著者
堀江 有里
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.163-189, 2019-09-30 (Released:2020-01-07)

「キリスト教は同性愛を受け入れない」としばしば表現されてきたように、性的マイノリティへの差別を牽引してきた宗教のひとつである。本稿は、キリスト教の性規範を問うクィア神学の観点から、性的マイノリティへの差別を醸成するひとつであるホモフォビア(同性愛嫌悪)を考察する。事例として、キリスト教の教義に基づいて形成される「家族の価値」尊重派の主張を批判的に検証する。かれらは異性愛の結合と生物学的なつながりのある子を「正しい家族」として措定し、終身単婚制の重要性を強調することで、同性婚への反対表明をおこなってきた。本稿では、合衆国において、「宗教右派」を中心とするかれらの主張が拡大してきた経緯を追ったうえで、聖書テクストの事例をとりあげ、そこから家族の「正しさ」を措定するのは困難なことをあきらかにする。このような作業をとおして、男性/異性愛中心主義の価値観のなかで奪われてきた性的マイノリティの「行為主体の可能性」を模索する。
著者
風間 孝 クレア マリィ 河口 和也 清水 晶子 谷口 洋幸 堀江 有里 釜野 さおり 菅沼 勝彦 石田 仁 川坂 和義 吉仲 崇
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

英米起源のクィア・スタディーズを日本の文化・社会において適用する場合の可能性を明らかにするために研究を行った。その結果、(1)ナショナリズムとグローバリゼーションに関わる問題系が、日本におけるジェンダーやセクシュアリティの政治的・文化的な統御と管理とを考えるにあたっても欠かすことのできない問題として急激に浮上しつつあること、(2)セクシュアリティおよびジェンダーが階層・階級、人種・民族、地域、国籍といった軸と交差しながら存在しているとの視座から研究を進めていくことの重要性、を確認した。