著者
大久保 紀一朗 和田 裕一 窪 俊一 堀田 龍也
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.19-35, 2018 (Released:2018-11-30)
参考文献数
31
被引用文献数
1

本研究は,マンガの読みに固有の読解力や,文章の読みと共通する読解力の内実を明らかにするために,マンガの読解力と文章の読解力の関係性について検討することを目的とした。マンガの読解力および文章の読解力の測定にあたっては,マンガと文章それぞれについて,van Dijk & Kintsch(1983)の文章理解モデルにおける3つのレベルの表象(表層レベル・テキストベース・状況モデル)を反映する設問からなる理解度テストを実施し,得点間の媒介分析ならびに相関分析を行った。その結果,マンガと文章の表層レベルに関する問題の得点はテキストベースに関する問題の得点を媒介して,状況モデルに関する問題の得点に影響していることが示され,マンガの読解においてもvan Dijk & Kintsch(1983)の文章理解モデルが適用できることが示唆された。また,マンガと文章の読解力の関連性に関して,表層レベルの理解では異なる認知能力が寄与している一方,テキストベースや状況モデルの読解では共通する認知能力が寄与していることが示唆された。本研究で得られた知見を踏まえ,マンガの読解と文章の読解の共通点や相違点について議論した。
著者
稲木 健太郎 泰山 裕 大久保 紀一朗 三井 一希 佐藤 和紀 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S47055, (Released:2023-09-04)
参考文献数
8

本研究は,思考ツールの選択に関するメタ認知にクラウドで共有した他者の振り返りの参照が与える影響を検討することを目的とした.小学校第4学年児童を対象に,思考ツールの選択に関する振り返りをクラウドで学級内へ共有し,参照させ,改めて自覚したことがある場合は振り返りを追記させた.参照前の振り返りにおいてメタ認知に該当する記述数の多かった群を高群,少なかった群を低群とし,記述の分析とインタビューにより参照の影響を検討した.結果,参照が高群と低群のメタ認知を促すこと,参照により,低群では特に自覚が困難だった経験が,高群では特に無自覚になっていた経験が想起され,メタ認知につながったことが示唆された.
著者
大久保 紀一朗 和田 裕一 窪 俊一 堀田 龍也
出版者
日本読書学会
雑誌
読書科学 (ISSN:0387284X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3-4, pp.128-142, 2020-02-20 (Released:2020-03-26)
参考文献数
39

Japanese comics (manga) are now one of the most popular reading media among young generations. However, the cognitive mechanisms that might underlie reading comprehension of manga remain unknown. This study aimed to clarify the characteristics of reading comprehension of manga with respect to the functions of working memory. In this study, 61 sixth grade readers were asked to read a manga story and then complete a comprehension test based on van Dijk & Kintsch’s (1983) model of three distinct levels of text representation: the surface form, the propositional textbase, and the situation model. The participants then completed several types of working memory tests measuring verbal short-term memory, verbal working memory, visuo-spatial short-term memory, and visuo-spatial working memory. Correlational analysis and multiple regression analysis were used to assess the associations between each level of reading comprehension and each of the working memory capacities. The results showed that high-capacity readers for both verbal and visuo-spatial working memories showed a higher performance compared to other readers in the process of textbase comprehension, implying the involvement of integrated propositional representation of verbal and visuo-spatial information for understanding manga stories. On the other hand, verbal and visuo-spatial components of working memory were found to be separately involved in situation model processing. Based on these findings, media characteristics of manga and its potential usefulness as a learning material in language class are discussed.
著者
稲木 健太郎 泰山 裕 三井 一希 大久保 紀一朗 佐藤 和紀 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46058, (Released:2022-07-26)
参考文献数
7

本研究は,児童が学習方法を自己選択する授業の経験と学習方法のメタ認知の関係を調査し,学力の高低ごとに検討することを目的とした.調査対象の授業を週15コマ程行った学級を高頻度群,週3コマ程行った学級を低頻度群とし,学習方法のメタ認知に関する振り返りの記述数と学力との関係を分析した.結果,経験頻度と学力の二要因が,学習方法のメタ認知的活動に関係する可能性が示唆された.一方,学習方法のメタ認知的活動を適切に行うには,学習方法を自己選択する経験だけでなく,学習方法に合わせたメタ認知的活動を適切に行うための支援や,学力下位群への支援が必要となる可能性が示唆された.
著者
恩田 真衣 大久保 紀一朗 板垣 翔大 泰山 裕 三井 一希 佐藤 和紀 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46026, (Released:2022-10-13)
参考文献数
9

本研究では,小学校第4学年理科「物のあたたまり方」の単元で日常生活や社会との関連を図るアニメーション教材を開発し,その効果を検証した.その結果,開発したアニメーション教材を使用すると,学習内容と日常生活や社会との関連に気づき,理科学習に対しての興味が高まること,アニメーション教材に,児童が選択したり,繰り返し試行したりできるような機能をつけることで,思考を深めようとする理科学習に対しての興味が高まること,正しい概念形成が促されることが示唆された.
著者
大久保 紀一朗 板垣 翔大 佐藤 和紀 中川 哲 山本 朋弘 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.2, pp.60-67, 2022-06-27 (Released:2022-06-27)

本研究では,小学校第6学年を対象にAIの画像認識について理解する学習を開発し,児童のAIに対する理解や意識の変容から授業を評価した.授業は4単位時間で実施し,画像認識の仕組みについてAIについて体験的に理解する学習と,身近な問題解決にAIの活用を体験する学習を実施した.事前調査とAIについて体験的に理解する学習後の事後調査1,身近な問題解決にAIの活用を体験する学習後の事後調査2の結果の比較から,開発した学習プログラムの効果を検討した.
著者
大久保 紀一朗 佐藤 和紀 山本 朋弘 板垣 翔大 中川 哲 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.45075, (Released:2021-10-19)
参考文献数
25

本研究では,小学校社会科の農業の学習においてドローンを用いたプログラミング教育を実践し,テクノロジーを米作りへ活用する必要性の理解に関する効果について検証した.授業の事前事後において,米作りへの参画意識に関する調査への回答と,米作りに関連すると考えられる仕事の記述をさせた.その結果,ドローンを用いたプログラミング教育が,ドローンを米作りに活用することを想起させることに有効であり,米作りへの参画意識を育むことが示唆された.また,授業の事後において米作りに対するイメージを自由記述で回答させ,テキストマイニングによる分析を行った.その結果,ドローンを用いたプログラミング教育を経験することにより,ドローンを米作りに活用することの必要性を理解するとともに,人が担う役割について再考するなど,これからの米作りに必要なことについての思考を促すことが示唆された.
著者
大久保 紀一朗 佐藤 和紀 山本 朋弘 板垣 翔大 中川 哲 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.157-169, 2022-02-20 (Released:2022-03-15)
参考文献数
25

本研究では,小学校社会科の農業の学習においてドローンを用いたプログラミング教育を実践し,テクノロジーを米作りへ活用する必要性の理解に関する効果について検証した.授業の事前事後において,米作りへの参画意識に関する調査への回答と,米作りに関連すると考えられる仕事の記述をさせた.その結果,ドローンを用いたプログラミング教育が,ドローンを米作りに活用することを想起させることに有効であり,米作りへの参画意識を育むことが示唆された.また,授業の事後において米作りに対するイメージを自由記述で回答させ,テキストマイニングによる分析を行った.その結果,ドローンを用いたプログラミング教育を経験することにより,ドローンを米作りに活用することの必要性を理解するとともに,人が担う役割について再考するなど,これからの米作りに必要なことについての思考を促すことが示唆された.
著者
手塚 和佳奈 佐藤 和紀 大久保 紀一朗 久保田 善彦 堀田 龍也 谷塚 光典
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.3, pp.9-16, 2021-10-29 (Released:2021-10-29)

本研究は,メディアや情報に対して大学生がもつステレオタイプやバイアスに関する実態調査を実施した.質問紙は,【メディアへの接触頻度】,【画像情報のステレオタイプ的解釈】,【メディアを介した情報の流通が人々の行動に与える影響】,【バイアスとメディアの関係が人々の行動に与える影響】に関する質問で構成した.大学生51名からの回答を分析した結果,①背景情報を手がかりに画像情報をステレオタイプ的に解釈する人は1割程度,②メディアを介した情報の流通が人々の行動に与える影響に言及できる人は3割程度,③バイアスとメディアの関係が人々の行動に与える影響に言及できる人は1割程度であった.
著者
大久保 紀一朗 佐藤 和紀 中橋 雄 浅井 和行 堀田 龍也
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.33-46, 2016 (Released:2017-09-14)
参考文献数
7
被引用文献数
5

本研究は,マンガを読解・解釈・鑑賞する活動を通してメディア・リテラシーを育成する学習プログラム(小学校第5学年対象)を開発し,その有効性を検証したものである。国語科の漫画家を題材にした説明文の学習を通して,マンガの表現技法について学んだ上で,漫画家の作品を読み込み,マンガレポートや本の帯やポップを作成する活動を行った。能力評価尺度を用いた事前調査と事後調査の平均点を比較したところ,全ての項目で事後調査の平均点が高く,有意な差を確認することができた。また,開発した学習プログラムを実施したクラスの平均点は,実施していないクラスの平均点よりも高く,有意な差を確認することができた。評価基準による3者の評価の平均点が3点満点中2.5点以上であったこと,Kendallの一致度係数はすべてW=.7以上であったことから,本論で示した学習プログラムは有効であったことが示唆された。
著者
大久保 紀一朗 和田 裕一 窪 俊一 堀田 龍也
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.13-29, 2020 (Released:2020-09-17)
参考文献数
29

本研究ではマンガの読解指導について検討するための基礎的知見を得るために,小学校高学年を対象に,(1)マンガを含むメディアへの接触頻度,(2)マンガの読み方,(3)マンガへの意識・態度に関する調査を行った。その結果,マンガの読み頻度は1990年に行われた調査と比較して低いことが示された。一方で,児童を取り巻くメディア環境が大きく変化した今日においても,小学校高学年児童の多くはマンガに対して肯定的な意識をもっていることが示された。マンガに対する意識を測る尺度得点について因子分析を行った結果,マンガの有用感,マンガの分かりやすさ,マンガの悪影響,マンガへの低評価という4因子構造が得られた。それらの下位尺度得点と,読み方の関係を検討するために相関分析を行った。その結果,マンガに対して肯定的な意識をもっている児童は,マンガを深く理解する読み方をしていることが示唆された。そこで,マンガの読み方を目的変数,マンガに対する意識を構成する4つの因子の下位尺度得点を説明変数として重回帰分析を行ったところ,マンガに対する有用感がマンガの読み方に影響を与えていることが示唆された。