lifestyle such as diet and exercise, aging, and abnormal bone mineral metabolism. Therefore, it can be expected that the identification of osteoporosis-related genes including the VDR gene will lead to the development of new methods to treat and to protect against osteoporosis, although there are several statistical problems for data analysis.
著者
新保 みさ 中西 明美 會退 友美 衛藤 久美 坂本 達昭 中村 彩希
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.313-318, 2022-11-30 (Released:2022-12-26)
参考文献数
14

背景:日本健康教育学会栄養教育研究会は2019年度からナッジをテーマとした活動を行っている.本稿では2021年度の活動として2022年3月26日に開催した公開学習会「第2弾!今,注目のナッジを健康行動に活用するには~ナッジと健康行動理論の関係~」について報告する.内容:学習会は3部構成で,第1部は竹林正樹氏による講義「一発でわかるナッジの基本」,第2部は栄養教育研究会からの提案「健康行動理論とナッジについて」,第3部はグループワークによる「ナッジを効かせたチラシ作り」であった.参加者は63名であった.学習会に対するアンケート(回答者数57名,回答率90%)では回答者の98%が「非常に満足した」または「まあ満足した」と回答した.満足した理由には,チラシ作りのグループワークやグループワーク後の発表に対する講師の講評などが多くあげられた.「今後もナッジを勉強し続けたいですか」という問いに,全ての回答者が「そう思う」または「少しそう思う」と回答した.結論:本学習会を通じて,参加者のナッジについての理解を深めることができた.理論と実践を含めた学習会は新たな学びを提供し,今後の学習意欲も高めたことが示唆された.
著者
満崎 雅咲 坂本 達昭
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.373-379, 2021-12-01 (Released:2022-02-08)
参考文献数
16

【目的】給食喫食前の食事量調節の有無と給食の食べ残しの関連を明らかにすることを目的とした。【方法】熊本市内の公立中学校(5校)に通う中学2年生673名を対象として,2020年9月に調査を実施した(横断研究)。調査項目は,自己申告による身長と体重,給食の食べ残し,給食喫食前の食事量調節(主食およびおかず),主観的な喫食時間の長さ,体型願望等である。無効回答を除いた559名(男子299名,女子260名)を解析対象とした。給食喫食前の食事量調節と給食の食べ残しとの関連を検討するために,従属変数は給食の食べ残し(いつも全部食べる/残すことがある),独立変数を給食喫食前の食事量調節(ほとんど減らさない/減らすことがある)として,属性,身長別標準体重,主観的な喫食時間の長さ,体型願望等を調整したロジスティック回帰分析を行った。【結果】給食喫食前に主食の量を減らすことがある者は(調整オッズ比[95%信頼区間]:男子4.64[1.69~12.72],女子4.18[2.09~8.35]),給食を残すことがある者が多かった。同じく,喫食前におかずの量を減らすことがある者は(男子9.06[3.32~24.76],女子4.12[2.13~8.35]),給食を残すことがある者が多かった。【結論】男女共に喫食前に食事量を減らすことがある者は,給食を残す可能性が高いことが示唆された。
著者
近藤 秋穂 山口 愛友 中下 千尋 細田 耕平 坂本 達昭
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.142-150, 2021-06-01 (Released:2021-07-09)
参考文献数
21

【目的】調理に対する自信とセルフエスティーム(以下,SEとする)を高めることをねらいとした非対面式による調理プログラムの効果を明らかにすること。【方法】対象は小学4~6年生(29名)とした。前後比較デザインにより全5回のプログラムを実施した。内容は,参加者が自宅で調理動画を視聴し,調理することである。希望者には食材を無料提供した。プロセス評価は,各回終了時に参加者に動画のわかりやすさ,難易度等をたずねた。第5回終了後には,保護者にも調査を実施した。プログラムの効果は,プログラム参加前後の調理に対する自信とSEの変化から評価した。SEの評価は,先行研究により信頼性と妥当性が確認された尺度(得点範囲8~32点)を用いた。【結果】プロセス評価において,参加者と保護者の評価は良好であった。プログラム参加前より参加後は,自分で料理をうまく作る自信があると回答した者が多く(p=0.003),「ガスコンロや包丁を使わずに,自分一人でいろいろなおかずを作る」ことの自信度も高かった(p<0.001)。SEの平均値(標準偏差)は,プログラム参加前22.9(5.2)よりも参加後25.0(4.4)が高値であった(p=0.002)。【考察】今後,対照群を設けて検討する必要があるものの,本プログラムは調理に対する自信とSEを高める可能性が示唆された。
著者
坂本 達昭 細田 耕平 バズビートリニティー さくら 早見(千須和) 直美
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.246-255, 2019-08-31 (Released:2019-08-31)
参考文献数
25

目的:食事中のスマートフォン等の利用頻度および食事中にスマートフォン等を利用しないルールの有無とその遵守状況と家の食事の楽しさとの関連を検討すること.方法:熊本県と福井県の高校1・2年生1,897名に調査を依頼した(横断調査).調査内容は,属性,家の食事の楽しさ,共食頻度,食事中のスマートフォン等の利用頻度,食事中にスマートフォン等を利用しないルールの有無とその遵守状況である.回答者1,813名から無効回答等を除外し,残った1,718名を解析対象とした.従属変数を家の食事の楽しさ,独立変数を食事中のスマートフォン等の利用頻度,食事中にスマートフォン等を利用しないルールの有無とその遵守状況として,ロジスティック回帰分析を行なった.モデル1は調整変数を投入せず,モデル2は属性,モデル3は属性と共食頻度を調整変数とした.結果:モデル3において,食事中にスマートフォン等を利用しないルールがあり守っていること(男子:調整オッズ比2.24,95%信頼区間1.37-3.65,女子:調整オッズ比1.69,95%信頼区間1.13-2.54)は,家の食事の楽しさと関連していた.女子のみ,食事中にスマートフォン等をほぼ毎日利用していることと食事の楽しさには負の関連が認められた.結論:男女ともに食事中にスマートフォン等を利用しないルールがあり守っていることは,家の食事の楽しさと関連していた.
著者
坂本 達昭 早見(千須和) 直美 細田 耕平
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.3-12, 2018-02-28 (Released:2018-02-28)
参考文献数
27

目的:家の食事の楽しさと中学生と保護者の食事中のスマートフォン等の利用および共食頻度の関連を検討すること.方法:福井県内の中学2年生762名を対象に横断調査を実施した(有効回答者759名).調査内容は,基本属性,家の食事の楽しさ,中学生・保護者の食事中のスマートフォン等の利用,共食頻度とした.分析では食事中のスマートフォン等の利用は「週に1日以上使うことがある」群と「使うことがない」群に,共食頻度は「週4日以上」と「週3日以下」の2群に分けた.家の食事の楽しさを従属変数,食事中のスマートフォン等の利用,朝食・夕食の共食頻度を独立変数として男女別にロジスティック回帰分析を行った.結果:家の食事が楽しい者は,男子308名(82.6%),女子329名(85.3%)であった.多変量ロジスティック回帰分析の結果,男子の食事の楽しさには母親が食事中にスマートフォン等を利用しないこと(調整オッズ比(AOR):2.60,95%信頼区間(95%CI):1.29-5.25)が関連し,女子は父親が食事中にスマートフォン等を利用しないこと(AOR: 2.29,95%CI: 1.15-4.57),夕食の共食頻度(AOR: 2.62,95%CI: 1.37-5.04)が関連していた.結論:中学生が家の食事楽しいと感じるためには,保護者は食事中のスマートフォン等の利用を控えるべきであることが示唆された.
著者
坂本 達昭 細田 耕平
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.141-149, 2017 (Released:2017-11-10)
参考文献数
29

【目的】朝食の共食機会がほとんどない中学生の中で,QOL(Quality of Life)が良好な者の家族との食事のあり方の特徴を明らかにすること。【方法】2015年9月に福井県内中学校7校の中学2年生797名を対象に調査を実施し,762名より有効回答を得た。質問項目は,属性,家族との食事のあり方,家の食事の楽しさならびにQOLとした。家族との食事のあり方については,朝食および夕食の共食頻度,平日および休日の夕食の食事時間,食事中に家族が話を聞く程度,食事中に注意される頻度等をたずねた。QOLの測定には中学生用のQOL尺度(Kiddo-KINDLR)を用いた。朝食の共食機会が「ほとんどない」者を,対象者全員のQOL総得点の中央値でQOL高得点群およびQOL低得点群に2分し,両群の家族との食事のあり方を男女別に比較した。【結果】朝食の共食頻度がほとんどない者は300名であり,そのうちQOL高得点群は男子63名,女子56名であった。男女共にQOL高得点群はQOL低得点群と比べ,夕食の共食頻度が高く,食事中に家族がよく話を聞き,家族から注意される頻度が低く,家の食事を楽しいと感じている者が多かった。【結論】朝食の共食機会がほとんどない中学生において,夕食の共食頻度が高いこと,食事中に家族が話をよく聞くこと,家の食事を楽しいと感じていることは,QOLが良好な者の特徴であることが示唆された。
著者
坂本 達昭 春木 敏 吉本 優子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.67-75, 2013 (Released:2013-05-23)
参考文献数
22

【目的】教科学習における食に関する指導の進め方について解説したWeb教材「先生のための食育教室」を開発し,その利用可能性を検討した。【方法】大阪府下の小学校でチームティーチング形式により実施された教科学習における食に関する指導について解説したWeb教材を開発し,教諭・栄養教諭および栄養教諭免許取得をめざす学生の視聴により評価を試みた。評価アンケートは,①画面レイアウト,操作性等の技術面,②学習意欲を高めるためのARCSモデルによる注意,関連性,自信,満足感の4項目,③教材としての有用性の側面についてたずねた。併せて自由記述による意見を求めた。【結果】教諭19人,栄養教諭12人,学生84人がアンケートに回答した。技術面およびARCSモデルの4項目に関する問いに,教諭・栄養教諭および学生は,それぞれ80%以上が肯定的に回答した。教材の有用性に関して「教科学習における食に関する指導を実施するために役立つ」という問いに教諭・栄養教諭の77.4%が「そう思う」と回答した。「教科学習における食に関する指導の進め方について知ることができた」という問いに学生の96.4%が肯定的に評価した。他方,自由記述による意見からスライド送りやナレーションの速さ等の改善点が挙げられた。【結論】評価結果から当教材は,教諭・栄養教諭ならびに栄養教諭をめざす学生向けの教材として利用可能であることが示唆された。
著者
坂本 達昭 八竹 美輝 春木 敏
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.76-85, 2013 (Released:2013-05-23)
参考文献数
26
被引用文献数
2 2

【目的】担任教諭を主体とした4学年社会科および総合的な学習の時間における食に関する指導を実施し,その実施可能性と学習成果を検討した。【方法】2012年6月から7月に,大阪府下の公立小学校4学年児童106名を対象として,社会科「くらしとごみ」および総合的な学習の時間「環境について考えよう」における食に関する指導を実施した。社会科および総合的な学習の時間のねらいに加え,食べ物を大切にする態度を形成し,残さず食べる自己効力感を高め,給食を残さず食べる行動形成をねらいとした。前後比較デザインにて実施し,授業時の児童のワークシート記述内容および学習前(5月),学習直後(7月),学習終了2ヵ月後(9月)に実施したアンケート,残さず食べる行動形成の指標とした給食の月間残食率から学習成果を検討した。【結果】ワークシート記述には,残さず食べようとする意欲や,給食を残さず食べる行動形成に至った記述が多くみられた。アンケート結果より,嫌いな食べ物がある時でも残さず食べる自己効力感は,学習直後,学習終了2ヵ月後に有意に向上した。学習前の残食率に比べ,学習期間(6・7月),学習終了2ヵ月後(9月)の残食率は低値を示した。【結論】栄養教諭配置校において本研究の授業は実施可能であり,学習により児童は残さず食べる自己効力感を高め,残さず食べる行動形成を経て,学習後も給食を残さず食べる行動を維持した。