著者
出口 博則 山口 富美夫 坪田 博美 嶋村 正樹 榊原 恵子 倉林 敦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

7種のセン類,2種のタイ類,1種のツノゴケ類を含む,10種類のコケ植物について,葉緑体ゲノムの全塩基配列を新たに決定した.これまで,セン類は,タイ類やツノゴケ類と比べ,葉緑体ゲノムの構造が大きく異なっていると考えられていたが,セン類の系統基部に位置する分類群では,タイ類やツノゴケ類と非常によく似た葉緑体ゲノム構造をもつことが分かった.進化を通じておきたいくつかの遺伝子の欠失イベントは,セン類の主要分類群の分岐順序を考える上で有効な系統マーカーとなることが示唆された。高等植物の葉緑体で知られる,線状ゲノム分子,多量体ゲノム分子がコケ植物にも存在することを初めて明らかにした.
著者
坪田 博美
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.15-27, 2008-02-20 (Released:2017-03-25)
参考文献数
81
被引用文献数
1

この総説は,日本植物分類学会奨励賞の受賞講演「コケ植物の分子系統学的研究の現状」(2007年3月16日,新潟大学)についてまとめたものである.受賞講演では,おもに私自身の研究の歴史と,予報的な内容ではあるが,現在のコケ植物の大きなレベルでの系統関係について触れた.また本稿では,時間の関係で講演の際に取り上げることのできなかったコケ植物の分子系統学的研究について,私がこれまで関わってきた研究を中心に,その概略を述べるとともに,コケ植物の分子系統学的研究の現状を紹介する.とくに,分子系統学的研究によって明らかになったことと,未だ明らかになっていないことを含めて紹介したい.