著者
筒井 隆夫 堀江 正知
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

暑熱職場で作業している労働者の熱中症を予防するために、作業中の労働者の深部体温を外部から連続モニタリングする手法を開発した。研究当初は作業中に測定可能な深部体温として鼓膜温を検討したが、赤外線を使用した非接触式の鼓膜温計は測定精度に問題があり、また、接触式の鼓膜温計は安全性に問題があるため、耳栓で密閉した外耳道空間の体温を深部体温として評価した。6名の男子学生を被験者として、温度35℃、湿度60%の人工気候室内で、20分間の75Wの運動と15分間の休憩を1セットとし、これを3回繰り返させ、外耳道温、直腸温、食道温、平均皮膚温の推移を測定した。その結果、外耳道温から代表的な深部体温である直腸温を推定することが可能であった。次に、作業者の外耳道温を外部からモニタリングできる装置を検討した。汎用の無線式温度測定用データロガーに外耳道温測定用プローブを取り付け、測定温や環境温を変化させ、熱伝対を使用した標準温度計と比較してデータロガーの校正を行った。その結果、このデータロガーの精度は、測定温度が30度から40度の範囲では、環境温に関係なく±0.2度以内であり、外耳道温の測定が可能と考えられた。そこで、さまざまな暑熱作業として、夏季から初秋にかけてメンテナンス作業、リサイクル作業、焼却炉の解体作業を選び、27名の作業者にデータロガーを使用した外耳道温測定器を装着し、作業中の外耳道温の推移を測定した。その結果、外耳道温の最高値や平均値と作業後の疲れや疲労との間に相関関係が見られた。外耳道温の最高値は暑熱ばく露の許容値を、外耳道温の平均値は暑熱ばく露量を表していると考えられた。外耳道温の最高値や平均値は、熱中症予防の指標に有用であると考えられた。
著者
寶珠山 務 堀江 正知 筒井 隆夫 藤野 善久 田中 弥生 永野 千景 高橋 謙
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.367-376, 2005-12-01
被引用文献数
1

2002年にわが国で過重労働による健康障害防止対策の行政指針が示されてから3年が経過し, その成果が期待されている.本研究では, 長時間労働と心血管系疾患との関連について体系的文献レビューを実施し, 過重労働による健康障害の科学的根拠の最新の知見をまとめた.医学文献情報データベースPub Medを用いて, 関連キーワードによる検索および所定の条件による文献の取捨選択を行い, 原著論文12編を採択した.今回の結果から長時間労働と心血管系疾患の関連を強く支持する新たな科学的根拠は得られなかったが, 活力疲弊(Vital exhaustion)など心理社会的要因を扱ったものや交互作用項などを含む統計解析モデルを用いたものが認められ, これらの手法はわが国における今後の研究に応用できる可能性が考えられた.
著者
藤野 善久 堀江 正知 寶珠山 務 筒井 隆夫 田中 弥生
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.87-97, 2006-07-20
被引用文献数
8 34 19

労働環境をとりまく厳しい状況のなか,労働者のストレスやうつ・抑うつなどメンタルヘルス不全が増加していると指摘されている.これに伴い,精神障害等の労災補償に関する請求件数,認定件数ともに著しい増加傾向にある.労働時間,対人関係,職場における支援,報酬などは労働者のメンタルヘルスに影響を与える要因と考えられている.平成16年には厚生労働省が「過重労働・メンタルヘルス対策の在り方に係る検討会」報告書を発表し,長時間の時間外労働を行ったことを一つの基準として対象者を選定し,メンタルヘルス面でのチェックを行う仕組みをつくることを推奨した.しかしながら,上で示されたメンタルヘルス対策としての長時間労働の基準は,企業・産業保健現場での実践性を考慮したものであり,労働時間と精神的負担との関連についての科学的な確証は十分に得られていない.一方で,労働時間が様々な労働環境要因,職業ストレス要因と関連して労働者の精神的負担やメンタルヘルスに影響を与えることは,過去の研究からも合理的に解釈できる.そこで本調査では,労働時間とうつ・抑うつなどの精神的負担との関連を検討した文献の体系的レビューを行い,労働時間と精神的負担の関連についての疫学的エビデンスを整理することを目的とした.PubMedを用いて131編の論文について検討を実施した.労働時間と精神的負担に関して検討した原著論文が131編のうち17編確認された(縦断研究10編,断面研究7編).それらのレビューの結果,精神的負担の指標との関連を報告した文献が7編であった.また,労働時間の評価に様々な定義が用いられており,研究間の比較を困難にしていた.今回のレビューの結果,労働時間とうつ・抑うつなどの精神的負担との関連について,一致した結果は認められなかった.