著者
葛西 真記子 CRAIG Rooney S. 岡橋 陽子 伊藤 瑠里子 久保 祐子 戸口 太功耶
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の第一の目的は、LGBTの青少年に対する支援団体を作り、LGBTの当事者や家族の理解のための支援につながる情報提供やカウンセリングを実施することである。第二の目的は、「LGBTセンシティブ・プログラム」を開発しその効果を検証することである。児童生徒と関わる機会の多い学校現場の教職員や臨床心理士に実践し、LGBTに対する意識向上をはかる。本研究の結果、支援団体の活動により県内外の当事者、支援者が集まり、臨床心理学的支援や情報提供を行うことが可能となった。また、「LGBTセンシティブ・プログラム」の実践によって教員や心理職の意識の変容が見られ、学校現場や臨床現場で適切な対応が可能となった。
著者
伊藤 瑠里子
出版者
愛媛大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

【研究目的】自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder : ASD)における性別違和の特徴を明らかにする検査指標を開発することを前提とし, ASD者の性別違和についてジェンダー・アイデンティティ尺度を用いてコントロール群と比較検討して特徴を明らかにすることを目的とした.【研究方法】愛媛大学医学部附属病院精神科を受診したASD患者をASD群, 一般公募にて参加した対象者をコントロール群としてジェンダー・アイデンティティ尺度と成人用自閉スペクトラム指数日本語版(Autism-Spectrum Quotient : AQ)を実施した. 対象年齢は社会との繋がりを認識し始め, 性別違和を自覚する15歳以上30歳未満とした. コントロール群は, AQの得点がカットオフ値以上の事例は除外した.【研究成果】ASD群6名(M:F=4:2, 平均21.5±3.77歳)と, コントロール群21名(M:F=7:14, 平均24.38±2.21歳)を対象として統計的分析を行った。① ジェンダー・アイデンティティ尺度内の低次4因子及び高次2因子についての2群間比較・低次4因子の一つである, 自己の性別が社会とつながりを持てている感覚である“社会現実的性同一性”はASD群が有意に低値で, 自己の性別が他者と一致しているという感覚である“他者一致的性同一性”では, 有意に低値であった(<.01). 自己の性別が一貫しているという感覚である“自己一貫的性同一性”においてもASD群が有意に低値である傾向がみられた(<.05).・自己の性別での展望性が認識できているという感覚である“展望的性同一性”, “社会現実的性同一性”の高次因子の一つである現実展望的性同一性の総得点平均はASD群が有意に高かった(>.05).②AQ総点とジェンダー・アイデンティティ尺度間の相関・ジェンダー・アイデンティティ尺度の高次2因子, 低次4因子に対してAQの総得点の相関を調べた. ASD群では, AQ総点と, 現実展望的性同一性, 展望的性同一性が負の相関がみられた(>.05). また, 一致一貫的性同一性, 自己一貫的性同一性において正の相関がみられた(>.05). コントロール群では相関はみられなかった.【考察】ASD者は, 自己のジェンダー・アイデンティティと他者の認識が一致していないと感じている. また, 自己のジェンダー・アイデンティティを生かした社会生活の展望が曖昧であり, ASD者の中でもより強い特性を持つ者は, その傾向が強まることが示唆された.
著者
河邉 憲太郎 越智 麻里奈 松本 美希 近藤 静香 伊藤 瑠里子 芳野 歩美 妹尾 香苗 堀内 史枝 上野 修一
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.545-557, 2018-05-15

抄録 本研究は愛媛大学病院精神科外来において,成人期発達障害における発達障害の特徴を,診療パスの内容により検討することを目的とした。対象は2013〜16年に当院を初診し,発達障害の精査を希望した18歳以上の患者104名(男性57,女性47)である。診療パスは生育歴の聴取や主訴の問診票と,AQ-J,ASRS,CAARS,BDI-Ⅱ,SFS,SRSなどの質問紙とWAIS-Ⅲで構成されている。対象者のうちASD29例,ADHD18例,精神疾患に該当しない18例の3群を比較した。結果,ASD群はADHD群と比較して有意に男性,精神症状の主訴が多く,SFSが低値,WAIS-ⅢのVIQが高値であった。ADHD群は不注意の主訴,既婚者の割合,ASRSが有意に高かった。診療パスは精神症状や社会機能の把握に一定の有用性があった。本研究は予備的研究であり,診療パスにはさらなる検討が必要である。