著者
橋田 光 田端 雅進 久保島 吉貴 牧野 礼 久保 智史 片岡 厚 外崎 真理雄 大原 誠資
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.48-54, 2014-01-25 (Released:2014-01-28)
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

未利用なウルシ材を染色用途に利用するため,ウルシ材の織布への染色特性を検討した。ウルシ材フェノール成分の効率的な熱水抽出条件を検討した結果,炭酸ナトリウムの添加が有効なことを明らかにした。抽出液による染色特性を検討したところ,ナイロン,羊毛及び絹で良好な染色性を示した。また,炭酸ナトリウム添加抽出による染液に酢酸を添加することで,熱水抽出より効率的な濃染が可能であり,金属塩を用いた媒染においてもより濃色に発色することが示された。洗濯処理により,未媒染の染色布は大きく脱色したが,媒染や濃染により脱色の抑制が可能であり,特に酢酸鉄(II)を用いた媒染による抑制効果が高かった。また,ウルシ材による染色布は,黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対し,明確な抗菌性を有することを明らかにした。
著者
久保島 吉貴 外崎 真理雄 橋田 光 田端 雅進
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第124回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.184, 2013 (Released:2013-08-20)

ウルシ材は耐湿・耐水性に優れるため水桶や馬桶などに用いられ,材が軽いことから網浮木として用いられてきた。また材色を活かして寄木細工にも使用されている。しかし材の特性は一部の地域産材に関しては得られているものの十分な知見が得られているとは言えない。現状では伐採後に放置されている樹液採取後のウルシ材の利用し新たな産業の創出や漆産業の維持・拡大につなげて行くには,材の特性を解明し,特性を活かした利用法を開発する必要がある。そこでウルシ材の主に物理的,力学的な物性を検討した。その結果,静的曲げヤング率,静的曲げ強度および衝撃曲げ吸収エネルギーは小さいものはスギと同程度で大きいものはカラマツおよびアカマツと同程度であり,密度と有意な相関関係が存在した。従って材の強度は密度から推定される妥当な範囲であると考えられるが,樹液採取が樹齢10-15年程度で行われるため丸太の直径が小さいことと,生産本数がスギ,ヒノキおよびカラマツなどと比較して極めて少ないことなどを考慮した用途開発が望まれる。用途としては既に開発されているものに加え産地の小中学校や体験教室などの教材にも利用出来るのではないかと考えられる。
著者
久保島 吉貴 大崎 久司 沢田 知世 折口 和宏 吉原 浩 岡野 健
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
no.103, pp.243-306, 2000-06
被引用文献数
3

東京大学農学部附属千葉演習林牛蒡沢産の86年生のスギの材質試験を行った。結果の概要を以下に示す。1)各物性値の半径方向の変動(髄→樹皮方向)は,多くの場合,以下のa)のような傾向を示した。一部はb)のような傾向であった。a)・髄付近では大体の場合,安定あるいは増大,一部極大値があった。・心材部あるいは心辺材境界部分で極大値が存在した。・辺材部では減少した。b)髄付近から心材部にかけて安定していた。2)本実験に用いられた丸太には直径が約30cmまたは50cmの2種類存在したが,太さによって物性値の半径方向の変動のパターンが変わっているとは言えなかった。3)各物性値と密度ならびに弾性率との相関関係を表2に示す。多くの場合密度や弾性率と相関関係が認められた。Properties of 86-year-old sugi wood (Cryptomeria japonica D. Don) planted at Gobozawa in Tokyo University Forest in Chiba were tested. Five logs were used. The tests and the measured properties were as follows: 1) Soft X-ray measurement: density variation in the radial direction 2) Static bending test: Young's modulus, proportional limit, bending strength, and bending work 3) Impact bending test: absorbed energy in impact bending 4) Compression test: Young's moduli in longitudinal (L), radial (R), and tangential (T) directions, proportional limits in L, R, and T-directions, and longitudinal compression strength 5) Torsion test: shear moduli of the LT and LR-planes 6) Shear test: shear strength of the LT-plane 7) Hardness test: hardness of the RT, LT, and LR-planes 8) Shrinking test: percent shrinkage in the L, R, and T-directions The results were as follows: 1) The patterns of variation of the measured wood properties in the R-direction (from pith to bark) mainly followed pattern (a) but some cases followed pattern (b). a) Around the pith: the values of the properties increased or did not change in most cases, and sometimes had peaks. Heartwood region, and boundary between heartwood and sapwood: the properties exhibited peaks. Sapwood region: the properties decreased. b) They were stable at the pith and heartwood regions. 2) The pattern of variation did not change with the diameter of the logs. 3) The wood properties were related to density and moduli of elasticity at the 1% or 5% significant level in almost all of the cases.