著者
坂田 祐介
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.9-62, 1988-03-15
被引用文献数
3

ツバキ属植物の花弁のアントシアン色素分析法の確立と色素分布の概要について検討した.1.1次元にn-BAW(II), 2次元にn-BAW(I)の展開溶媒を用いたTLCでもっとも優れた色素スポットの分離がみられ, 供試ツバキに色素1から色素14までの合計14個のアントシアン色素を検出した.またこれらの性状を精査した結果, モノサイド群の低次色素系とダイサイド群と推定できる高次色素系とに分類したが, 種によって両色素系の分布が異なることを予測できた.2.煮沸風乾花弁の色素構成や色素蓄積比率は, 新鮮花弁や凍結真空乾燥花弁のそれとまったく同じで, 試料花弁の調整・保存に煮沸後風乾する方法が可能となった.3.蕾の発達に伴う色素生成を見ると, 開花6日前の花弁は開花したものと同じ色素構成や色素蓄積を示し, 幅広い時期に及ぶ花弁採集が可能といえる.HPLCを採用して野生型ユキツバキ花弁のアントシアン色素を分析した結果, これまでのTLCでシアニジン3-グルコシドとした色素スポットは, 実際はシアニジン3-グルコシドとガラクトシドの混合物であった.ツバキ属植物においてシアニジン3-ガラクトシドの存在を見出したのは初めてのことである.2次元のTLCとHPLCを用い代表的なツバキ栽培種の花弁のアントシアン色素を精査し, 色素分布を検討した.1.ヤブツバキ, ユキツバキ, サザンカ, カンツバキ, ハルサザンカは低次色素系を主体とし, トウツバキは高次色素系を主体とした.またワビスケは高次と低次色素系の混在する品種群であった.2.低次色素系ではヤブツバキとユキツバキは色素1を主体とし, サザンカとカンツバキは色素5を主体とした.ハルサザンカは色素1と色素5を等量持つヤブツバキとサザンカの中間型であった.また高次色素系ではトウツバキは色素11,13を主体とした.3.ユキツバキは色素1に占めるシアニジン3-ガラクトシド量が多く, ヤブツバキは少なかった.これに対し, サザンカとカンツバキはシアニジン3-ガラクトシドをほとんど持たなかった.4.構成色素の蓄積の変異はヤブツバキとハルサザンカは色素1と色素5間で, トウツバキは色素11と色素13間で, またユキツバキはシアニジン3-ガラクトシドとグルコシド間で見られた.これに対し, サザンカとカンツバキには変異はさほど見られなかった.5.以上の色素分布の様相から色素1,色素5,色素10・12,色素11・13,シアニジン3-ガラクトシドおよびデルフィニジン系色素を指標にすれば, ツバキ栽培種を類型化でき, かつ品種分化の実態を把握できることを明らかにした.2次元のTLCを用い種間雑種起源のツバキ栽培種の花弁のアントシアン色素を精査し, 色素分布の様相から色素の遺伝を検討した.1.サルウィンツバキ×ヤブツバキ群では色素10,12,トウツバキ×ヤブツバキ群では色素11,13,サザンカ×トウツバキ群では色素11,13,またサルウィンツバキ×トウツバキ群では色素10,12をそれぞれ主体したが, ヤブツバキ×トウツバキ群では低次色素系, 色素10,12および色素11,13の量はまちまちであった.2.以上の色素分布の様相から, 色素生成はサルウィンツバキ型>トウツバキ型>ヤブツバキ(サザンカ)型の順に遺伝的に優性と考えられる.2次元TLCとHPLCを用い本邦産カメリア節ツバキ野生型の花弁のアントシアン色素を精査し, 色素分布の様相を検討した.1.ヤブツバキ, 本邦産ホウザンツバキ, リンゴツバキは低次色素系の色素1と色素5を主体とし, かつ色素1に占めるシアニジン3-ガラクトシド量は少なかった.これに対しユキツバキ, 台湾省産ホウザンツバキは色素1は100%を占め, かつ色素1に占めるシアニジン3-ガラクトシドはグルコシドとほぼ等量と, 多かった.2.構成色素の蓄積の変異はヤブツバキ, 本邦産ホウザンツバキ, リンゴツバキは色素1-色素5間で, またユキツバキ, 台湾省産ホウザンツバキはシアニジン3-グルコシド-ガラクトシド間で見られた.3.以上の色素分布の様相に加え, 種の分布域, 形態および地史を踏まえると, ヤブツバキとリンゴツバキは本邦産ホウザンツバキから変異分化し, ユキツバキと台湾省産ホウザンツバキは残存隔離した古型ツバキから分化したと推定できる.2次元TLCとHPLCを用い中国大陸産カメリア節ツバキ野生型の花弁のアントシアン色素を精査し, 色素分布の様相を検討した.1.サルウィンツバキ, ピタールツバキ・ピタール種は高次色素系の色素10,12を主体とし, トウツバキ, ピタールツバキ・雲南種は高次色素系の色素11,13を主体とした.2.宛田紅花油茶は低次色素系に高次色素系が混在したが, 低次色素系では色素1,5を主体とし, 色素1に占めるシアニジン3-ガラクトシド量は少なかった.3.南山茶は低次色素系のみで, 色素1,5を主体とし, 色素1に占めるシアニジン3-ガラクトシド量はほぼゼロに等しかった.4.浙江紅花油茶は低次色素系のみで, 色素1が100%を占め, 色素1に占めるシアニジン3-ガラクトシドはグルコシドとほぼ等量と, 多かった.5.ホンコンツバキは低次
著者
ウディン A. F. M. ジャマル 橋本 文雄 西本 慎一 清水 圭一 坂田 祐介
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.40-47, 2002-01-15
被引用文献数
2 9

開花前後の生育過程におけるトルコギキョウ[Eustoma grandiflorum (Raf.) Shinn.]花弁中のフラボノイド色素と花色変化について調査した.供試品種は, 'ブライダルバイオレット', 'あすかの朝', 'あずまの粧', 'ミッキーローズ'の4品種であり, 高速液体クロマトグラフによる色素分析から, 前二者はデルフィニジン主体型, 'あずまの粧'はペラルゴニジン主体型, 'ミッキーローズ'はシアニジン主体型であった.また, これらのアントシアニジンに加え, ペオニジンやマルビジンなどのメチル化アントシアニジンも含まれていることが明らかとなった.4栽培品種において, 花弁アントシアニンの生成は開花前に始まり, 開花後その総含量は増加していく傾向が認められ, 花弁フラボノール含量は, 開花前には最高値に達することが確認された.また, 開花日には, 開花前のアントシアニジン組成に加え, 他のアントシアニジンが新たに加わることが観察された.開花後は, アントシアニジンの比率はほぼ一定に留まり花色は変化しなかった.'ミッキーローズ'は, シアニジンを花弁中の優勢色素とする品種として確認された初めての例である.なお, 本研究に供試したトルコギキョウ品種では, 花弁フラボノイド色素間のコピグメント効果は発現していないものと推察された.
著者
李 家華 周 紅傑 清水 圭一 坂田 祐介 橋本 文雄
出版者
農業生産技術管理学会
雑誌
農業生産技術管理学会誌 (ISSN:13410156)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.73-79, 2008
参考文献数
18
被引用文献数
2

製造発酵過程における雲南プーアル茶のポリフェノールとカフェイン含量について,発酵期間を設定するため,雲南省鎮康県,双江県および景谷県の3地域で収集した日干しした緑茶(晒青緑茶)を発酵処理開始後10日毎に茶葉サンプルを採取し,分析を行った.(-)-エピガロカテキン3-ガレート(EGCG),(-)-エピカテキン3-ガレート(ECG),テオガリン(TG),ストリクティニン(STR),1,4,6-トリ-O-ガロイル-β-D-グルコース(1,4,6-tri-O-G-β-D-G)の5種の含量は発酵に伴って有意(1%レベル)に減少したが,40日以降のそれらの含量の減少の程度は小さくなった.また,(-)-エピカテキン(EC)と(-)-エピガロカテキン(EGC)含量は発酵開始後10日目までに増加し,その後急激に減少に転じた.これに対して,没食子酸(GA)含量は発酵40日目まで有意(1%レベル)に増加し,その後有意(1%レベル)に減少した.この結果,従来から報告されている,発酵中に微生物の産生するエステラーゼによってエステル類が加水分解を受けてGAが生成することを追認し,併せて加水分解型タンニンの加水分解もGA含量の増加に関係していることを初めて明らかにした.一方,紅茶の紅色色素であるテアフラビン類は検出されなかったことから,発酵によりプーアル茶に生成している色素類は紅茶のものとは異質のものであることが明らかとなった.カフェイン含量は発酵に伴い徐々に増加し,発酵開始後60日目には最高値となった.以上の結果から,プーアル茶製造における発酵期間は40日間で十分であると結論づけられた.
著者
李 家華 周 紅傑 清水 圭一 坂田 祐介 橋本 文雄
出版者
農業生産技術管理学会
雑誌
農業生産技術管理学会誌 (ISSN:13410156)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.73-79, 2008-11-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
18
被引用文献数
1

製造発酵過程における雲南プーアル茶のポリフェノールとカフェイン含量について,発酵期間を設定するため,雲南省鎮康県,双江県および景谷県の3地域で収集した日干しした緑茶(晒青緑茶)を発酵処理開始後10日毎に茶葉サンプルを採取し,分析を行った.(-)-エピガロカテキン3-ガレート(EGCG),(-)-エピカテキン3-ガレート(ECG),テオガリン(TG),ストリクティニン(STR),1,4,6-トリ-O-ガロイル-β-D-グルコース(1,4,6-tri-O-G-β-D-G)の5種の含量は発酵に伴って有意(1%レベル)に減少したが,40日以降のそれらの含量の減少の程度は小さくなった.また,(-)-エピカテキン(EC)と(-)-エピガロカテキン(EGC)含量は発酵開始後10日目までに増加し,その後急激に減少に転じた.これに対して,没食子酸(GA)含量は発酵40日目まで有意(1%レベル)に増加し,その後有意(1%レベル)に減少した.この結果,従来から報告されている,発酵中に微生物の産生するエステラーゼによってエステル類が加水分解を受けてGAが生成することを追認し,併せて加水分解型タンニンの加水分解もGA含量の増加に関係していることを初めて明らかにした.一方,紅茶の紅色色素であるテアフラビン類は検出されなかったことから,発酵によりプーアル茶に生成している色素類は紅茶のものとは異質のものであることが明らかとなった.カフェイン含量は発酵に伴い徐々に増加し,発酵開始後60日目には最高値となった.以上の結果から,プーアル茶製造における発酵期間は40日間で十分であると結論づけられた.
著者
上野 敬一郎 野添 博昭 坂田 祐介 有隅 健一
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.409-417, 1994 (Released:2008-05-15)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

鹿児島県下で, 新しい系統と思われる2種類のLycorisが見出された. これら両系統は著者らの諸特性調査により, 同一起源の雑種, つまりL. traubiiとL. sanguineaの交雑により生じたものであると推定されている. 本報はこれら両系統の成立を実証するため,人為的な交雑を行い, 両親種とこの2系統のLycoris(L. sp. AおよびB) ならびに得られた交雑実生にっいて形態学的, 細胞学的な観察から比較検討を行うとともに, 両種の分布ならびに開花期の調査も併せて行った.L. traubii×L. sanguineaおよびL. sanguinea×L. traubiiの交雑における結実率は, それぞれ7.3%および30.1%であった. 正逆双方の交雑で得られた実生の形態は, 両親種の中間的形質を示し, 実生の出葉期,葉の光沢, 葉先の形および葉長/葉幅比などの形態的特性は, L. sp. AおよびBとそれぞれ一致していた.また, 交雑実生の染色体数ならびに核型は, 異数体や部分的に染色体欠失を生じた個体も存在したが, 基本的にはL. sp. AおよびBとそれぞれ一致する5V+12R型と4V+14R型であった.L. sanguineaおよびL. traubiiの分布ならびに開花期を調査した結果, 九州の中~南部にかけて秋咲き性のL, sanguineaが存在することを見出し, 特にL. sp. AおよびBが濃密に分布する鹿児島県山川町成川で,開花期が完全に一致するL. sanguineaとL. trattbiiが同所的に分布する事実をつきとめた.以上の結果からこの2系統のLycorisは, 秋咲きのL. sanguineaと9V+4R型のL. traubiiとの自然交雑により, 鹿児島県薩摩半島南部, おそらくは山川町成川で誕生したものであろうと推断した.
著者
劉 政安 青木 宣明 伊藤 憲弘 坂田 祐介
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.818-825, 2002-11-15
被引用文献数
6 2

中国ボタン品種群の中原品種グループから9品種と, 対照品種として日本ボタン'連鶴'の合計10品種を供試し, 花芽分化・形成過程と促成能力について調査した.調査開始の6月下旬にはすべての品種においてがく片が観察され, 花芽分化の開始が確認された.その後の中国ボタンの花芽形成パターンは, (1) : 花芽分化スピードが早く, 夏季に花芽形成のスピードが鈍ることなく順調に進み, 10月上旬に雌ずい形成が完了するグループ('白鶴臥雪'など3品種), (2) : 花芽分化スピードが中程度で, 10月中旬に雌ずい形成が完了するグループ('珊瑚台'など3品種), (3)花芽分化スピードが遅く, 雌ずい形成は11月上旬にほぼ完了するグループ('錦綉球'など3品種)の3つに分類できた.促成栽培における中国ボタンの萌芽率は低温期間が4週間と短くても100%を示したが, 日本ボタン'連鶴'は極端に低下した.また, 中国ボタン'白鶴臥雪'は低温期間が短くても開花率は比較的高かった.開花の見られた中国ボタン品種における開花はすべての処理区で年内に終了した.年内促成には, 80%以上の開花率を示した'白鶴臥雪', '鳳丹', '淑女装'の3品種が適すると考えられる.
著者
松添 直隆 山口 雅篤 川信 修治 渡部 由香 東 華枝 坂田 祐介
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.138-145, 1999-01-15
被引用文献数
9 24

本邦の6品種およびバングラデシュの8品種・系統のナス(Solanum melongena L.)を供試して, 果実への暗黒処理が果色および果皮のアントシアニン組成に与える影響を調査した.本邦の栽培品種と'Singhnath'の果色は"紫みの黒", 'KL purple'と'Borka'は"暗い赤みの紫"および'Uttara'は"くすんだ赤紫"であった, SL系統のうち'SL 28', 'SL 32'および'SL 50'は"黄緑"と"緑"の縞に一部"赤紫"の着色, 'SL 65'は"黄緑"に一部"赤紫"の着色がみられた.'早生米国大丸'以外の品種・系統の果皮の主要アントシアニンはdelphinidin 3-p-coumaroylrhamnosylglucoside-5-glucoside (Nasunin)で, その含有率は69.1∿87.7であった.一方, '早生米国大丸'の主要アントシアニンはdelphinidin 3-rhamnosylglucosideで, その含有率は79.5%であった.暗黒処理により, '早生米国大丸'の果色は"暗い赤紫"になったが, 果皮のアントシアニン組成は対照区と違いがなかった.また, 暗黒処理により, '千両2号', '庄屋大長'および'Borka'は"黄みの白"に一部"赤みの紫"を含む果色に, そして'SL 50'は"黄みの白"に一部"灰黄赤"を含む果色に変化したが, 果皮の主要アントシアニンの含有率には変化は認められなかった.'久留米長', '十市', '御幸千成', 'KL purple', 'SL 28', 'SL 32'および'SL 65'は暗黒処理下では果皮におけるアントシアニン系色素の発現は認められなかった.
著者
坂田 祐介
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

研究実績1.ミツバツツジ,クルメツツジへの耐暑性の導入:ミツバツツジ交配系統ではオンツツジ,ハヤトミツバツツジ,サクラツツジを,クルメツツジ交配系統ではマルバサツキをそれぞれ交配親にしたF_1を高温・高湿など不適環境下で生育させ,生存した個体群から耐暑性に富む個体を選抜した.2.ヒラドツツジへの四季咲き性の導入:キンモウツツジ×ヒラドツツジの交配で,当年9月から翌年1月にかけて高率で開花する四季咲き性の個体群(系統)を作出した.これらのうち9月もしくは10月中に早期開花する個体へヒラドツツジを戻し交雑し,BC1種子を得た.3.ミツバツツジへの常緑性の導入:常緑のサクラツツジを交配親に用いると,常緑性のF_1が100%得られることを明らかにした.4.クルメツツジ交配系統への二重咲き性の導入:二重咲き花のクルメツツジを花粉親に用いた交配で,F_1に二重咲き花が50%の割合で出現したことから,二重咲き性は優性形質で,この形質に関してクルメツツジはヘテロの遺伝子型を持つことを明らかにした.5.ミツバツツジ,クルメツツジ,ヒラドツツジの新花色の育種:ミツバツツジとクルメツツジ交配系統では,F_1にはいずれの組合わせも一方の交配親の持つ紫紅色が優位に出現した.多彩な花色を獲得するにはF_2の作出が必要で,F_1を自殖しF_2種子を得た.これに対しヒラドツツジ交配系統では,F_1には両親の花色を示す個体と両親の中間の花色を示す個体が出現した.HPLCによる花弁の色素分析の結果,優性に発現するデルフィニジン系色素生成に関わる遺伝子がヘテロ型で存在することを明らかにし,優れた花色の個体を選抜してそれらへのヒラドツツジの戻し交雑を行った.
著者
橋本 文雄 田中 見佳 前田 寛子 清水 圭一 坂田 祐介
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.428-434, 2000-07-15
被引用文献数
9 36

デルフィニウム栽培品種におけるがく片の色(21個体)について検討した.明度(明るさ)と彩度(鮮やかさ)について, CIELAB表色系座標上非常に淡いものから鮮明なものに分布し, 一次回帰式において有意な相関が認められた.また, 色度(aおよびb)について, その相関関係から白色系(ピンク色系), 紫色系(淡紫色系)および青色系(淡青色系)の3群に分類された.主アントシアニン色素の分析により総アントシアニン含量が花色に重要であり, 中でも3種類のアントシアニン(アシル基が結合していないデルフィニジン配糖体, 二基のパラーヒドロキシ安息香酸をアシル基として有するビオルデルフィン並びに四基のパラーヒドロキシ安息香酸をアシル基として有するシアノデルフィン)の含量が3群の花色表現型に直接反映した.これら3種のアントシアニン類は, 色相による3群の花色分類における含有アントシアニンに概ね対応しており, 従って, パラーヒドロキシ安息香酸によるアシル化アントシアニンの蓄積は, デルフィニウム花色の青色化を引き起こす要因であることが明らかとなった.