著者
増山 篤
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.585-599, 2010-11-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
23

本稿の主目的は,一つの地域が空間的に連坦し,最大限均質な部分地域へ区分される必要条件を導くことである.地理学では,部分地域が連坦し,最大限均質になるという2条件を満たす地域区分がしばしば試みられる.こうした区分のために,さまざまな方法が提案されてきたが,先の2条件を厳密に満たすものはない.2条件を満たそうとする地域区分は,最適化問題としてとらえられる.一般に,最適化問題の解法は最適解が満たす必要条件に基づく.地域区分に関しても最適性の必要条件があれば,期待するような部分地域を見出すのに有用と考えられる.そこで,2条件を満たす地域区分となる必要条件を理論的に導出し,その必要条件に基づく地域区分方法について検討した.その結果,まず,等値線に従う区分が,必要条件を満たすことが分かった.また,等値線の組合せによって,二つの条件を厳密に満たすのは困難だが,従来の方法を上回る区分が期待できることが示された.
著者
増山 篤 岡部 篤行
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.759-776, 2003-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
31

本稿は,都市における人口密度分布から,その構造的特徴を抽出し,この特徴に基づき,都市人口分布構造を分析する方法を提案する.また,この方法を,日本における中規模都市の人口データに対して適用し,その結果について論じる.都市内人口分布を分析する方法については,従来より,いくつもの方法が提案されてきた.その代表的な方法は,人口密度が都心からの距離に応じて,指数関数的に減少するものとしてモデル化する方法がある.また,人口密度分布が張るサーフェスを多項式近似するという方法もしばしば用いられる.しかしながら,これらの方法は,そこで仮定されている量的関係からの逸脱やデータの歪みに十分対応し得ないという問題点がある.これらの方法に対し,ある程度の歪みに不変な人口密度分布の位相的特徴を用いた分析方法も提案されている.本稿では,従来提案されてきた位相的分析方法を拡張することによって,都市人口分布構造の類型化を行う方法,および,2都市間の構造的類似性を測る方法の提案を行う.また,これを人口規模30万前後の20都市に適用し,その結果得られた知見について述ベる.
著者
増山 篤
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.210-220, 2015-10-25 (Released:2015-10-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

この論文では、青森県弘前市における通所介護および訪問介護サービスへのアクセシビリティを分析し、その結果の示唆するところを議論する。まず、2SFCA(two-step floating catchment area)法と呼ばれる方法におけるアクセシビリティ指標値の空間分布を求め、分析対象地域内のいくつかの場所においては、顕著にその値が低いことを示す。次に、2SFCA法におけるアクセシビリティ指標の値を求めた結果と、先行研究でも使われたアクセシビリティ指標の値を算出した結果とを比較する。そして、その比較結果から、2SFCA法とその他のアクセシビリティ指標とでは、どこをアクセシビリティに欠ける場所と判断するかが少なからず異なることを示す。また、一方で、介護サービスへのアクセシビリティという点で問題視されうる地区を適切に見出すのは、2SFCA法だと期待されることを論じる。最後に、ここでの分析結果が地域包括ケアシステムの理念の実現に向けて与える示唆について考察する。
著者
増山 篤
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.2, pp.41-49, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
8

都市計画で用いられるデータのうち、ポイントデータは少なからぬ割合を占める。また、ポイントの空間分布パターンを判別する代表的な分析方法としては、最近隣距離法と方格法がある。この論文は、最近隣距離法および方格法による判別結果が、一般的にどの程度まで一致し、相互に従属な関係にあるのか明らかにすることを目的とする。まず、第一に、二つの分析方法による判別結果が完全に一致するための条件を示す。第二に、モンテカルロシミュレーションによって、この条件が満たされることがあるかどうかを検討する。第三に、二つの分析方法による判別結果は、いくらかは相互に従属な関係にあるが、しばしば異なる判別結果を与えることを示す。第四に、二つの分析方法による判別結果が相互に従属である程度を計量化する指標を考え、この指標は非常に低いものであることを示す。最後に、この論文をまとめ、今後の課題を述べる。