著者
松本 美希 河邉 憲太郎 近藤 静香 妹尾 香苗 越智 麻里奈 岡 靖哲 堀内 史枝
出版者
一般社団法人 日本児童青年精神医学会
雑誌
児童青年精神医学とその近接領域 (ISSN:02890968)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.618-627, 2016-08-01 (Released:2017-05-17)
参考文献数
35

本研究は,自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorders: ASD)児の認知特性,特に視覚性注意機能の特徴をCog Health認知機能検査を用いて明らかにすることを目的とした。愛媛大学医学部附属病院精神科に外来受診中の7~15歳のASD児37例と,7~15歳の健常対象児131例を対象とした。ASD群にはCog Health認知機能評価の1カ月以内にWechsler Intelligence Scale for Children(WISC)を用いて知的水準を評価し,両群に対しCog Health認知機能検査を用いて注意機能およびワーキングメモリーの評価を行った。知的能力とCog Health各課題の正答率の関連については,遅延再生課題の正答率のみ知能指数と有意な関連があった。遅延再生を除いた各課題の誤回答数,見込み反応数,時間切れ反応数,正答率,反応速度の結果を比較したところ,注意分散課題において対照群に比べ,ASD群の見込み反応数が有意に低く,反応速度が有意に遅く,正答率が有意に高く,注意分散課題でのASD児の優位性が明らかとなった。ASD児の中枢統合性の障害や,視覚探索能力の高さ,字義通り性などの認知機能を反映している可能性が示された。
著者
市川 宏伸 齊藤 万比古 齊藤 卓弥 仮屋 暢聡 小平 雅基 太田 晴久 岸田 郁子 三上 克央 太田 豊作 姜 昌勲 小坂 浩隆 堀内 史枝 奥津 大樹 藤原 正和 岩波 明
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.399-409, 2018-04-15

抄録 小児ADHDの症状評価で世界的に汎用されるADHD-RS-Ⅳは,海外にて成人ADHDに対応する質問(prompts)と組み合わせて成人向けに使用されている(ADHD-RS-Ⅳ with adult prompts)。本研究は,日本語版promptsを作成し,日本人の成人ADHD患者36名および非ADHD成人被験者12名を対象に,その信頼性および妥当性を検討した。その結果,評価者内および評価者間信頼性の指標である級内相関係数は高く,内部一貫性の指標であるCronbach αは高い値を示した。CAARS日本語版およびCGI-Sとの相関で検討した妥当性も良好であり,かつADHD患者と非ADHD被験者との判別能力を検討するROC解析においても優れた結果であった。成人用prompts日本語版は,ADHD-RS-Ⅳとともに用いることで,成人ADHDの症状評価の手段として有用であると考えられた。
著者
河邉 憲太郎 越智 麻里奈 松本 美希 近藤 静香 伊藤 瑠里子 芳野 歩美 妹尾 香苗 堀内 史枝 上野 修一
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.545-557, 2018-05-15

抄録 本研究は愛媛大学病院精神科外来において,成人期発達障害における発達障害の特徴を,診療パスの内容により検討することを目的とした。対象は2013〜16年に当院を初診し,発達障害の精査を希望した18歳以上の患者104名(男性57,女性47)である。診療パスは生育歴の聴取や主訴の問診票と,AQ-J,ASRS,CAARS,BDI-Ⅱ,SFS,SRSなどの質問紙とWAIS-Ⅲで構成されている。対象者のうちASD29例,ADHD18例,精神疾患に該当しない18例の3群を比較した。結果,ASD群はADHD群と比較して有意に男性,精神症状の主訴が多く,SFSが低値,WAIS-ⅢのVIQが高値であった。ADHD群は不注意の主訴,既婚者の割合,ASRSが有意に高かった。診療パスは精神症状や社会機能の把握に一定の有用性があった。本研究は予備的研究であり,診療パスにはさらなる検討が必要である。
著者
堀内 史枝
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

定型発達児および発達障害児の不眠症の有病率に大きさ差はなかったが,発達障害児の方が,睡眠についての不安が強い可能性が示唆された.入眠までの環境調整を確実にすることが重要であり,その上で認知行動療法的アプローチを加えることが有用であると考えられた.行動療法的アプローチとしては,消去法,入眠儀式,時間制限法などがあり,これらを組み合わせて行うことが有用であるが,症例毎にその特性が異なることから画一的な治療では十分な効果を得ることは困難であり,個々の症例にあわせた治療をの選択が必要である.今後は,大規模調査により本人・家族から得た情報より判定したタイプ別類型と,それに基づく治療法を確立していく必要がある.