著者
塩津 裕康 倉澤 茂樹
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.17-25, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
37

本論では,自閉症スペクトラム障害児(以下,ASD児)に対する,より効果的な作業療法の開発に向けて,応用行動分析学(以下,ABA)を取り入れることを検討した.ABAは,強力なエビデンスを持つとともに,作業療法士はこれを適用するためのスキルを持っている.そのため,本論から我が国の作業療法士がABAを取り入れることを吟味し実践することで,ASD児に対する,より効果的な作業療法となることが期待される.
著者
塩津 裕康
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.344-350, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
5
被引用文献数
1

本報告の目的は,限られた介入頻度でも,Cognitive Orientation to daily Occupational Performance(以下,CO-OP)を用いた介入の有用性を示すことである.方法は,2事例の事例報告で,介入はそれぞれ2回(約1ヵ月に1回)であり,その前後を比較した.結果は,CO-OPを用いることで,粗大運動および微細運動スキルどちらの課題でも,スキルを獲得することができた.さらに,最小限の介入頻度で,スキルの獲得およびスキルの般化,転移を導く可能性が示唆された.結論として,CO-OPの適応児の選定に検討の必要性はあるが,認知戦略を発見および使用できる子どもに対しては,有効である可能性が示された.
著者
尾﨑 充希 塩津 裕康 田中 悟郎 岩永 竜一郎
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.87-97, 2022-08-31 (Released:2023-02-28)
参考文献数
18

特別支援学校高等部に通う脳性まひ者2名に対して主体的に問題を解決する力を育むために、日常作業遂行に対する認知オリエンテーション(CO-OP)を基盤とした個別介入を行い、その有用性を検証することを目的とした。その結果、生徒自身で目標を設定し、認知戦略を発見し、目標を達成することができた。カナダ作業遂行測定(COPM)、ゴール達成スケーリング(GAS)、遂行の質評定スケール(PQRS)の数値が、事前評価から事後評価で生徒2 名ともに向上し、その後のフォローアップにおいても効果を維持することができた。そのうち1名の生徒は、Vineland-Ⅱの粗大運動のスコアが、事前評価の22点から事後評価では34点に向上した。本研究により、脳性まひ者の主体的な学びの実現を目指すために、CO-OPを基盤とした個別介入が特別支援教育の場において有効であることが示唆された。
著者
秋山 大輔 塩津 裕康
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.325-332, 2022-06-15 (Released:2022-06-15)
参考文献数
13

認知機能低下を呈した脳卒中者に対して,目標とする調理のスキル・問題解決スキルの習得を目標にCognitive Orientation to daily Occupational Performance(以下,CO-OP)の適用を試みた.結果,スキル習得により目標を達成することができた.加えて,他の作業の転移まで導くことができた.今回の報告からCO-OPは,認知機能低下を呈した脳卒中者の目標達成・スキル習得および般化・転移に有用である可能性が示され,注意・記憶・遂行機能が低下した本事例においては,可能化の原理である障害特性を考慮したチェイニングや課題調整等のテクニックをより活用することが重要であった.
著者
塩津 裕康 奥津 光佳 倉澤 茂樹
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.72-78, 2021-02-15 (Released:2021-02-15)
参考文献数
16

要旨:新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の影響により,クライエントに対面で作業療法を提供することが難しい状況に陥った.そこで,我々はCognitive Orientation to daily Occupational Performance(CO-OP)を基盤とした遠隔作業療法を実施した.実践形態が遠隔であっても,読み書きが苦手な子どもたち,および保護者からポジティブな反応が確認できた.この実践を報告することによって,COVID-19の第二波やその他の理由で対面での作業療法が困難になった際の一助となることを期待している.
著者
倉澤 茂樹 泉谷 憲正 武淵 さやか 塩津 裕康 横井 賀津志
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.481-489, 2019-08-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
18

応用行動分析学(以下,ABA)に基づき,2歳4ヵ月の自閉症スペクトラム障害(以下,ASD)児に早期の集中的な介入を行った.コンサルタントである作業療法士(以下,OT)は,母親だけでなく,障害福祉施設のOTおよび言語聴覚士とも連携し,不連続試行法および機軸的行動発達支援法を活用した介入を,1日30分以上,週10時間未満の範囲で実施した.2ヵ月後,数十種類のコミュニケーションスキルが獲得された.本報告は,ASD児への早期の集中的なABA介入の有効性を示唆する.加えて,行動コンサルテーションは,家庭内だけでなく地域の療育機関の連携を可能とし,集中的なABA介入の実現に寄与する可能性がある.
著者
今岡 泰憲 廣瀬 桃子 山口 みさき 天白 陽介 塩津 裕康
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.442-449, 2020-08-15 (Released:2020-08-15)
参考文献数
27

要旨:本研究の目的は,急性期病院において作業療法士が肺炎患者の病棟トイレ自立使用可能・不可能を判断する下肢機能評価のカットオフ値を算出することである.研究デザインは横断研究とした.対象は肺炎患者56名,調査項目は,SPPB,TUG,膝伸展筋力とした.結果,病棟トイレ使用可能・不可能に関連する因子としてTUGが抽出され,カットオフ値:11.8秒,AUC:0.807,感度:69.4%,特異度:89.5%であった.作業療法士は,算出されたTUGのカットオフ値:11.8秒を用いることで,観察による主観的な評価だけでなく,客観的な評価基準に基づいて,病棟トイレ自立使用可能・不可能を判断することが可能となる.
著者
今岡 泰憲 廣瀬 桃子 山口 みさき 武村 裕之 塩津 裕康
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.239-246, 2021-04-15 (Released:2021-04-15)
参考文献数
14

呼吸器疾患のクライエントに対して,酸素デバイスの取り扱いや,トイレ使用時の呼吸困難を軽減させるセルフマネジメントスキルを習得するために,Cognitive Orientation to daily Occupational Performance(以下,CO-OP)を使用した(5日,40分/日).結果,Canadian Occupational Performance Measure,Performance Quality Rating Scaleは向上した.今回の報告でCO-OPは,呼吸器疾患のクライエントのセルフマネジメントスキルの習得に有用である可能性が示唆された.
著者
木村 大介 塩津 裕康 備前 宏紀 今井 あい子 冨山 直輝
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.491-500, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
27

本研究では,16名のアルツハイマー型認知症高齢者の心理的ウェルビーイングが高値傾向および低値傾向を示した場合の行動パターンと,その特徴を示すことを目的とした.分析では,心理的ウェルビーイングの中央値で対象者を高値傾向群と低値傾向群に分類,各群の対象者に装着したウェアラブル型センサーで収集した位置情報にグラフ理論に基づくネットワーク解析を実施し,行動パターンを可視化,加えて各群のクラスタリング係数を算出した.その結果,心理的ウェルビーイングが高い傾向にある者は「ハブ」となる行動の中心が存在していることが特徴であり,心理的ウェルビーイングが低い傾向にある者は行動の中心がないことが特徴と考えられた.
著者
塩津 裕康
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.344-350, 2019-06-15

要旨:本報告の目的は,限られた介入頻度でも,Cognitive Orientation to daily Occupational Performance(以下,CO-OP)を用いた介入の有用性を示すことである.方法は,2事例の事例報告で,介入はそれぞれ2回(約1ヵ月に1回)であり,その前後を比較した.結果は,CO-OPを用いることで,粗大運動および微細運動スキルどちらの課題でも,スキルを獲得することができた.さらに,最小限の介入頻度で,スキルの獲得およびスキルの般化,転移を導く可能性が示唆された.結論として,CO-OPの適応児の選定に検討の必要性はあるが,認知戦略を発見および使用できる子どもに対しては,有効である可能性が示された.
著者
塩津 裕康
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.81-88, 2017-02-15

要旨:脳卒中を呈したクライエントに対して,Cognitive Oriented to daily Occupational Performance(CO-OP)を基盤とした訪問作業療法を実施した.この実践では,自身の目標であった調理などの作業を,問題が生じない方法を自ら考えながら練習することで,それらの技能も獲得できた.この経験を牡蠣養殖の仕事といった他の作業へ応用することにより,その技能を獲得することができた.在宅における自立支援を考えた際に,自ら問題に気づき対処する方策を獲得することは非常に重要であり,本実践の有用性が示唆された.加えて,一連の技能獲得に麻痺手を有効活用するなどの計画を立てたことで,麻痺側の上肢使用頻度が向上し機能も回復した.