著者
祖父尼 淳 森安 史典 佐野 隆友 藤田 充 糸川 文英 土屋 貴愛 辻 修二郎 石井 健太郎 池内 信人 鎌田 健太郎 田中 麗奈 梅田 純子 殿塚 亮祐 本定 三季 向井 俊太郎 糸井 隆夫
出版者
一般社団法人 日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.199-209, 2015-04-20 (Released:2015-05-08)
参考文献数
18

High intensity focused ultrasound(HIFU)治療は,その超音波発信源を多数取り付けた発信源から超音波を腫瘍の目的部位の1点に集束させ,体外から組織の焼灼を行う治療法である.焦点領域のみを80~100度に加熱し,熱エネルギーおよびキャビテーションの作用により組織を凝固壊死させ,焦点領域以外の介在組織にはほとんど影響を与えないという治療法である.われわれは切除不能膵癌に対するHIFU治療の安全性と有効性を検証するため,Yuande Bio-Medical Engineering社のFEP-BY02 HIFU Systemを用いて臨床試験を2008年12月より行った.膵癌に対するHIFU治療は問題点もあり,さらなる検討や症例の蓄積が必要であるが,われわれの検討では切除不能膵癌に対し安全にHIFU治療を行うことが可能であり,今後,予後不良な膵癌への低侵襲治療のひとつとなりうる可能性が示唆された.
著者
森安 史典 糸井 隆夫 永川 裕一 土田 明彦
出版者
日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.210-218, 2015-04-20 (Released:2015-05-08)
参考文献数
22

IRE(Irreversible electroporation)は,2008年に米国で市販され,軟部組織の悪性腫瘍の治療に広く使われるようになった.中でも膵癌は放射線療法以外によい局所療法がないことから,IREの治療対象として注目されている.IREはnon-thermal ablationの局所治療法であり,胆管,膵管,血管,消化管などの構造を温存して,細胞のみに細胞死を惹起せしめることから,切除不能局所進行膵癌の治療法として期待されている.本稿では,IREの原理から臨床応用まで,膵癌の新治療法について概説する.
著者
杉本 勝俊 森安 史典 安藤 真弓 佐野 隆友 宮田 祐樹 平良 淳一 小林 功幸 今井 康晴 中村 郁夫
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.290-292, 2014-05-20 (Released:2014-05-30)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1

We report a woman in her late 60s with hepatocellular carcinoma in whom the tumor was successfully treated by irreversible electroporation (IRE). Vascular-phase contrast-enhanced US (CEUS) with Sonazoid and dynamic CT at 1 day after treatment showed no tumor enhancement, but the safety margin of ablation appeared to be insufficient. On the other hand, in Kupffer-phase CEUS, the ablation zone showed a clear contrast defect with a sufficient ablation margin, indicating cell death of hepatocytes, cancer cells, and Kupffer cells in this area following IRE treatment. Very similar findings were observed in hepatobiliary-phase Gd-EOB-DTPA-enhanced MRI at 7 days after treatment. These results suggest that both Kupffer-phase CEUS and hepatobiliary-phase Gd-EOB-DTPA-enhanced MRI may be useful for assessing the ablation zone in patients who have undergone IRE.
著者
垣見 和宏 森安 史典
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

肝がんに対するRFA治療を受けた患者に対して免疫細胞治療を実施するために、in vitroにおける樹状細胞(DC)培養条件の最適化を検討し、肝がん患者に対する臨床試験の開始を計画した。腫瘍特異的な免疫応答を誘導するためにDCには、1.RFA治療により熱変性した腫瘍細胞をuptakeする能力、2.免疫応答を誘導するために必要なCD80, CD86などの共刺激分子の発現、3.リンパ節へのホーミングに必要なケモカイン受容体CCR7の発現、が必要である。そこで我々は、1.immature DCをOK432で刺激して2-6時間後のDC(maturating DC)は、OK432刺激を除いても、それ以降mature DCへの成熟過程が進行し、16時間後にはCD80, CD86, CCR7などの分子を発現すること。2.肝癌細胞Huh7 cellをRFA治療と同様の加熱条件(85℃で10分間)で熱変性させた後、さまざまな成熟段階のDCとover nightで共培養すると、maturating DCは、熱変性した腫瘍細胞を効率よく取り込むこと。3.さらにmaturating DCは腫瘍の取り込みによって成熟過程を妨げられることなくmature DCへと変化することを明らかにした。これらの結果に基づいて、肝がんRFA治療後に腫瘍局所内へ投与するDCは、GM-CSFとIL-4によって誘導した末梢血単球由来のimmature DCを、OK432を用いて2時間刺激したmaturating DCの状態で用いることに決定した。東京医科大学病院において、肝がんの治療を受けた患者を対象に臨床試験を実施するためにプロトコールを作成した。倫理委員会での承認を受け臨床試験を開始し、肝がん患者の登録を開始した。