著者
大崎 茂芳
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.406-410, 1989-03-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
12

クモのけん引糸を開発した自動糸巻き器により採取し,その光学的性質を, 400~700nmの波長域で調べた.メスのジョロウグモのけん引糸は,夏には全波長領域にわたって均一な反射を示すが,秋には450nm付近の反射強度の低下を示すこと,すなわち自色から黄色へ色変化すること見いだした.この黄変の理由として,昆虫捕獲用と外敵防衛用の機能としての保護色化の可能性が考えられる.また,赤外線二色性から,たんぱく質分子鎖はけん引糸の方向に配向していることがわかり,この配向性が強さの秘けつと思われる.けん引糸の荷重一伸長曲線は完全破師に至る前に.段階的な荷重の低下を示すこ'とから,何本かの繊維からなるけん引糸は,たとえ一本の繊維が切れても,命綱としての役割を果たすことが示唆される.けん引糸は. 100km程度は垂らせる.こうした糸の物理・化学的な特性を明らかにすることが,巧妙で不思議なクモの生態を解き明かす手がかりになるであろう.
著者
大崎 茂芳
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.828-835, 1985-09-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
27
被引用文献数
4 3

The paper describes the following items ; (a) the construction of orb-web, (b) the chemical composition of secretions and the adhesive materials, (c) the toxin of spider, (d) the courtship and ferromon, (e) the thermal properties of spider's drag line, (f) the change in color of drag line. For example, the toxin of spider contains spermine whose existence is detected in human semen. The DSC curve between room temperature and 600°C shows that the spider's thread should be at least stable up to 200°C. The color of drag line changes from white to yellow with changing seasons from summer to autumn. The fact suggests a possibility that the color of spider's thread protects the spider from foreign invaders.
著者
大崎 茂芳
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.21-28, 1989 (Released:2007-03-29)
参考文献数
11
被引用文献数
11 12

季節ごとに採取したクモの牽引糸の光学的反射特性を, 400nmから700nmの範囲で調べた。同一地域で採取されたメスのジョロウグモの牽引糸は, 環境の季節的変化に伴って, 夏には白色あるいは半透明色であるが, 秋には黄色に変化することがわかった。秋における黄色化は, 成熟したメスのジョロウグモによる分泌物に起因し, またクモ自らを捕食者から防衛するばかりでなく, 餌を捕獲するために重要な役割を果たすであろうことが結論される。
著者
大崎 茂芳
出版者
社団法人 繊維学会
雑誌
繊維学会誌 (ISSN:00379875)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.P-129-P-133, 2015-03-10 (Released:2015-03-07)
著者
大崎 茂芳
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.484-487, 2014

細いクモの糸は柔かくて強いと言われるが,繊維集合体となると繊維間に隙間があることから必ずしも強くない。クモの糸の繊維集合体において,隙間を軽減した構造を持つ切れにくいヴァイオリンの弦作りに成功した。クモの糸の弦でストラディヴァリウスに勝るとも劣らぬ音色を呈することを科学的に明らかにした。
著者
大崎 茂芳
出版者
The Japan Society of Applied Physics
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.406-410, 1989

クモのけん引糸を開発した自動糸巻き器により採取し,その光学的性質を, 400~700nmの波長域で調べた.メスのジョロウグモのけん引糸は,夏には全波長領域にわたって均一な反射を示すが,秋には450nm付近の反射強度の低下を示すこと,すなわち自色から黄色へ色変化すること見いだした.この黄変の理由として,昆虫捕獲用と外敵防衛用の機能としての保護色化の可能性が考えられる.また,赤外線二色性から,たんぱく質分子鎖はけん引糸の方向に配向していることがわかり,この配向性が強さの秘けつと思われる.けん引糸の荷重一伸長曲線は完全破師に至る前に.段階的な荷重の低下を示すこ'とから,何本かの繊維からなるけん引糸は,たとえ一本の繊維が切れても,命綱としての役割を果たすことが示唆される.けん引糸は. 100km程度は垂らせる.こうした糸の物理・化学的な特性を明らかにすることが,巧妙で不思議なクモの生態を解き明かす手がかりになるであろう.