著者
岡野 由実 原島 恒夫 堅田 明義
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.195-203, 2009 (Released:2009-09-18)
参考文献数
15
被引用文献数
4 2

本研究では, 一側性難聴者の自己開示の実態, 日常生活において対人関係の中でどのような感情を抱いているのかを明らかにするために, ソーシャルネットワーキングサービスを利用した調査を実施し, 135名の一側性難聴者から回答を得た。自己開示の実態については, 自己開示の有用性について理解していても, 開示しにくい背景があるということが分かった。その理由として, ネガティブな感情や, 周囲の理解不足があると考えられる。聞こえに関する問題だけでなく, 対人関係の中から生じる心理的問題も抱えている現状が示唆された。また, 自由記述より, 一側性難聴者同士が悩みや不安を共有し合うピア・カウンセリングの有用性が示唆された。聞こえの問題から二次的に生じる問題, 特に対人関係の中から生じる心理的問題やその実態など, 一側性難聴への理解を深め, 支援を行っていく必要があると考えられる。
著者
岡野 由実 原島 恒夫 堅田 明義
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
Audiology Japan (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.195-203, 2009-08-31
被引用文献数
3 2 4

本研究では, 一側性難聴者の自己開示の実態, 日常生活において対人関係の中でどのような感情を抱いているのかを明らかにするために, ソーシャルネットワーキングサービスを利用した調査を実施し, 135名の一側性難聴者から回答を得た。自己開示の実態については, 自己開示の有用性について理解していても, 開示しにくい背景があるということが分かった。その理由として, ネガティブな感情や, 周囲の理解不足があると考えられる。聞こえに関する問題だけでなく, 対人関係の中から生じる心理的問題も抱えている現状が示唆された。また, 自由記述より, 一側性難聴者同士が悩みや不安を共有し合うピア・カウンセリングの有用性が示唆された。聞こえの問題から二次的に生じる問題, 特に対人関係の中から生じる心理的問題やその実態など, 一側性難聴への理解を深め, 支援を行っていく必要があると考えられる。
著者
横山 さつき 大橋 明 土谷 彩喜恵 海老 諭香 福地 潮人 堅田 明義
出版者
人間福祉学会
雑誌
人間福祉学会誌 (ISSN:13465821)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.39-48, 2022 (Released:2022-06-03)

高齢者介護に従事する介護職の倫理的行動に影響すると推定される共感的反応・行動の因子構造を明らかにす ることを目的として、A県下の特別養護老人ホームと介護老人保健施設(総数270施設)のうちの76施設(総数の28.1%) の介護職全数(3,142名)を対象として、独自作成の94項目から成る無記名自記式質問紙調査を実施した。有効標本 1,161(有効回答率40.0%)のデータを用いて探索的因子分析をした結果、20項目から成る 6 因子構造を抽出した。 6 因子の Cronbach’sα係数は.852~.934(全体.904)で、各因子の内的整合性が認められた。 6 因子を、「 1.ネガティ ブな感情の共有」、「 2.インテグリティ」、「 3.他者感情に対する敏感性」、「 4.協調性・融和性」、「 5.ポジティブな感 情の共有」、「 6.他者視点取得と共感的関心」と命名した。いずれも介護職の共感的反応・行動として解釈可能であり、 内容的に妥当であると考えられた。また、「インテグリティ」と「協調性・融和性」は介護職独自の因子であった。
著者
堅田 明義
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.25-38, 2012 (Released:2013-01-25)
参考文献数
61

知的障害児に関する生理心理学的研究は知的障害児の脳波基礎律動の分析的研究から始めた。当時の知的障害児脳波の特徴として,(a)α 波の低周波数化,(b)θ 波の顕著な出現,(c)不規則・不安定な脳波の出現,(d)顕著な個人差が指摘されていた。知的障害児や健常児の脳波を横断的及び縦断的研究から脳波の発達のschema を国内外で提案した。このschema は,従来のα 波周波数の連続的増加に対して,特定成分の交替を特徴とし,また特定成分を生起させるgenerator をそれぞれ有することになる。そこで,特にθ 成分とα 成分の特性の違いを明らかにすることにした。脳波のパワの変動性からθ 波とα 波のgenerator は異なり,かつθ 波のgeneratorはα 波に比べ頭皮上から一層深い位置に関連すると推測した。またθ 及びα 成分の出現の時間的相互関係,光刺激に対する応答性や部位間関係からも両成分の違いを明らかにした。これらから知的障害児脳波の特徴とされた所見のいずれも脳波の発達との関連でみられる特徴であることが指摘できた。結論的には,α 成分が低い周波数成分に対する抑制的役割をしていると想定した。
著者
水田 敏郎 藤澤 清 吉田 和則 保野 孝弘 大森 慈子 宮地 弘一郎 権藤 恭之 堅田 明義
出版者
仁愛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では,知的障害を有する高齢者を対象に認知機能の検討をおこなった.S1-S2パラダイムに基づき,S1を顔刺激としS2で提示される複数の顔刺激からS1を検出するものとし,ボタン押し反応や視行動,ならびに心拍反応から検討を行った.その結果,若年成人群ではS1-S2間隔における心拍反応において,第1減速-加速-第2減速の三相からなる一過性の変動が出現し予期的減速反応を反映したものと考えた.また,後半S2提示直後の刺激探索に関する方略の獲得にあわせて,反応時間の短縮が認められた.他方,高齢者群では正答率,平均反応所要時間などの指標はいずれも若年成人に比べると成績が劣っていた.心拍反応については個人差が大きかったが全体的に若年群に比べて変化が小さく,加齢による心拍変動の減少によると思われた.次に,知的障害高齢者を対象とした同様の心理機能の検討を試みた.その結果,知的障害を有する事例はS2として提示した複数の刺激のなかからターゲット刺激を検出するのが困難であった.そのうち1事例の反応所要時間は顕著に延長しサッケード潜時は比較的短かった.この事例の心拍反応には,わずかに予期的反応を反映した減速反応がみられた.また別の事例では,反応所要時間は比較的短くサッケード潜時は延長していた.本事例の心拍反応はS1提示直後から減速し,S1に対する低位的性格をもつ反応と位置づけた.また同事例では予期的反応がほとんど惹起されず,このことが原因となってサッケードの生起が遅れたと考えられた.以上より本パラダイムで心拍指標を用いて検討すると,刺激の分析を含めた認知過程ならびに予期的反応の生起過程を捉えることが可能になるといえる.また心拍に反映された2つの心理過程は,行動指標の結果にも合致し,知的障害高齢者の認知機能の評価に有効であることが指摘できた.