著者
大和 雅之 篠崎 和美 堀 貞夫 清水 達也 青柳 隆夫
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

我々は細胞シート工学を提案し、その体系的追求に尽力している。細胞シート工学とは、生分解性高分子製足場を一切用いることなく、細胞-細胞間接着と細胞自身が培養の間に作り出す細胞外マトリックスによりシート状をなす細胞集団すなわち細胞シートを根幹単位として、細胞シートを用いて組織構造を再構築する技術の総称である。通常、培養細胞の回収に用いられるトリプシンなどのタンパク質分解酵素は細胞-細胞間接着を破壊してしまうため、通常、細胞シーとして回収することはできない。この問題を解決するため、我々は温度応答性培養表面を開発した。温度応答性培養表面には、温度に応じて親水性・疎水性を大きく変化させる温度応答性高分子が共有結合的に固定化されており、タンパク質分解酵素を用いることなく、温度を下げるだけで培養細胞をまったく非侵襲的に回収することができる。細胞シートは底面に培養の間に沈着した細胞外マトリックスを接着したまま回収されるため、容易に他の表面に接着する。温度応答性培養皿を用いて作製した角膜上皮細胞シートをウサギ角膜上皮幹細胞疲弊症モデルに移植し、十分な治療成績が得られることを確認した。通常、角膜移植では縫合が必須であるが、温度応答性培養皿を用いて作製した角膜上皮細胞シートは5分程度で角膜実層に接着し、縫合の必要がまったくなかった。また、細胞-細胞間接着が維持されているため、移植直後からきわめて良好なバリア機能を有していた。これらの成果をふまえ、大阪大学眼科との共同研により平成14年12月より臨床応用を開始し、全例で治療に成功した。本技術は熱傷やスティーブンス・ジョンソン症候群などの角膜上皮幹細胞疲弊症の治療に大きく貢献することが期待された。
著者
谷治 尚子 堀 貞夫
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.E78-E82, 2012-01-31

近年網膜再生治療研究が進展している。なかでも網膜色素上皮(RPE)細胞移植については、加齢黄斑変性や網膜色素変性症などで失われたRPEの機能を補うために様々な移植方法が試されてきた。,我々は温度応答性培養皿で作製した網膜色素上皮細胞シートの兎網膜下移植について発表した。有色家兎のRPE細胞を温度応答性賠償皿で培養し、色素を持ったRPE細胞シートを酵素処理を行わずに単純に温度を下げるのみで非侵襲的に回収できた。回収したシートは3ポート硝子体手術で白色家兎の網膜下に移植した。移植したシートは網膜下に生着し細胞懸濁液の注射よりも効果的に移植できた。,しかし、この実験ではRPEシートが単層のため脆弱で、広げたまま目的の場所に移植することが難しいことから移植方法の改良が課題であった。工学系の研究者の協力を得て、先端は流体圧の変化によってしなやかに曲げ運動を行うバルーンアクチュエーターで構成された移植デバイスが試作された。シート支持体の上でシートを保持したまま支持体を筒状にシリコンチューブの中に収納し、移動後また支持体をひろげ、角膜、水晶体、硝子体、神経網膜を除去した豚眼のブルッフ膜及びRPE上に細胞シートを貼り付けることが出来た。,今後、脆弱なRPE細胞シートをどのように移植するか、医学と工学の知恵が結集すればRPE細胞シート移植は飛躍的に進歩すると思われる。
著者
上芝 秀博 金井 孝夫 植木 キク子 亀山 和子 堀 貞夫 小山 生子
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.282-282, 1991-03-25

第9回学内病理談話会 平成2年11月10日 東京女子医科大学南別館2階大会議室