著者
上西 崇弘 山本 隆嗣 竹村 茂一 坂田 親治 久保 正二
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.109, no.11, pp.1872-1877, 2012 (Released:2012-11-05)
参考文献数
51

欧米における肝内胆管癌の罹患率および死亡率は,1970年以降に増加傾向が認められ,その原因として従来は危険因子と考えられていなかったウイルス性肝炎の持続感染による慢性肝障害が注目されている.ウイルス性肝炎を背景とした肝内胆管癌は肝細胞癌と類似した臨床病理学的特徴を有し,その切除成績は比較的良好と考えられているが,さらなる詳細な検討によりウイルス性肝炎関連肝内胆管癌に対する標準的な治療戦略の確立が望まれる.
著者
久保 正二 竹村 茂一 坂田 親治 田中 肖吾 中沼 安二 圓藤 吟史
出版者
一般社団法人 日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.763-771, 2014-12-31 (Released:2015-01-28)
参考文献数
30
被引用文献数
1

有機溶剤の高濃度暴露を受けた印刷労働者に,胆管癌が高率に発症した.胆管癌診断のきっかけの多くはγ-GTP高値の肝機能異常,CA19-9などの腫瘍マーカー上昇や超音波検査での異常所見であった.画像診断上,腫瘤像,胆管狭窄像,主腫瘍による末梢側胆管拡張像に加えて,主腫瘍と関係のない限局性の肝内胆管拡張像がみられた.主腫瘍は,腫瘤形成型あるいは胆管内発育型肝内胆管癌や乳頭型肝外胆管癌で,その多くは総肝管から肝内胆管第3次分枝の比較的大型胆管に存在した.広範囲の胆管に慢性胆管傷害像およびbiliary intraepithelial neoplasia(BilIN)やintraductal papillary neoplasm of the bile duct(IPNB)などの前癌病変がみられ,多段階発癌機序が推測された.ジクロロメタンや1,2-ジクロロプロパンにさらされる業務による胆管癌が,業務上疾病に分類され,新たな職業癌として認識されるようになった.
著者
松田 恭典 山本 隆嗣 坂田 親治 西澤 聡 家根 由典 徳原 大豪
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.82, no.8, pp.1531-1536, 2021 (Released:2022-02-28)
参考文献数
12
被引用文献数
1

49歳,男性.双極性感情障害の既往あり.自殺企図にて降圧剤数種を大量に内服し救急搬送された.初診時より低血圧,高熱,腹痛を認めたが,症状は速やかに改善した.食事を再開すると症状が増悪するため,下部消化管内視鏡と注腸造影を施行したところ,上行結腸下部から回腸末端にかけて多発する不整形潰瘍を認め,著明な狭窄を呈した遠位回腸が描出された.保存的加療による治癒は望めないと判断し,手術を施行した.遠位回腸約75cmにわたり非連続性の壁肥厚と狭窄を認めたため,同範囲を一括切除した.術後27日で軽快退院した.病理組織所見では,粘膜は潰瘍化し,粘膜下層から筋層上層まで広範な線維化を認め,うっ血する毛細血管や静脈も認められたが,切除標本のいずれの部位にも血栓や動脈狭窄は認められなかった.よって,降圧剤の大量内服に起因するnon-occlusive mesenteric ischemia(NOMI)により生じた,粘膜障害とその深層の線維性狭窄であったと判断した.