著者
森 恵莉 松脇 由典 満山 知恵子 山崎 ももこ 大櫛 哲史 森山 寛
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.12, pp.917-923, 2011 (Released:2012-01-28)
参考文献数
20
被引用文献数
5 12

現在日本で保険適応のある嗅覚検査には, 基準嗅力検査と静脈性嗅覚検査の二種あるが, 基準嗅力検査は実施率, 普及率ともに低く, 静脈性嗅覚検査は疼痛を伴う検査であり患者への侵襲が高い. 嗅覚同定能検査の一つとして開発されたOpen Essence (以下, OE) は, 現在医療保険の適応はないが, その臨床的有用性が期待されている. 今回われわれは嗅覚障害患者に対するOEと自覚症状, 基準嗅力検査, および静脈性嗅覚検査との比較検討を行った. 当院嗅覚外来患者のうち, 嗅覚の評価が可能であった122例を対象とした. OEスコアと基準嗅力検査, 静脈性嗅覚検査, また嗅覚障害に対する自覚症状としてのVisual Analog Scale (VAS) と日常のにおいアンケートとの間にはそれぞれ有意な相関を認めた. また静脈性嗅覚検査において嗅覚脱失を認めた群はOEの正答率が有意に低かった. OEは従来からの検査法である基準嗅力検査と静脈性嗅覚検査および自覚症状をよく反映するため, 一般臨床において広く利用可能な嗅力検査であると考える. なお, OEに含まれるメンソールは詐病を見破れるものとして必要と考えるが, 嗅力を判定する際にはこれを除いて検討する方が良いかもしれない.
著者
外木 守雄 有坂 岳大 塚本 裕介 佐藤 一道 山根 源之 大櫛 哲史 中島 庸也
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.9-15, 2007-04-15 (Released:2011-02-09)
参考文献数
16
被引用文献数
10 7

This study investigated risk factors for obstructive sleep apnea hypopnea syndrome (OSAHS) induced by orthognathic surgery for malocclusion, by analysis of preoperative and postoperative examination findings. In this first report, we discuss the relationship between the findings from the polysomnographic record and the direction of jaw movement during orthognathic surgery. The postoperative Apnea Hypopnea Index was significantly decreased in the group that underwent maxillaryadvancement with or without mandibular movement; however, there was no significant difference between the groups that underwent mandibular movement with and without maxillary movement. Mandibular morphology is frequently considered when evaluating the relationship between the maxillofacial structure and sleep-disordered breathing; our findings also indicated that maxillary morphology is an important factor. Hence, we advocate orthognathic surgery to treat malocclusion when necessary and to take sleep-disordered breathing into consideration. Additionally, we considered that the findings of this study provide important evaluation criteria for determining the indications for orthognathic surgery to treat OSAHS.
著者
松脇 由典 大櫛 哲史 中山 次久
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究で、副鼻腔粘膜(鼻茸)局所における総・特異的IgEの産生亢進は、好酸球性鼻副鼻腔炎(ECRS)において認め、それらは有意に局所ECP量と相関しており(真菌>ダニ>SE)、好酸球炎症を誘導している可能性が示唆された。 また真菌アルテルナリアが分泌するアスパルテートプロテアーゼはヒト気道上皮細胞に対しPAR-2を介して刺激し、細胞内カルシウムの上昇およびサイトカイン産生を誘導することを明らかにした。 さらにECRSの上皮および局所浸潤した好酸球ではPAR-2の発現が上昇していることを明らかにした。
著者
宮脇 剛司 大櫛 哲史 浅香 大也 鴻 信義 内田 満
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.363-371, 2013-12-15 (Released:2014-12-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

Nasal valve (鼻弁) は, 鼻気道と鼻腔抵抗の両者を制御する複雑な構造体である。今回我々は内鼻弁と外鼻弁の両者の狭窄による鼻閉に対し, spreader graft, columella strut, alar batten などの美容外科手技を組み合わせた open septorhinoplasty によって治療した。症例は23歳男性で労作時の鼻閉を主訴に来院した。外鼻は軽度の鞍鼻変形を認めるのみで CT 画像には異常所見を認めなかった。鼻腔通気度検査は座位, 臥位ともに呼気・吸気抵抗の軽度の上昇を認め, 強制吸気時には鼻孔は完全に閉塞した。鼻弁狭窄による鼻閉と診断し, Rethi 切開を鼻孔に延長して open septorhinoplasty を行った。L strut を10mm 幅で温存し septal extension graft を兼ねた4×25mm 大の spreader graft 2枚と columellar strut, 左右の alar batten を行った。術後の鼻腔通気度検査では気道抵抗が平均値以下に改善し, 強制吸気時にも鼻弁の閉塞はない。今回我々は本邦では比較的まれな内鼻弁と外鼻弁の両者の狭窄による鼻閉の治療を経験した。脆弱な軟骨構造に由来する鼻弁狭窄症例に対し, 美容外科手技を応用することで機能的, 整容的な改善が得られた。