著者
斎藤進也 稲葉 光行
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.47, pp.61-68, 2008-05-16

本研究では、地域の視点からボトムアップ的に日本文化を捉える枠組みとして、Valsiner (2007) が提唱する「コレクティブ・カルチャー」という概念を採用し、それらを共有するための道具作りに取り組んでいる。そして、このコレクティブ・カルチャーに関わる情報の中でも、特に地域についての「ナラティヴ」(Wertsch,1998) を対象とし、地域住民やその地域に詳しい研究者が Web 上のデータベースを介して共有することで、特定地域の文化についてより深い理解を得るための新しい媒介的道具の作成に取り組んでいる。本稿で紹介する現在開発中のユーザ参加型ナラティヴ追記・共有支援機能を備えた協調的アーカイブ構築ツール「KACHINA CUBE システム」がそれである。本稿では、まず、地域にまつわる断片的な話題とナラティヴの概念について整理する。次に、KACHINA CUBE システムのアーキテクチャと、ユーザインタフェースについて述べる。最後に、このシステムを使って我々が現在取り組んでいる、京都洛西地域における映画文化のアーカイブ構築の事例を紹介する。This research aims at constructing Japanese cultural digital archives based on the concept of "collective culture" proposed by Valsiner. We are currently developing the KACHINA CUBE system, which enables the members of a local community to share historical episodes and folklores, or narratives in a region.This Web-baed system represents a region as a virtual 3D space that consists of a 2D map with a time axis.The users post and discuss narratives about their region on the 3D space.At the end of this paper, we introduce the Narrative Archives system that focuses on collective culture regarding movie industries in Rakusai area of Kyoto.
著者
斎藤 進也
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2008年秋季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.116, 2008 (Released:2009-01-07)

昨今、各人の自発的な参加のもと結成され、公益的な協働を行う「非営利ネットワーク」の社会的インパクトが増大している。そうした非営利ネットワークの成員らは、メーリング・リスト(ML)やSNSなどのICTをインタラクションのツールとして活用しているため、そこでのログ(通信記録)は、そのネットワークの内実や動態を知る上での重要な一次資料となると考えられる。 本研究では、先ず、非営利ネットワークにおいて実際に使用されているMLのログに対してテキストマイニングを実施し、結成から協働の組織として機能するに至るプロセス(組織化プロセス)の可視化を試みた。次いで、可視化の結果をふまえ、自発的に形成された組織の動態を把握する手法としてのテキストイニングの適用可能性について考察した。
著者
竹田 章作 斎藤 進也
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

昭和の映画全盛時代に映画フィルムと観衆を繋げ映画文化の一端を担ってきた映画館の独自の文化について「関連資料とオーラルヒストリーのデジタル保存」、「アーカイブ管理システムの開発・運用」、「人的ネットワークの構築」という3つの方法を用いた“映画館文化”を保存するための実践的研究を展開していく。そして、この目的にアプローチするプロセスを通じ、「映画館文化研究」を既存の映画研究の体系へと接続するとともに、デジタル・ヒューマニティーズの観点から非フィルム資料の保存と継承に関する方法論的知見の導出を目指す。
著者
野依 良治 斎藤 進 伊丹 健一郎 大熊 毅
出版者
名古屋大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2002

光学活性ジホスフィンと1,2-ジアミンをともに配位子とする一連の塩化ルテニウム(II)錯体は,2-プロパノール中,塩基の存在下,様々な単純ケトン類の不斉水素化反応において極めて高い活性と立体選択性を示す。平成18年度は、RuCl_2(diphosphine)(pica)やRuH(h^1-BH_4)(diphosphine)(pica)がt-アルキルケトン類の不斉水素化に有効であることを発見した(pica=α-picolylamine)。これまでかさ高いケトン類の不斉還元におけるアルコール生成物の鏡像体過剰率は不十分であったが、この問題を解決する新しい手法を提供できたといえる。さらに、η^6-arene/N-tosylethelenediamine-Ru錯体が、水素移動型還元のみならず水素化反応、にも有効な触媒前駆体であることを明らかにした。この手法により、非塩基性と酸性、いずれの条件下においても、ケトン類の高効率かっ高選択的な不斉水素化が可能となった。得られた結果は、基質適用範囲を大幅に拡大するとともに、ケトン基質の水素化遷移状態における金属-配位子二官能性機構を改めて支持した。核酸や糖医薬,および液晶材料等の合成において有用な原料となり得るβ-ヒドロキシニトロアルカン化合物やβ-アミノニトロアルカン化合物、およびβ-ヒドロキシカルボニル化合物を,金属を含有しない環境調和型触媒存在下効率よく合成することにも成功した。特に、分子構造が精密に制御された酸あるいは塩基を意味する「形ある酸」および「形ある塩基」触媒を開発した。これら分子触媒を用いることで、水溶液中での高活性・高選択的化学変換に新局面をもたらした。さらに、独自に設計・開発したロジウム錯体が、芳香環やヘテロ芳香環の炭素-水素結合を直接アリール化する優れた触媒となることも見出した。本反応はチオフェン、ビチオフェン、フラン、ピロール、インドールなどのヘテロ芳香族化合物のみならず、ベンゼン誘導体でも進行することが明らかとなった。反応機構をより詳細に理論的に解明し、今後の触媒設計指針に重要な知見を提供した。
著者
高間 総子 斎藤 進
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.255-260, 1971 (Released:2010-10-29)
参考文献数
10

低温における野菜貯蔵の効果をみるため, 試料にピーマン, トマトおよび人参を用いて, 対象区を室温とし品質, 重量, 水分量, 硬度, 細胞組織およびアミノ態窒素量の経時的変化をみた。その結果低温に貯蔵したものは室温のものに比し重量の減少は少なく水分含有量も多く, 従って品質, 鮮度の低下が少なかった。しかし硬度測定の結果では室温貯蔵のものは数値が低く軟化の早いことを示し, さらに組織の切片を検鏡した場合, この区のものは表皮細胞に変化がみられ, 鮮度, 品質の低下が明らかであった。なおピーマン, トマトのアミノ態窒素量の経時的変化では低温のものに比し室温貯蔵のものは含有量の増加が認められ, 内容成分の変化も野菜貯蔵の温度条件で異なることを示した。以上低温で蔬菜を貯蔵する場合低温は生鮮食品としての新鮮度, 品質の保持によい影響を与えていることを水分の含有量とこれに関する消耗率, 組織の硬軟, 細胞膜の状態およびアミノ態窒素の消長より確認することができた。
著者
斎藤 進 AGRAWAL Santosh AGRAWAL Santosh
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

金属錯体触媒を用いるカルボン酸の触媒的水素化法の例はこれまでほぼ皆無問いってよい. 不均一系金属触媒を用いる方法が一般的だが, 高温・高H_2圧を必要とし副反応を伴う. Re^0/Mo^0などの異核金属クラスター触媒を用いる方法では, 芳香環も水素化されてしまうため官能基選択性に乏しい. カルボン酸の水素化が難しいのは, カルボン酸自身が酸であることが一因としてあげられる。一般的にアミドやエステルなど, 不活性カルボニル化合物の水素化は「塩基性」条件下で行われた場合に効果的である場合が多い. カルボン酸自体が提供する「酸性」条件下での水素化の一般的な指導原理が実質的にはないためであると考えられる. 今回新しい考え方として塩基性条件での反応にならないよう, ルイス酸性をもつ「高原子価」遷移金属錯体の利用を考えた。そこで様々な高原子価Re(レニウム)錯体(IReO_2(PPh_3)_2, Cl_3Re(MeCN)(PPh_3)_2など)を触媒前駆体として検討した. これらRe錯体とアルカリ金属塩基以外の添加物(塩基性が非常に低い, イオン性の高いアルカリ金属塩)と様々な多座リン系, 多座アミン系配位子を組み合わせて反応を行った. 高原子価の遷移金属を, よりカチオン性にすれば, より酸性の反応条件を提供できる, と予測した. その結果, ある種の多座リン系配位子とその配位子の誘導体群が、多価Re錯体を用いるカルボン酸の水素化に有効であることを発見した. ある反応条件下(水素圧p^<H2>=1-8MPa, 反応温度T=120~180℃程度)で, Re錯体前駆体(1-2mol%程度)とアルカリ金属塩添加物(~10mol%程度)を用いることにより, より活性の高い分子触媒の形成に基づくカルボン酸の触媒的水素化に成功した。本成果も含めて最終的にはH24年度1件, H25年度2件, 計3件の特許出願にっながった.
著者
中道 勇 谷川 文紹 水越 弘 原田 修成 池田 寿人 得能 昭夫 立浪 徹 斎藤 進 原田 昭博 清田 築 富山 悟
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.200-210, 2003-07-30
被引用文献数
5

富山県歯科医師会成人・産業歯科保健部では,昭和63年に会員の約7割で構成する「事業所健診協力医制度」を発足させ,歯科健診と歯科保健指導を通じて,事業所における口腔保健の向上と健康管理を推進することを目的として,歯科保健活動を本格的に行ってきた.14年間継続的に歯科保健活動を実施してきた大規模事業所における歯科保健行動および口腔保健状況などの継時的推移について検討を加えたところ,以下の結果が得られた.1.歯科保健活動の長期実施事業所では,1日の刷掃回数2回以上,1回の刷掃時間3分以上行う者の割合が増加するなど,14年間に歯科保健行動の変容がみられた.2.1人平均現在歯数,歯周疾患の処置の必要度は変わらないものの,1人平均未処置歯数と喪失歯数が減少し,1人平均処置歯数が増加するなど,口腔内状況が改善した.3.歯科医療費や受療件数は,歯科保健活動を実施すると一時的に増加するものの,長期的には医療費全体に占める歯科医療費の割合は4〜6%程度減少した.以上のことから,事業所における歯科保健活動を継続的に実施することによって,歯科保健行動や口腔保健状況が改善されることが示唆され,歯科医療費の節約ができることが推測された.