著者
日高 紀久江 紙屋 克子 増田 元香
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.361-367, 2006-05-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
15
被引用文献数
5 3

目的: 経管栄養を行っている遷延性意識障害患者 (以後, 意識障害患者と略す) の栄養状態の評価を行い, また在宅や高齢者施設等で簡易に評価可能な栄養評価指標について検討した. 方法: 意識障害患者46名を対象に1) 身体計測, 2) 血液検査, 3) 安静時代謝量から栄養評価を実施し, また栄養状態と関連があると思われる臨床症状と身体計測・血液検査値との関連から評価指標を検討した. 結果: 意識障害患者の平均年齢は76.3±14.3歳であり, 脳梗塞を原因とする患者が最も多かった. 身体計測値においては, 健常者の同性・同年齢の値を標準値として相対値で表した上腕三頭筋皮下脂肪厚 (%TSF) は平均 (Mean±SD) 105.7±39.8であったものの, 上腕筋周囲長 (%AMC), 下腿周囲長 (%CC) は各87.5±11.5, 73.6±9.4であった. 血液検査では, 血清アルブミン (Alb) の平均は3.3±0.5g/dlであり, 46名中35名 (76.1%) は3.5g/dl以下であった. また臨床症状では, 眼瞼結膜が蒼白な患者の血色素量 (Hb)・ヘマトクリット (Ht) の平均は各9.9±2.1g/dl (p<0.01), Ht=29.3±6.6% (p<0.01) であり, さらにAlbも蒼白のない患者に比較して有意に低値であった (p<0.05). 考察: これまで意識障害患者の過剰栄養が留意されてきたが, 本研究ではAlbが3.5g/dl以下であるたんぱく・エネルギー栄養不良 (PEM) のリスク者が多く, 過剰栄養よりむしろ低栄養が問題であることが明らかになった. したがって安静時代謝量の測定や身体・精神機能, 合併症の併発等を考慮しながら定期的に栄養評価を実施し, カロリー調整を行う必要がある. また, 眼瞼結膜はHb・Ht, Albの低下に関連していたことから, 栄養評価指標の一項目となり得る可能性が示唆された.
著者
増田 元香 松田 ひとみ 橋爪 祐美
出版者
福島県立医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、高齢者の睡眠覚醒障害に対する生活方法の提案を意図し、看護の観点である生活リズムの調整、すなわち活動と休息の適正化を目指した看護介入プログラムの開発である。前年度までに、地域在住の活動的な高齢者の日常生活の特徴として、定期的な運動習慣を有するものが多く、日常生活行動は自立し趣味や菜園作りなど活発に活動していること、そのような高齢者の夜間の睡眠の特徴としては、夜間の覚醒回数が1回以上の人がほとんどであったこと、再入眠の状況については個人差がわかった。また飲酒習慣がある高齢者では飲酒量と入眠までの時間と睡眠の質を示す睡眠効率との間に関連があることがわかった。また日内活動の調整の観点から日中の活動状況を分析すると、昼寝習慣の有無や所用時間に個人差がみられた。昼寝時間が夜間の睡眠の質に関連していると考え調べたところ、夜間のトイレ回数が多い人は少ない人に比べ有意に昼寝時間が長いことが明らかになった。これらの成果をふまえて高齢者の睡眠の質を高めるための看護を検討した。そのためには、日中の活動内容を十分に把握し、どのような活動の特徴を持っているか、夜間の睡眠の質に関係する夜間排尿の状況と再入眠の状態、飲酒習慣とその量や主睡眠までの状態を評価することが重要である。さらに昼寝習慣のみならず、昼寝時間の長さ、および夜間の覚醒回数を関連して観察し、さらに夜間の覚醒している理由について、排尿なのか、それ以外なのかを把握し看護する必要があると考えられた。しかしながら、高齢者の睡眠の質に関連する生活習慣や要因の出現には個人差が大きいため、一律化することよりむしろ、個別性の高いケアの必要性が高く、その充実を図ること、すなわちアセスメント項目や生活リズムの調整方法の選択肢の充実のが看護プログラムを開発する上で重要性であると示唆された。
著者
松田 ひとみ 久野 譜也 檜澤 伸之 増田 元香 橋爪 祐美 奥野 純子 野村 明広
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究は高齢者の睡眠の質を向上させる方法を明らかにするために、一日の生活活動と休息の状態を評価し、昼寝とナラティブ・ケアの有用性を導き出すことができた。また、その効果測定には、活動量計であるアクティウォッチによる睡眠効率と心拍変動パワースペクトル解析による日中の情動変動の評価が有効であると考えられた。
著者
松田 ひとみ 増田 元香
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

北海道と関東地方地域在住の活動的な高齢者240人を対象として、会話の時間、相手、家族関係、生活習慣、リズム、うつ状態の評価と睡眠状態について、聞き取り調査とライフコーダ、アクティウォッチおよびアクティブトレーサーを用いて計測した。また、アクティウォッチから得られる睡眠効率を80%を指標に高群と低群に分け、両群の差を検討した。低群に対して、ライフヒストリーの聴取(30分間)を導入し、生活リズムと睡眠との関係について同様の機器で測定した。データはSPSS(Ver16.0J)統計パッケージを用いて解析を行った。睡眠に影響を与える心疾患、精神疾患、睡眠障害、睡眠随伴症状を有する者、睡眠薬を服用しているものは分析から除外した。解析の結果、男性が親しく会話をする相手として選択したのは、配偶者であったが、女性は姉妹や友人という回答であり性差がみられた。また、睡眠効率低群は、会話時間が短く、家族内での会話交流が乏しい傾向が見出された。さらに、低群において、うつ傾向との相関がみられた。特に男性で睡眠効率が低く会話時間が短いものを対象として介入を行った結果、初回の会話では睡眠への影響が見出されなかった。しかし、会話を約束して行った2回目以降の介入において、睡眠効率の改善が見出されるケースがあった。これらの介入については、インタビュアーとの人間関係や相性などのデリケートな側面もあり、必ずしもナラティブの効果とまでは結論付けることはできなかった。今後は、話し相手ボランティアの積極的な導入にも影響を与えるアプローチであることも踏まえ、更にナラティブ・ケアの具体的なプ白グラムと評価方法を検討することが課題となった。