- 著者
-
保利 一
則武 祐二
砂金 光記
東 敏昭
- 出版者
- 産業医科大学
- 雑誌
- 試験研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1994
有機溶剤蒸気の環境測定や個人曝露量の測定には活性炭管を使用する固体捕集方法が広く用いられている.しかし,活性炭管は蒸気が破過しても使用中にこれを検出することは不可能であるため,特に個人曝露量の測定のように長時間の捕集を行う場合,破過により正確な測定ができない可能性がある.そこで半導体ガスセンサーを利用し,使用中に破過を検出する装置を開発した.まず,センサーの特性とと破過曲線の関係について調べた.すなわち,有機溶剤蒸気を活性炭管およびセンサーを装着したカラムに通じた.センサーからの出力信号を定期的にICカードに記録するとともに,センサーの下流側に設置したサンプリングポートから空気を採取し,FID付ガスクロマトグラフ(GC)で濃度を経時的に測定し,破過曲線を求めた.測定終了後,ICカードに記録されたデータをパーソナルコンピュータに転送し,センサーの抵抗値の経時変化をGCによる破過曲線と比較検討した.溶剤蒸気にはアセトン,ジクロロメタン,クロロホルム,1,1,1-トリクロロエタン,メタノール,IPA,酢酸メチル,酢酸エチル,トルエン,1-ブタノール,メチルエチルケトンを用いた.GCで破過破過を検出する以前にセンサーは破過を検知し,抵抗値が変化することが認められた.ただし,ジクロロメタンとクロロホルムについては,センサーの抵抗値の変化は小さく,抵抗値と破過曲線の立ち上がりはほぼ同時であった.この傾向は,乾燥空気でも高湿度(80%)の条件でもほぼ同様であった。ただし,ジクロロメタンとクロロホルムに関しては,高湿度条件下ではセンサーは破過を検知できなかった.以上の結果に基づき,破過を検出すると警報で知らせるシステムを試作し,その実用性について検討した.