著者
康井 洵之介 棟居 洋介 増井 利彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.II_339-II_348, 2015 (Released:2016-06-01)
参考文献数
24

富士山は,2013年に世界文化遺産登録を果たしたが,近年の登山者増加により持続的に利用していく上での許容量を超えているということが指摘されている.本研究では,屎尿処理問題と安全性の確保の視点から,登山者数の上限をルート別に推計した.また,富士山への訪問需要関数を求めることによって,現状の登山者数を推計した上限以下に抑えるための入山料の金額を推計した.結果としては,現状の登山者数はルートによっては上限を大きく上回っていることが明らかになった.登山者数を上限以下に抑えるための入山料を訪問需要関数をもとに推計したところ,登山シーズン全期間の登山者数を対象とした場合にはルート別に0円~3,000円という結果が得られたが,土日等の集中利用時期の混雑解消のためには,2,500円~8,000円の入山料が必要になることを明らかにした.
著者
棟居 洋介 増井 利彦
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.167-183, 2012 (Released:2013-06-11)
参考文献数
27

地球温暖化対策や循環型社会の構築を目的として,石油化学プラスチックを植物由来のバイオマスプラスチックへ代替していく動きが始まっているが,バイオマスプラスチックの主原料はトウモロコシやサトウキビなどの食用作物であり,その普及は途上国の食料不安を増大させる可能性がある。そこで,本研究では国際応用システム分析研究所(IIASA)の修正SRESシナリオにもとづいて,2050年までのバイオマスプラスチックの普及と原料作物需要の関係を分析し,途上国の食料不安に及ぼす影響の評価を行った。バイオマスプラスチックの普及率はBREWプロジェクトの予測から想定し,原料作物についてはサトウキビおよびトウモロコシの実,葉茎を想定した。本研究から以下のことが明らかになった。1)世界全体のプラスチック需要量は,2009年には2億3,000万トンであったが,2050年にはA2r,B1,B2の3つのシナリオで,各々8億3,100万トン,12億1,100万トン,10億7,000万トンまで増加する。需要の増加のほぼ全てはアジアを中心とする途上国で起きる。2)バイオマスプラスチックの普及率が2050年に8%から62%に達すると想定すると,原料としてトウモロコシが1億1,200万トンから11億100万トン,サトウキビが4億1,600万トンから40億9,500万トン必要になる。これらの原料需要の最大値は,同年のトウモロコシとサトウキビの食用生産見込み,9億5,900万トン,19億6,600万トンを上回る。3)途上国の食料不安の主因は貧困であり,バイオマスプラスチックの普及率が低いシナリオでも,その需要の増加は食料価格の上昇を通して低所得国の食料不安を増大させる可能性が高い。4)バイオマスプラスチックについてもバイオ燃料と同様に,その利用に関する持続可能性基準の策定が必要である。
著者
藤森 真一郎 長谷川 知子 増井 利彦 高橋 潔 シィルバ エラン ディエゴ 戴 瀚程 肱岡 靖明 甲斐沼 美紀子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.II_217-II_228, 2015
被引用文献数
2

Special Report on Emissions Scenarios(SRES)が公表されて以降,気候変動関連研究は主としてSRESを用いて行われてきた.一方,2007年以降に新シナリオプロセスが開始され,新しい社会経済シナリオ Shared Socioeconomic Pathways(SSPs)は気候モデル,影響評価モデル,統合評価モデルで使われ,中核的なシナリオとなることが期待される.また,近年統合評価モデルが提示するシナリオはパラメータの設定等が明瞭に示されずブラックボックスとなっているという批判が存在し,統合評価モデルが抱える大きな問題の一つとなっている.このような背景を踏まえ,本論文は以下の二つの目的を有する.第一にSSPの定量化プロセスについて詳細に記述し,シナリオ定量化作業をオープンにすることである.第二にその結果を既存のシナリオであるSRESとRCP(Representative Concentration Pathways)と比較し,シナリオの特徴を明らかにすることで,今後SSPの主たるユーザーとなる気候モデルや影響評価モデルに対して有用な情報を提供することである.本研究で得た主要な結論は以下のとおりである.第一に大気汚染物質の排出量はRCPで一貫して減少していたが,SSPの一部は増加するシナリオが含まれ,気候モデルにとってエアロゾルの違いの影響を明らかにすることができる.第二に耕作地面積はいずれのシナリオでも21世紀で拡大し,水資源,森林生態系など土地利用に影響される影響評価モデルにとっては土地利用シナリオを考慮することが重要であることが示唆された.
著者
長谷川 知子 藤森 真一郎 申 龍熙 高橋 潔 増井 利彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_227-I_236, 2012 (Released:2013-02-13)
参考文献数
26
被引用文献数
1 3

本論文では気候変化による作物収量変化が,食料消費,飢餓,マクロ経済に対してどの程度影響するのかを分析する.将来の社会経済条件の違い,気候条件や適応策の取り方などの諸条件をシナリオとして与え,これらを比較することで気候変化によってもたらされる農業部門への影響を総合的に解析する.分析には世界経済モデルと作物モデルを用いる.社会経済条件,農業に強く関連する事象としてシナリオで考慮するのは,人口,GDP,作物収量(気候変化の影響と適応策の効果を考慮)とした.結果は以下のことを示唆する.社会経済条件は栄養不足人口や食料消費にとって大きな因子である.気候影響は適応策を適切に実施する場合栄養不足人口に対して軽微な影響であるが,適応策を適切に実施できない場合大きな影響を持つ.また,作物収量変化によるGDP損失は比較的小さいことが明らかとなった.
著者
平山 智樹 藤原 和也 日比野 剛 花岡 達也 増井 利彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.II_301-II_308, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
42

本研究では,積み上げ型技術選択モデルを用いて,インドの将来の温室効果ガスと一次生成の大気汚染物質,短寿命気候汚染物質(SLCP)の排出量と,対策導入コストを推計し,気候変動緩和策が大気汚染物質とSLCPの排出に及ぼす影響を評価した.その結果,125ドル/トンCO2の炭素価格で導入可能な気候変動緩和策による副次効果として,SO2,PM2.5,BCの排出を基準年比横ばい以下まで抑制できること,2050年までの累積GDPの0.12%に相当する大気汚染対策コストを削減できること等が示された.一方で,気候変動緩和策の推進がもたらすバイオマス利用の拡大が,大気汚染物質やSLCPの排出増をもたらす可能性があることも示された.温室効果ガスだけでなく,大気汚染物質やSLCPも含めた最適な排出パスを検討するためには,低炭素化のみならず,健康被害や気候変動の要素にも留意して検討を進める必要がある.
著者
増井 利彦
出版者
横断型基幹科学技術研究団体連合(横幹連合)
雑誌
横幹連合コンファレンス予稿集 第8回横幹連合コンファレンス
巻号頁・発行日
pp.C-5-4, 2017 (Released:2018-02-18)

This paper explains the background and structure of the new mathematical model to assess sustainability in Japan. The core part of this model is a computable general equilibrium model, and various environmental issues such as greenhouse gas emissions, solid waste, water environment and land use are included. In addition to that, in order to assess the societal problems such as aging society and economic disparity in Japan, the model has households classified by the age of the household head. Based on the simulation using this model and the discussion with stakeholders, the expected sustainable society in Japan will be quantified.