著者
大澤 正嗣
出版者
山梨県森林総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ヤノナミガタチビタマムシの生活史と環境を利用した被害軽減について研究を行った。本害虫の生活史を詳細に知るため、野外調査を実施し、産卵から成虫になるまでの時期と期間を明らかにした。本害虫の寄生によりケヤキは初夏に早期落葉を起こす。その落葉の中に本害虫の終齢幼虫が入っており、この早期落葉から本害虫が羽化、脱出するまでに9~14日かかる。落葉期間はおよそ25日であり、この間に2~3回落葉を集め除去することで、本害虫を取り除くことができることを明らかにした。また、本害虫の個体数は早期落葉時期に雨が多いと減少することとそのメカニズムを明らかにした。このことは本害虫の被害予測に役立つと思われる。
著者
大澤 正嗣
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第124回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.67, 2013 (Released:2013-08-20)

トウヒツヅリハマキ (Epinotia piceae) は小型の蛾で、幼虫は針葉樹の葉を食害する。富士山北麓で2001年に本害虫が大発生し、多くのシラビソが食害され枯死し、被害面積は104haに及んだ。本害虫による被害は大台ヶ原で記録があり、本害虫の大発生は8年周期で繰り返されるであろうことが報告されている。富士山麓でも再び大発生する可能性があり、本害虫発生数のモニタリングを行っている。成虫のモニタリングは羽化トラップを設置し、夏に地面から発生する成虫を捕獲しカウントした。幼虫はシラビソを伐倒し、枝を各伐倒木から採取し、そこに付いている頭数をカウントした。その結果、調査を開始した2003年から2004年は減少傾向、2005年~2009年は頭数が一定して少なかった。しかし、その後個体数は増加に転じ、特に2011年~2012年は増加が著しかった。今後大発生が懸念される。
著者
大澤 正嗣 勝屋 敬三 竹井 博行
出版者
日本林學會
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.309-314, 1987 (Released:2011-03-05)
著者
大澤 正嗣 黒田 吉雄 勝屋 敬三
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.24-29, 1994

カラマツ高齢林における根株心腐病について富士山麓にて調査した。初めに84本の根株心腐病罹病木を用い,根元腐朽直径,腐朽高および腐朽体積の関係について調査し,次の関係式を得た。腐朽高=0.388+6.90×根元腐朽直径,腐朽体積=-1.90×10<sup>-3</sup>+0.848×根元腐朽断面積。被害実態について23カ所のカラマツ高齢林伐倒跡地を調査した。その結果,罹病率は平均23.4% (範囲3.6~61.0%) であった。上述した関係式を用い,計測した根元腐朽直径から根株腐朽体積を計算した。根株腐朽体積は調査木100本の合計で,平均0.898m<sup>3</sup> (範囲0.135~2.294m<sup>3</sup>) であった。病原菌分離の結果,この地域ではカイメンタケが主に被害を与えていることが明らかとなった。環境要因では,梅齢と傾斜度が根株心腐病の被害に影響を与えていた(腐朽体積=-1.02+0.0292×樹齢,腐朽体積=2.12-0.169×傾斜度)。土壌条件もまた被害に影響すると思われた。これらは長伐期施業を行ったカラマツ高齢林の被害の把握に役立つと思われる。
著者
大澤 正嗣 勝屋 敬三 竹井 博行
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.309-314, 1987
被引用文献数
2

長野県南佐久郡,筑波大学八ケ岳演習林,川上村有母樹林および国有林のカラマツ造林地よリカラマツ根株心腐病菌の分離をおこなった。供試149木本から病原菌を分離し,カイメンタケ (17%), レンゲタケ (7%), ハナビラタケ (7%) および新病原菌(未同定, 27%) を得た。本供試木61本からは病原菌が分離できなかった。新病原菌はこの地域のカラマツに大きな被害を与えている。本菌はレンゲタケによる腐朽と類似した立方体状褐色朽から一貫して分離されるが,立方体は小型で規則的に配列し,中期から末期腐朽部位には本菌の黒色の菌糸束がみられる。麦芽エキス寒天培地上で本菌は白色,のち淡黄褐色を帯びるコロニーを形成する。菌糸は多重クランプを有し,幅16μmまで,菌糸3~数十本からなる菌糸束を彩成する。カラマツ林内土壌にカラマツの杭を打つことにより土壌中の新病原菌を捕捉した。杭設置後6カ月目に本菌の黒色菌糸束が杭表面に付着しているのが観察され,本菌の土壌中の存在が確認された。本菌は土壌中に不均一に分布していた。