著者
木下 奈緒子 大月 友 酒井 美枝 武藤 崇
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.237-246, 2012-09-30 (Released:2019-04-06)
参考文献数
23

本研究の目的は、脱フュージョンの介入技法の1つであるword repeatingに焦点を当て、脱フュージョンの行動的アセスメントとして、Implicit Relational Assessment Procedure 2010(以下、IRAP)を応用することが可能か検討することであった。実験参加者31名を脱フュージョン群(n=15)と統制群(n=16)に群分けし、介入前後でIRAPを実施した。その結果、脱フュージョン群では、統制群と比較して、介入後に、一致試行および不一致試行の反応潜時が短くなることが明らかとなった。特に、不一致試行においては、介入の有無によって、反応潜時における差が顕著に示される可能性が示唆された。これらの結果から、IRAPの脱フュージョンの効果指標としての応用可能性が考察された。
著者
兼子 唯 中澤 佳奈子 大月 友 伊藤 大輔 巣山 晴菜 伊藤 理紗 山田 和夫 吉田 栄司 貝谷 久宣 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.43-54, 2015-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、社交不安障害(SAD)を、全般型(GSAD)と非全般型(NGSAD)のみでなく、自覚された生理的覚醒の高低で分類し、社交不安症状、注意バイアスの違いを検討することであった。SAD者16名と健常者6名を対象に質問紙調査と修正ドット・プローブ課題を実施した。課題では、自動的/統制的処理段階における否定的評価、肯定的評価、生理的覚醒に対する注意バイアスを測定した。分散分析の結果、GSAD・NGSAD・健常者の比較、自覚している生理的覚醒の高・低・健常者の比較では有意な差は示されなかった。しかし注意バイアス得点を0と比較した結果、NGSAD群は自動的処理段階で肯定的評価に対して、自覚された生理的覚醒の高いSAD群は統制的処理段階で生理的覚醒に対して、注意バイアスが大きいことが示された。この結果から、SADの状態像を検討する必要性とそれぞれに有効な介入方法について考察された。
著者
若澤 友行 田村 典久 永谷 貴子 牧野 恵里 面本 麻里 寺井 アレックス大道 大月 友
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.91-103, 2011-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
3

本研究の目的は、2名の自閉症スペクトラム障害をもつ児童・生徒を対象に、社会的スキル訓練を行い、その効果に対する社会的妥当性を検討することであった。当該児童・生徒の行動アセスメントは、訓練機関において彼らの学校における問題行動の文脈と関連した場面を設けて行った。行動アセスメントの結果に基づいて標的行動を選定した後、訓練機関にて社会的スキル訓練を実施した。社会的妥当性の評価は母親と教師が行った。社会的スキル訓練の結果、訓練機関および学校における当該児童・生徒の行動の改善が示唆された。社会的妥当性の評価では、標的行動の選定と訓練手続きに関して母親と教師は肯定的な評価を示したが、訓練効果に対しては両者で異なる結果が示された。訓練機関における訓練効果の社会的妥当性を高めるためには、評価者が当該児童・生徒の主訴に関して、どのような場面でどのような行動を問題にしているのかを詳細にアセスメントすることの重要性が示唆された。
著者
大月 友 権上 慎 杉山 雅彦
出版者
広島国際大学心理臨床センター
雑誌
広島国際大学心理臨床センター紀要 (ISSN:13482092)
巻号頁・発行日
no.4, pp.12-20, 2006-03-20

本研究は,最新の潜在的態度測定パラダイムであるIATとGNATに対して,①再検査法による信頼性の検討を行うこと,②課題への慣れと遂行成績および測定結果(IAT得点・GNAT得点)との関連を検討することを目的として行われた。IAT・GNAT課題として,花の名前・昆虫の名前・肯定語・否定語からなるflower/insect-IATとflower-GNATを作成し,29名の実験協力者に対して1週間間隔でそれぞれ4回実施した。その結果, IAT (r=.38~.43),GNAT (r=.23~.48) ともに,他の認知課題と比較して高い信頼性が確認された。また課題への慣れに関しては, IATは複数回の実施により反応速度は速くなるがIAT得点に有意な変化はないこと,GNATは反応速度にもGNAT得点にも有意な変化は生じないことが示された。これらの結果から,IAT,GNATの測度としての信頼性と今後の課題を考察した。
著者
大月 友 木下 奈緒子 久保 絢子 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.99-110, 2013-05-31
参考文献数
21

本研究は、Implicit Relational Assessment Procedure(IRAP)の信頼性と妥当性を、二つの観点から検討した。一つ目の観点は、言語関係の指標としてD_<IRAP>得点を用い、二つ目の観点は、心理的柔軟性の指標として反応潜時を用いた。32名の大学生を対象に、不安という言語刺激を対象とした不安IRAPを実施し、社会不安の顕在指標および潜在指標、心理的柔軟性の顕在指標、不安喚起場面での回避傾向との関連を検討した。また、信頼性の検討を目的として、24名を対象に1週間後に再度不安IRAPを実施した。その結果、不安IRAPに高い信頼性が確認された。また、言語関係の指標としてのD_<IRAP>得点は仮説どおりの結果が、心理的柔軟性の指標としての反応潜時は部分的に仮説を支持する結果が示された。これらの結果から、不安IRAPは二つの側面の指標として信頼性と妥当性を有していることが示唆された。