- 著者
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西池 季隆
坂田 義治
加藤 崇
長井 美樹
小西 雅樹
- 出版者
- The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
- 雑誌
- 日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
- 巻号頁・発行日
- vol.105, no.10, pp.1065-1070, 2002-10-20 (Released:2008-03-19)
- 参考文献数
- 20
- 被引用文献数
-
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平成6年から平成14年の間に市立吹田市民病院において治療した下顎骨骨折35例を検討した.男女比は2:1であった.年齢別では20歳代が最も多く全体の31%を占めた.受傷原因では,交通事故52%,殴打31%,転倒•転落17%であった.骨折部位の頻度は,関節突起33%,おとがい部25%,角部22%,体部10%,枝部10%であった.30歳未満では受傷原因として交通事故および殴打が有意に多く,30歳以上で転倒•転落が多かった.交通事故や転倒•転落では関節突起骨折が有意に多く,殴打では他の部位の骨折が多かった.治療は,チタンあるいは吸収性プレートによる観血的治療および顎間固定30例,顎間固定のみ2例,保存治療1例,他院での治療2例であった.顎間固定の期間は平均42日であった.6ヵ月以上経過を追えた22例中後遺症は6例であった.痛み4例,咬合不全1例,顎関節雑音1例,顔面神経側頭枝の麻痺1例であった.関節突起骨折では他の部位の骨折に比較して有意に後遺症が多く発生していた.今後の当院における下顎骨骨折治療の検討課題は,顎間固定期間の短縮化,吸収性プレートの適用の拡大,関節突起骨折の治療方法の検討であると考えられた.