著者
村田 功二 富田 夏生 仲村 匡司 秋津 裕志 大崎 久司 浦上 晃 池田 真一
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.44-49, 2021-01-25 (Released:2021-01-30)
参考文献数
10

これまでの研究で国産材であるダケカンバ(Betula ermanii)が野球バットとして利用できることが分かった。ダケカンババットについて打音に関係するだろうと考えられる繊維傾斜角とバットの振動特性の関係を調べ,タモバットおよびメープルバットと比較した。また,反発性能としてボール・バット反発性能(BBCOR)を測定し,振動特性との関係を調べた。その結果,縦振動の固有振動数は繊維傾斜角と関係し,直交異方性弾性体として導かれた弾性率の換算式とよく適合した。打音は繊維傾斜角と関係し,バットの性能の指標となりうることが確認できた。各種バットに球速120km/hで衝突させたときのBBCORを測定した結果,ダケカンババットは最も優れた反発性能を示した。またBBCORはバットの内部摩擦と負の相関がみられ,衝撃によるエネルギー損失が反発性能と関与する可能性がある。
著者
富田 夏生 村田 功二 仲村 匡司 秋津 裕志 大崎 久司
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.39-45, 2020-01-25 (Released:2020-02-01)
参考文献数
9

ダケカンバは北海道の先駆種でもあり蓄積量も多いが十分な活用がなされてこなかった。そこで価値の高い活用方法としてバット用材としての評価方法とその適正を検討した。バット用材に最も要求される物性を衝撃曲げ強度と考え,ダケカンバ材の繊維傾斜と衝撃曲げ強度および衝撃曲げ破壊エネルギーの関係を調べた。既存の報告に近い傾向が衝撃曲げ強度でも確認でき,ハンキンソン式の適用が可能であった。バット用材のグリップを模した試験体で衝撃曲げ試験を行い,既存のバット用材と比較した。密度および繊維傾斜を補正した結果,ダケカンバは既存のバット用材と破壊エネルギーと強度の両方で同等の性能を示した。実際に硬式野球バットを試作し,大学野球部で試打を行った。一週間の試打で破損は見られず実用に耐えうることが確認できた。アンケートの結果では打球感や飛距離などでも「良い」や「普通」の回答が大半をしめ,実用上問題がないことが確認できた。
著者
久保島 吉貴 大崎 久司 沢田 知世 折口 和宏 吉原 浩 岡野 健
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
no.103, pp.243-306, 2000-06
被引用文献数
3

東京大学農学部附属千葉演習林牛蒡沢産の86年生のスギの材質試験を行った。結果の概要を以下に示す。1)各物性値の半径方向の変動(髄→樹皮方向)は,多くの場合,以下のa)のような傾向を示した。一部はb)のような傾向であった。a)・髄付近では大体の場合,安定あるいは増大,一部極大値があった。・心材部あるいは心辺材境界部分で極大値が存在した。・辺材部では減少した。b)髄付近から心材部にかけて安定していた。2)本実験に用いられた丸太には直径が約30cmまたは50cmの2種類存在したが,太さによって物性値の半径方向の変動のパターンが変わっているとは言えなかった。3)各物性値と密度ならびに弾性率との相関関係を表2に示す。多くの場合密度や弾性率と相関関係が認められた。Properties of 86-year-old sugi wood (Cryptomeria japonica D. Don) planted at Gobozawa in Tokyo University Forest in Chiba were tested. Five logs were used. The tests and the measured properties were as follows: 1) Soft X-ray measurement: density variation in the radial direction 2) Static bending test: Young's modulus, proportional limit, bending strength, and bending work 3) Impact bending test: absorbed energy in impact bending 4) Compression test: Young's moduli in longitudinal (L), radial (R), and tangential (T) directions, proportional limits in L, R, and T-directions, and longitudinal compression strength 5) Torsion test: shear moduli of the LT and LR-planes 6) Shear test: shear strength of the LT-plane 7) Hardness test: hardness of the RT, LT, and LR-planes 8) Shrinking test: percent shrinkage in the L, R, and T-directions The results were as follows: 1) The patterns of variation of the measured wood properties in the R-direction (from pith to bark) mainly followed pattern (a) but some cases followed pattern (b). a) Around the pith: the values of the properties increased or did not change in most cases, and sometimes had peaks. Heartwood region, and boundary between heartwood and sapwood: the properties exhibited peaks. Sapwood region: the properties decreased. b) They were stable at the pith and heartwood regions. 2) The pattern of variation did not change with the diameter of the logs. 3) The wood properties were related to density and moduli of elasticity at the 1% or 5% significant level in almost all of the cases.