著者
日谷光 一郎 山本 禎子 竹内 忍 宮下 洋 白井 厚治
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.447-451, 2004-06-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
13

症例は28歳, 女性. 2002年4月に高血糖を指摘されたが, 眼底写真では網膜症は認めず, 精査後通常インスリン療法が開始された. 4月に15.596であったHbA1c値は, 8月には7.996に減少した. 眼科所見は6月の時点で軽症非増殖網膜症であったが, 9月には中等度増殖網膜症に進行したため汎網膜光凝固を開始し, 強化インスリン療法を開始した. その後のHbA1c値は6~796で経過し, 網膜症は鎮静化した. 血糖是正に際しては, 今回のように急激に網膜症が進行する症例があるので, 血糖是正を開始する時には, 内科と眼科の密接な連携が必要であると思われた. また, 一時的に網膜症が増悪しても, 良好な血糖コントロールを継続し, 適切な時期および方法の眼科的治療を行うことによって網膜症の進行が阻止できると思われる.
著者
山下 英俊 蕪城 俊克 山本 禎子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

角膜の透明性維持のためには角膜内皮細胞及び上皮細胞の構造、機能が保たれていることが重要である。本研究では上記2種類の細胞の機能制御におけるサイトカイン、増殖因子の影響を検討するためにTGF-βスーパーファミリーの各因子及びその受容体の発現を観察した。角膜上皮、内皮両細胞ともに、TGF-β1、2、3を発現していた。さらに受容体としては、TGF-βI型受容体,II受容体、アクチビンI、IA型受容体,II受容体、骨形成因子(BMP)IA、IB型受容体,II受容体、ALK-1が発現しており、多くの因子によりその機能が多重に制御されていることが示唆された。角膜上皮細胞を剥離してその創傷治癒モデルをラット角膜で作成し上皮細胞の再生過程でのTGF-βスーパーファミリーの働きを検討したところ、上皮細胞が遊走、進展する際にはTGF-β1、2、3および受容体は発現しているが、上皮が創傷部を覆った時期には一時的に受容体の発現が低下し、上皮の層状化に際しては再び受容体が発現することが示された。これらのことより上皮創傷治癒過程においてTGF-βは初期の細胞遊走進展及び後期の上皮細胞の分化に関与することが示された。角膜内皮細胞は角膜透明性維持のためには主要な働きをしている。コンフルエントな条件ではG0/G1期で停止している。その制御メカニズムを検討した。細胞周期をG0/G1期からS期へと進行させる因子としてTGF-β1、2が有効でありアクチビンAは促進、抑制双方の作用が見られなかった。TGF-β1、2が細胞周期進行の作用機序としてはPDGFを介する二次的な作用であることが分かった。機能分子としての水及びイオンチャンネルのクローニングは牛角膜内皮細胞ライブラリーから現在塩素イオンチャンネルの一部フラグメントがPCR法を用いた研究から得られて、その全長を得るべく研究が進行している。角膜内皮細胞が何らかの因子を分泌する機能を有することが示唆されている。