著者
木林 美由紀 大橋 健治 森下 真行 奥田 豊子
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.550-557, 2004-10-30
被引用文献数
10

幼稚園・保育園に通う幼児141名(6.1±0-3歳)を対象に,チューインガム法と感圧紙法(デンタルプレスケール^[○!R])を用いて咀嚼力を評価した.さらに,保護者と担任教諭および担任保育士を対象に幼児の日常の食行動および生活行動について質問紙調査を行い,咀嚼能力との関連性について検討し,以下の結果を得た.1.単位時間当たりの溶出糖量と咬合力には,性差は認められなかった.溶出糖量は,身長との間には正の相関関係が認められた.2.対象児の摂食時における咀嚼状態の評価は,施設内の担任者と保護者との評価に異なる傾向が認められた.3.保護者による評価で,偏食の少ない対象児は,偏食が多い対象児より溶出糖量が有意に高く,溶出糖量と対象児の偏食の程度は有意な関連性が認められた.4.保護者が食事を作るとき,意識して堅い物をメニューに加えている家庭の対象児は,デンタルプレスケール^[○!R]による咬合力が有意に高かった.5.担任教諭・担任保育士による評価において「友人ととてもよく遊ぶ」と評価された対象児は,ほかの対象児よりも溶出糖量が有意に高く,溶出糖量と「友人と遊ぶ」項目に有意な関連性が認められた.以上の結果から,幼児の咀嚼能力は,幼児の食行動や生活行動と関連しており,幼児と保護者に対する食教育の重要性が示唆された.
著者
岡部 聡 中島 和美 金子 慶虎 竹村 克二 五関 謹秀 遠藤 光夫 大橋 健一 神山 隆一 春日 孟
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.401-407, 1987
被引用文献数
16 14

直腸肛門部原発悪性黒色腫の1例を経験したので本邦報告137例を加え,診断と治療上の問題点を中心に検討した.症例は47歳女性,肛門部腫瘤の擦過細胞診により悪性黒色腫と診断し,腹会陰式直腸切断術(以下,APRと略す)さらに免疫化学内分泌療法を施行したが術後22カ月目に脳転移により死亡した.報告例を加えて検討した結果,診断については,(1)肛門出血を訴えるものが最も多く病悩期間は平均11カ月であった.(2)好発年齢は男女とも60歳台であり,男女比は1:1.83と女性に多かった.(3)本症の半数以上が直腸肛門移行部から発生しており,多発病変がみられたのは全体の23%であった,また(1)腫瘍最大径が5cm以上(2)壁深達度がss(a1)以上(3)肉眼的には潰瘍形成を伴う2または3型が1型よりも予後不良であった.早期診断,両側鼠径リンパ節郭清を伴うAPRと適切な抗癌剤等の投与による補助療法を行うことが本症の治療成績を向上させる上で必要であろう.