- 著者
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宮園 浩平
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年医学会
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, no.3, pp.162-166, 1999-03-25 (Released:2009-11-24)
- 参考文献数
- 27
Transforming growth factor (TGF)-βスーパーファミリーの因子にはTGF-βの他, アクチビン, 骨形成因子 (bone morphogenetic protein) などが含まれる. これらの因子は in vivo では生体の形づくりなどに密接に関わっている. TGF-βスーパーファミリーの蛋白質は2種類のセリン-スレオニンキナーゼ型レセプター (I型とII型) に結合し, この結果, Smad と呼ばれる一群の蛋白質が活性化される. Smad はその構造と機能から R-Smad, Co-Smad, Anti-Smad の3つに分けられる. 活性化されたTGF-βI型レセプターはR-Smad (Smad2やSmad3) と直接結合する. この結果, R-Smad のセリンがリン酸化され, Co-Smad であるSmad4と複合体を作り核内へ移行して, 標的遺伝子の転写を調節する. Smad複合体はさまざまな転写因子と複合体を作って間接的にDNAと結合するが, 一方でSmad3やSmad4はDNAに直接結合する. さらに Smad は転写の coactivator であるp300/CBPとも結合し大きな複合体を形成する. これに対し Anti-Smad はレセプターによるR-Smad の活性化を抑制する働きをもつ. Smad はこうして標的遺伝子の転写を調節し, 細胞の増殖抑制や, 分化・アポトーシスの制御などを行っている. TGF-βレセプターや Smad の異常は大腸癌や膵臓癌の進展と密接に関わっていることが最近明らかとなった.