著者
會退 友美 赤松 利恵 杉本 尚子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.323-329, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
13
被引用文献数
1

【目的】幼児期前期の子どもの嫌いな食べ物は,1歳6ヶ月児から3歳児にかけて変化するかを既存の縦断的データを用いて質的に検討する。【方法】静岡県伊東市保健センターにおいて,平成12年度から15年度に出生した子どもを対象に実施した,10ヶ月児,1歳6ヶ月児,3歳児健康診査の全てを受診した1,313人分の問診票データを利用した。項目は,10ヶ月児の属性,1歳6ヶ月児と3歳児の属性および好き嫌いの有無,各年齢における嫌いな食べ物(自由記述)を用いた。また,1歳6ヶ月児と3歳児の両方で好き嫌いがあった者(以下,あり→あり)の内,嫌いな食べ物の内容を抽出して変化の内容を分類した。【結果】1歳6ヶ月児と3歳児における好き嫌いの有無から4群を作成した結果,“あり→あり”456人(38.7%),“あり→なし”150人(12.7%),“なし→あり”233人(19.8%),“なし→なし”339人(28.8%)であった。“あり→あり”のうち,両年齢で嫌いな食べ物が継続しているかを調べたところ,“嫌いな食べ物継続” 91人(7.7%),嫌いな食べ物が継続しなかった“嫌いな食べ物変化”は154人(13.0%),“判断不能の者”211人(17.9%)の3群に分けられた。【結論】1歳6ヶ月児と3歳児の両年齢で好き嫌いがあると回答している場合でも,その約半数は嫌いな食べ物が変化しており,その嫌いな食べ物の変化は多様であった。
著者
深澤 向日葵 吉井 瑛美 會退 友美 赤松 利恵 長谷川 智子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.338-344, 2021-12-01 (Released:2022-02-08)
参考文献数
18

【目的】幼児の偏食と健康状態,夕食における食品群別摂取量,栄養素等摂取量との関連を検討することを目的とした。【方法】2018年12月,1次調査として幼児を持つ母親を対象にインターネット調査を実施し,そのうち希望者から抽出された者を対象に2019年3~5月,2次調査として写真法による食事調査を実施した。1次調査より幼児の偏食,健康状態,属性を用い,2次調査より幼児の夕食の食品群別摂取量,栄養素等摂取量を用いた。偏食得点の三分位値で分けた低群,中群,高群の属性,健康状態および食品群別摂取量,栄養素等摂取量の違いを,χ2 検定,Kruskal-Wallisの検定および多重比較で検討した。【結果】1次調査の解析対象者は1,899人,2次調査は118人であった。幼児の偏食得点三分位値は14,17点であり,低群614人(32.3%),中群708人(37.3%),高群577人(30.4%)となった。偏食低群には,発熱しにくい者,風邪をひきにくい者,疲れにくい者が多かった(それぞれp<0.001)。食品群別摂取量では野菜類に有意差がみられ,偏食高群で摂取量が少なかった(p=0.016)。栄養素等摂取量は,偏食3群間で違いはみられなかった。【結論】偏食低群の幼児の健康状態は良好であった。偏食高群の幼児は,夕食で野菜類の摂取量が少なかったが,栄養素等摂取量は偏食の程度による違いはみられなかった。
著者
新保 みさ 中西 明美 會退 友美 衛藤 久美 坂本 達昭 中村 彩希
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.313-318, 2022-11-30 (Released:2022-12-26)
参考文献数
14

背景:日本健康教育学会栄養教育研究会は2019年度からナッジをテーマとした活動を行っている.本稿では2021年度の活動として2022年3月26日に開催した公開学習会「第2弾!今,注目のナッジを健康行動に活用するには~ナッジと健康行動理論の関係~」について報告する.内容:学習会は3部構成で,第1部は竹林正樹氏による講義「一発でわかるナッジの基本」,第2部は栄養教育研究会からの提案「健康行動理論とナッジについて」,第3部はグループワークによる「ナッジを効かせたチラシ作り」であった.参加者は63名であった.学習会に対するアンケート(回答者数57名,回答率90%)では回答者の98%が「非常に満足した」または「まあ満足した」と回答した.満足した理由には,チラシ作りのグループワークやグループワーク後の発表に対する講師の講評などが多くあげられた.「今後もナッジを勉強し続けたいですか」という問いに,全ての回答者が「そう思う」または「少しそう思う」と回答した.結論:本学習会を通じて,参加者のナッジについての理解を深めることができた.理論と実践を含めた学習会は新たな学びを提供し,今後の学習意欲も高めたことが示唆された.
著者
吉井 瑛美 深澤 向日葵 會退 友美 赤松 利恵 長谷川 智子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.345-354, 2021-12-01 (Released:2022-02-08)
参考文献数
24
被引用文献数
1

【目的】幼児の野菜摂取を促進するための手がかりを得るため,夕食の野菜摂取量で幼児を3群に分け,食事内容を比較すること。【方法】2019年3~5月,4~6歳の幼児121人を対象に,写真を用いた連続5日間の食事記録調査を実施した。幼児の夕食の野菜や栄養素等摂取量,1食あたりの野菜の種類数,5日間の主食,主菜,副菜等の出現回数,副菜および副菜を含む料理の内容等を調べた。1日あたりの野菜摂取量の25,75パーセンタイル値を用いて,対象者を3群に分け,食事内容を比較した。【結果】解析対象者は118人(97.5%)だった。夕食の野菜摂取量の中央値(25,75パーセンタイル値)は,54(39,74)g/食であった。野菜摂取量高群は他の群に比べ,エネルギー摂取量,1,000 kcalあたりの野菜摂取量,食塩相当量が多かった。高群の1食あたりの野菜の種類数は5.0(4.2,5.8)種類で最も多かった。副菜の5日間の延べ出現回数が3群間で異なり,高群が最も多く6.0(5.0,7.0)回であった。高群は副菜および副菜を含む料理として,野菜生もの,野菜汁物,野菜煮物の順に高頻度で摂取していた。【結論】幼児の夕食の野菜摂取量別の食事内容は異なっていた。野菜摂取量高群は,夕食1食あたりの野菜の種類が5種類であり,1食あたりに少なくとも1つの副菜を摂取し,野菜の生もの,汁物,煮物等の料理を高頻度で摂取していた。
著者
會退 友美 赤松 利恵 林 芙美 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.181-187, 2012 (Released:2012-06-29)
参考文献数
16
被引用文献数
8 5

【目的】成人を対象とした食に関する主観的QOL(subjective diet-related quality of life (SDQOL))の信頼性と妥当性を検討する。【方法】平成21年11~12月に内閣府が実施した「食育の現状と意識に関する調査」に回答した2,936名分のデータを用いた(回収率58.7%)。対象者の性別は,男性1,344名(45.8%),女性1,592名(54.2%)であった。SDQOLの項目として作成された6項目について,信頼性の検討では,内的整合性としてクロンバックα係数を確認し,妥当性の検討では,構成概念妥当性と基準関連妥当性を検討した。基準関連妥当性の検討には,生活のゆとり感と生活満足度の項目を用いてSpearmanの順位相関係数(rs)を求めた。【結果】探索的因子分析,確証的因子分析を行った結果,4項目から成るモデルで適合度が良いことが示された(モデル適合度指標:GFI=0.99,AGFI=0.96,CFI=0.99,RMSEA=0.08; 90%CI: 0.06~0.10)。クロンバックα係数は,0.72であり,信頼性も確認された。また,基準関連妥当性の検討では,SDQOLと生活のゆとり感(rs=0.16,p<0.001)および生活満足度(rs=0.38,p<0.001)の間に正の相関がみられ,これらが高いと回答した者の方が,SDQOLの合計得点が高かった。【結論】本研究により,SDQOLの信頼性と構成概念妥当性,基準関連妥当性が確認された。今後は,SDQOLと食生活との関連を検討する必要がある。
著者
會退 友美 衛藤 久美
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.279-289, 2015 (Released:2015-12-03)
参考文献数
31
被引用文献数
1

目的:共食行動と健康・栄養状態ならびに食物・栄養素摂取との関連について国内の研究動向を把握すること.方法:発行年は2001年~2011年までとし,データベース検索では,CiNiiと医学中央雑誌を用いて「共食OR孤食OR(家族AND一緒AND食事)」で検索した.ハンドサーチでは,日本健康教育学会誌,栄養学雑誌,日本家政学会誌の3誌を対象とした.表題,抄録,本文を精査し,採択基準を満たす20件を採択した.結果:全ての研究が横断研究であり,最も多い研究対象者は学童・思春期の11件であった.共食行動の調査項目で最も多かったのは,共食頻度(回数)をたずねた論文11件であり,回答の選択肢は1週間単位の頻度であった.全ての採択論文を分析した結果,食行動と健康・栄養状態の関連では,体格との関連はなかったが,共食頻度と良好な精神的健康状態には正の関連がみられた(6件/7件).食物・栄養素摂取との関連では,共食頻度とよい食事内容の間には正の関連があった(3件/3件).その他,健康的な食品の摂取頻度(3件/6件),食事の質と正の関連がみられた(1件/1件)が,栄養素と関連はみられなかった(0件/1件).結論:共食頻度と,良好な精神的健康状態および健康的な食品の摂取頻度には正の関連がみられた.しかし全ての報告が横断研究であり,子どもを対象とした報告が多かったことから,今後縦断研究も含めた国内での研究の積み重ねが必要である.
著者
會退 友美 赤松 利恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.174-181, 2016

【目的】保育士と管理栄養士が連携し,スプーン・フォークと箸の正しい持ち方,食事中の正しい姿勢を身につけることをねらいとしたプログラムを実施し,その結果と課題を検討すること。<br>【方法】2014年4~9月,都内A保育所(0~5歳児:59人)にて,3~5歳児(32人)を対象に,食事のマナーに関するプログラムを実施した。プログラムでは,5歳クラスのみ,自分自身で振り返りを行うセルフモニタリングを行った。プログラムの評価方法として,対象児の保護者アンケート,保育士による観察記録,保育士へのインタビュー中のコメントからプログラムの課題を整理した。<br>【結果】プログラムに参加した子どもは,3歳クラス11人,4歳クラス11人,5歳クラス10人で,合計32人(参加率100%)であった。プログラムを実施した結果,食事中の姿勢,スプーン・フォークや箸の持ち方について,保育士から「まったくできない」と評価される子どもの数が少なくなった。また,保護者も子どもの前向きな変化を感じていた。保育士対象のインタビューにおいて,「子どもが楽しんで参加する様子がみられた」という肯定的な回答がみられた一方で,「子どもが飽きずに参加できるように教室の内容に変化をつける必要がある」など,いくつかの改善点があげられた。<br>【結論】プログラムに対する肯定的な意見が得られた一方で,プログラム内容でいくつかの改善点がまとめられた。