著者
河端 瑞貴 小口 高 岡部 篤行
出版者
Geographic Information Systems Association
雑誌
GIS-理論と応用 (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.81-89, 2004-07-31 (Released:2009-05-29)
参考文献数
25
被引用文献数
3 3

The GIS Association in Japan established a working group to develop GIS core curricula in October 2002. This article reports an initial work conducted by the group investigating GIS curricula in the U.S. and GIS textbooks in English. The first part of this paper describes the GIS curriculum projects carried out by two organizations in the U.S.: the National Center for Geographic Information and Analysis (NCGIA) and the University Consortium for Geographic Information Science (UCGIS). The second part examines items in these organizations' curricula and GIS textbooks in English. This report was prepared to provide data useful for the development of the GIS core curricula in Japan.
著者
山田 育穂 岡部 篤行
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.923-928, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
10

空間自己相関は,地域の空間的な近接性と属性的な類似性との関連を示す概念であり,都市空間で発生する事象の空間分布やその背景にあるプロセスを理解するうえで,重要な役割を担っている.MoranのI統計量は,地区データの空間自己相関を扱う際に最も広く用いられている手法のひとつであるが,その潜在的な問題については一般にあまり認識されていない. MoranのI統計量による検定がその分布の漸近的な正規性を仮定して構築されているのに対し,通常のデータでI統計量の正規性が達成される可能性は低い.従って,I統計量の正規性を仮定した仮説検定では結果に偏りが生じる恐れがあり,またこの問題を避けて用いられるシミュレーションによる検定方法であっても,結果にはシミュレーションに特有のばらつきが生じる.そこで,本研究ではMoranのI統計量の確率分布の裾野に着目した大規模シミュレーションを通じて,仮説検定で用いられる棄却限界値の推定式を構築する.達成の難しいI統計量の正規性や都度のシミュレーションに依らない平易な推定式を提供することで,検定結果の安定と信頼性の向上に資することを目的とする.
著者
増山 篤 岡部 篤行
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.759-776, 2003-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
31

本稿は,都市における人口密度分布から,その構造的特徴を抽出し,この特徴に基づき,都市人口分布構造を分析する方法を提案する.また,この方法を,日本における中規模都市の人口データに対して適用し,その結果について論じる.都市内人口分布を分析する方法については,従来より,いくつもの方法が提案されてきた.その代表的な方法は,人口密度が都心からの距離に応じて,指数関数的に減少するものとしてモデル化する方法がある.また,人口密度分布が張るサーフェスを多項式近似するという方法もしばしば用いられる.しかしながら,これらの方法は,そこで仮定されている量的関係からの逸脱やデータの歪みに十分対応し得ないという問題点がある.これらの方法に対し,ある程度の歪みに不変な人口密度分布の位相的特徴を用いた分析方法も提案されている.本稿では,従来提案されてきた位相的分析方法を拡張することによって,都市人口分布構造の類型化を行う方法,および,2都市間の構造的類似性を測る方法の提案を行う.また,これを人口規模30万前後の20都市に適用し,その結果得られた知見について述ベる.
著者
相 尚寿 岡部 篤行 貞広 幸雄 太田 守重
出版者
一般社団法人 地理情報システム学会
雑誌
GIS : 理論と応用 = Theory and applications of GIS (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.89-98, 2008-12-31
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

<p>Due to the increase in a necessity, operability, and data availability, spatio-temporal analysis has been gathering popularity. However, there are few studies focusing on systematic reviews of it. This paper first shows basic concepts for spatio-temporal analysis such as geometrical representation of entities and changeability of attribute values over time. Then the paper constructs a matrix showing the characteristics of earlier studies. The matrix consists of two stages, where the first stage concerns the temporal representation and types of the entities, and the second stage concerns spatial representation, changeability of location, shapes and attribute values. The matrix helps us to understand the characteristics of the studies and uniqueness or similarity when compared to others.</p>
著者
岡部 篤行 佐藤 俊明 岡部 佳世 中川 貴之 今村 栄二 松下 和弘 長野 一博 石渡 祥嗣 飴本 幸司 林 良博 秋篠宮 文仁
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.30-39, 2006

当報告書は,無線LAN位置システム(以下システム)を放し飼いニワトリの軌跡追跡に適用可能かどうかを調べた結果を報告するものである。システムは,連続的な地面上にいるニワトリの位置を1 mのグリッド交差点上の点として表し,ニワトリの軌跡はその点列として表す。システムは,ニワトリの位置を1秒ごとに記録することができる。実験は8羽のニワトリと2羽のホロホロチョウを170 m×90 mの広さの公園に放って5日間にわたりその軌跡を観察した。分析に利用可能なデータは3日間得られた。システムによって得られる位置のデータは雑音を含むため,位置データは確率変数として扱った。データ分析により,位置の精度は,確率0.95で2.6 m,すなわち,真の位置が,観察された位置を中心に半径2.6 mの円の中にある確率が95%であると判明した。ニワトリの生活圏は,その場所にニワトリがいた確率密度関数として表現した。その関数はバンド幅が2.6 mのカーネル法で推定をした。軌跡は移動平均で推定した。実験の結果,システムは放し飼いニワトリの軌跡追跡に適用できることが判明した。
著者
岡部 篤行
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.67-74, 2006 (Released:2010-06-02)
参考文献数
33
被引用文献数
3 5

本稿は,地理情報科学教育の確立に向けて,現在,どのような動向があるのかを概観し,それに関連して現在における地理学の課題を論ずるものである.Iにおいて,地理学の隆盛と衰退のトピックスを紹介する.IIでは「GISは学問か」という問いを検討することから,地理情報科学とは何かを述べる.IIIでは,地理情報科学と地理学の関係について論じ,前者がいわゆる一般地理学に対応するものであることを述べる.IVでは,地理情報科学の体系化とそれに基づくカリキュラムの開発状況を紹介する.Vでは,カリキュラム開発で提案された地理情報科学カリキュラムの第1案について概説する.VIでは,カリキュラム第1案の批判的検討を示し,その批判に基づき現在は地理情報科学・工学のカリキュラムを開発する方向に向かっていることを解説する.VIIでは,地理情報科学・工学のカリキュラム開発の経験を踏まえて,地理学の底力をつける糸口について述べる.
著者
森岡 渉 岡部 篤行 貞広 幸雄
出版者
一般社団法人 日本統計学会
雑誌
日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.115-131, 2019-09-30 (Released:2020-04-02)
参考文献数
13

店の出店や閉店の戦略をたてる立地マーケティングにおいて,地域の店の盛衰状況動向を分析することは基本的な分析である.そこで,本研究では,盛衰動向状況の基礎的分析として,ジニ係数を活用した地域内の店舗立地集中度測定法を提案する.その方法は,基本的にジニ係数を踏襲しているが,新たに,順序統計量を用いて店舗の空間偏在度を統計的に検定する方法と,ジニ係数を求める際に用いるローレンツ曲線を活かして,店舗が集中している「ホットスポット」を検出する方法を開発した.それらの方法を,電話帳から得られる東京都渋谷区内の各4分の1地域メッシュ(250~mメッシュ)に含まれる各種店舗数データに適用し,渋谷区における店舗施設立地の全体的な集積度と局所的な集積度を測定し,方法の有効性を確認した.
著者
岡部 篤行
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.2, pp.312-323, 2008-04-25 (Released:2010-06-02)
参考文献数
33
被引用文献数
3 3

This paper reports the history of GIS developments in the 1970s and 1980s in Japan. The paper outlines ten GIS development projects: Small Area Information Systems, UIS-I, Geographic Information Processing System and Overlay Mapping Technique, Computer Graphic Systems for City Planning, ISLAND, TUMSY, Local Government GIS, Geographical Information Processing, TOGIS, and UIS-II.
著者
相 尚寿 岡部 篤行 貞広 幸雄 太田 守重
出版者
一般社団法人 地理情報システム学会
雑誌
GIS-理論と応用 (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.89-98, 2008-12-31 (Released:2019-04-11)
参考文献数
30
被引用文献数
1

Due to the increase in a necessity, operability, and data availability, spatio-temporal analysis has been gathering popularity. However, there are few studies focusing on systematic reviews of it. This paper first shows basic concepts for spatio-temporal analysis such as geometrical representation of entities and changeability of attribute values over time. Then the paper constructs a matrix showing the characteristics of earlier studies. The matrix consists of two stages, where the first stage concerns the temporal representation and types of the entities, and the second stage concerns spatial representation, changeability of location, shapes and attribute values. The matrix helps us to understand the characteristics of the studies and uniqueness or similarity when compared to others.
著者
政金 裕太 佐藤 佳穂 岡村 吉泰 岡部 篤行 木村 謙
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

<b>1</b><b>.背景と目的</b><BR><br> 文科省の公式見解では、首都圏でM7クラスの地震が発生する確率は30年以内に70%といわれている。副都心の一つである渋谷駅周辺は、建物密度も昼間人口密度も極めて高い地区であるので、その防災対策は重要であり、大きな課題である。本研究では、その過密地域を含んだ青山学院大学周辺約1kmを対象地とし、災害発生時の人間の道路から避難施設までの避難行動をシミュレーションする。本研究は、その避難行動シミュレーションによって、いつ起こるかわからない震災に対して、すべての時間帯における人間の混雑した危険な状態がどこに発生するのかをチェックする手法を提案する。以下にそのプロセスを示す。<BR><br>(1)人間が何月何日何時に避難経路(道路)上に何人いるのかを推定する手法を示す。<BR><br>(2)2011年3月11日14時の避難者数の推定結果をシミュレーションに適用する。<BR><br>(3)シミュレーション結果からどこに危険な混雑が生じるのかを示す。<BR><br><BR><br><b>2</b><b>.手法の概略</b><BR><br> 道路ごとの人口数の推定は、「流動人口統計データ」(ゼンリンデータコム提供)、渋谷区、港区の避難施設データ、道路データを用いて行った。「流動人口統計データ」は在宅人口、勤務地人口、流動人口のデータから構成されており、ここでは対象地内に自宅も勤務地もないとされる流動人口を扱う。これらのデータをArcGIS上の空間解析ソフトで分析することで道路上の流動人口数の推定結果が得られる。この推定結果を道路上にいる避難者数として、シミュレーションに適用する。「流動人口統計データ」は時間帯ごとの人口データを含んでいるため、時間帯ごとの避難者数が推定できる。<BR><br> 避難シミュレーションにはSimTreadを使用した。SimTreadはCADソフトVectorWorks上で動かす歩行者シミュレーションソフトである。ArcGISで使用したデータをCADデータとしてエクスポートして、VectorWorksへインポートする。分析から得た避難施設ごとの避難者数の推定結果をVectorWorks上の道路にエージェントとして配置する。エージェントは、目的地の避難施設まで最短距離で移動をし、衝突を回避するために減速すると青色で表示され、衝突を回避するために止まってしまうと赤色で表示される。この設定によって赤く表示された箇所が混雑な危険箇所であると判断できる。これを繰り返しすべてのエージェントを道路上に配置したらシミュレーションを実行する。<BR><br><BR><br><b>3</b><b>.シミュレーションの適用</b><BR><br> 以上の手法を震災があった2011年3月11日14時台に適用する。この時間帯では、青山学院大への避難者数は55,111人であるという推定結果が出た。シミュレーションの結果、目的地付近で大混雑が生じ、避難開始30分が経っても約5分の一の10,178人しか避難し終えないことがわかった。<BR><br><BR> <br><b>4</b><b>.考察</b><BR><br> シミュレーション結果から、避難開始数分後は交差点とコーナーに混雑が確認できる。その後、避難行動が進むにつれて、エージェントが通る道路が限定されていき、混雑する道路を特定できる。また、曜日、時間ごとの推定結果を蓄積することで、それぞれの日時の混雑の傾向を推定することが可能になる。時間帯別の危険箇所を指摘することは今後の防災対策として有効に活用できると思われる。この結果から考えられる対策として、避難施設の入り口の拡張、避難者を分散させるような経路の検討、曲がる回数を最小に抑えた直線的な避難誘導などが挙げられる。本研究で提案した手法は、他の地域にも適用可能な汎用的手法である。今後、他の地域にも適用することで、混雑が生じる危険箇所を確認できるシステムとして広範囲に利用できる。<BR><br> 本手法は、扱ったデータの正確性から考えて、あくまでひとつの推定手法に過ぎない。また、災害の被害状況によってはすべての道路が安全に通れるという保障はない。しかし、時間帯ごとの避難行動のシミュレーションによって、時間ごとにおおよその混雑箇所、混雑道路が把握できるという点では有効な推定手法と言えよう。今後、より実態に近い避難行動の推定を行うには、過去の避難行動の調査を参考に、各避難施設の収容数も考慮した、より適切な避難行動モデルを設定する必要がある。
著者
泉 岳樹 岡部 篤行 貞広 幸雄 花木 啓祐 一ノ瀬 俊明
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境システム研究 (ISSN:09150390)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.171-178, 1999-10-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1

This paper predicts the effects of the capital relocation on a thermal environment using a meso-scale meteorological model. Five candidate cities, Tomakomai, Nasu, Hamamatsu, Toki and Ueno, are chosen for study areas.The simulation results show that temperature will rise in all the candidate cities after the relocation. The temperature rise averaged over a day is from 0.5 to 1.0 degree centigrade in each candidate city. In the coastal candidate cities, Tomakomai and Hamamatsu, the temperature will rise not only in new capital regions but also in the leeward regions because of the sea breeze.Relative contribution of land cover changes and anthropogenic heat to the temperature rise are also compared. The temperature rise in the daytime is brought mostly by land cover changes. At night the influence of anthropogenic heat becomes large, and in some candidate cities it becomes greater than that of land cover changes. These results imply the energy-saving at night is effective for controllingthe temperature rise in a new capital.
著者
岡部 篤行 山田 育穂
出版者
青山学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、空間自己相関を検定する統計量として頻繁に使用されているモランのI指標の正確な使用方法を提案したものである。多くの既存研究では、研究対象地域を構成するゾーン数がせいぜい100程度であれば、モランのI指標に正規性が仮定できるとして、空間自己相関がないという帰無仮説の統計的検定が行われている。本研究は、そのような多くのゾーン数であっても正規性は仮定できないことを示し、通常の利用方法は間違いを起こしやすいことを指摘した。この欠点を克服すべく、本研究では膨大な数のモンテカルロシミュレーションを行い、帰無仮説の元での限界値の数表を作成した。この数表を使うことで正確な統計的検定が可能となった。
著者
岡部 篤行
出版者
日本地域学会
雑誌
地域学研究 (ISSN:02876256)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.139-158, 1977-12-20 (Released:2008-10-10)
参考文献数
3

This paper reexamines Simon's model which formulates the stochastic processes yielding the Yule city size distribution. First, in conjunction with the empirical fact that the form of city size distributions is stable over time, the concept of the “steady state” stated by Simon is clarified. Second, Simon's assumptions and the “steady state” are shown to be contradictory. Third, however, it is shown that this contradiction is disolved in the context of the “asymptotic steady state”. Based on these reconsiderations, fourth, Simon's model is reformulated. Last, in the context of this reformulated Simon's model, the “steady state” is reconsidered.
著者
佐藤 次高 加藤 博 私市 正年 小松 久男 羽田 正 岡部 篤行 後藤 明 松原 正毅 村井 吉敬 竹下 政孝
出版者
東京大学
雑誌
創成的基礎研究費
巻号頁・発行日
1997

1.中東、中央アジア、中国、東南アジア、南アジア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカを対象に、イスラームの諸問題を政治、経済、思想、歴史、地理など広範な分野にわたって検討し、近現代の政治運動、知識人の社会的役割、聖者崇拝など、将来の重要研究課題を明らかにした。2.和文と英文のホームページを開設し、研究情報を迅速に公開したことにより、日本のイスラーム研究の活性化と国際化を実現することができた。研究の成果は、和文(全8巻)および英文(全12巻)の研究叢書として刊行される。なお、英文叢書については、すでに3巻を刊行している。3.アラビア文字資料のデータベース化を推進し、本プロジェクトが開発した方式により、全国共同利用の体制を整えた。これにより、国内に所在するアラビア語、ペルシア語などの文献検索をインターネット上で簡便に行うことが可能となった。4.各種の研究会、現地調査、外国人研究者を交えたワークショップ、国際会議に助手・大学院生を招き、次世代の研究を担う若手研究者を育成した。とりわけ国際シンポジウムに多数の大学院生が参加したことは、海外の研究者からも高い評価を受けた。5.韓国、エジプト、トルコ、モロッコ、フランスなどから若手研究者を招聘し(期間は1〜2年)、共同研究を実施するとともに、国際交流の進展に努めた。6.東洋文庫、国立民族学博物館地域研究企画交流センターなどの研究拠点に、イスラーム地域に関する多様な史資料を収集し、今後の研究の展開に必要な基盤を整備した。
著者
岡部 篤行 佐藤 俊明 岡部 佳世 中川 貴之 今村 栄二 松下 和弘 長野 一博 石渡 祥嗣 飴本 幸司 林 良博 秋篠宮 文仁
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.30-39, 2006-09-30 (Released:2009-02-13)
参考文献数
5

当報告書は,無線LAN位置システム(以下システム)を放し飼いニワトリの軌跡追跡に適用可能かどうかを調べた結果を報告するものである。システムは,連続的な地面上にいるニワトリの位置を1 mのグリッド交差点上の点として表し,ニワトリの軌跡はその点列として表す。システムは,ニワトリの位置を1秒ごとに記録することができる。実験は8羽のニワトリと2羽のホロホロチョウを170 m×90 mの広さの公園に放って5日間にわたりその軌跡を観察した。分析に利用可能なデータは3日間得られた。システムによって得られる位置のデータは雑音を含むため,位置データは確率変数として扱った。データ分析により,位置の精度は,確率0.95で2.6 m,すなわち,真の位置が,観察された位置を中心に半径2.6 mの円の中にある確率が95%であると判明した。ニワトリの生活圏は,その場所にニワトリがいた確率密度関数として表現した。その関数はバンド幅が2.6 mのカーネル法で推定をした。軌跡は移動平均で推定した。実験の結果,システムは放し飼いニワトリの軌跡追跡に適用できることが判明した。