著者
大石 如香 丹治 和世 斎藤 尚宏 鈴木 匡子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.370-378, 2015-09-30 (Released:2017-01-03)
参考文献数
17

左頭頂葉梗塞によって生じた非流暢な伝導失語例の発話の特徴について検討した。症例は 81 歳右利き男性, 発話障害と右手指脱力で発症した。接近行為を伴った頻発する音韻性錯語や重度の復唱障害といった伝導失語でみられる特徴的な症状を認めた一方で, 発話速度の低下やプロソディ異常といった伝導失語では通常認められない非流暢性発話を呈した。発話に現れる音の誤り方について分析を行ったところ, 課題によらず音の歪みがみられること, 音韻性錯語の出現率に呼称と復唱で差がないこと, 子音の誤りは置換が多く, 転置が少ないことが明らかとなり, 中心前回損傷でみられる発話特徴に近似していた。病巣は左縁上回から中心後回の皮質下に及んでおり, 中心後回と中心前回は密な機能連合があることから, 中心後回の皮質下の損傷が本例の非流暢な発話に関連していることが示唆された。
著者
大石 如香 永沢 光 鈴木 匡子
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.3-9, 2020-03-25 (Released:2020-04-15)
参考文献数
20

本邦における漢字と仮名の失読および失書に関する研究の歴史的経緯を述べ,日本語の文字特性を基盤とした読み書き障害の病態メカニズムの概要について述べた.次に,受賞論文で報告した仮名一文字と仮名単語の読みが乖離した左後大脳動脈領域梗塞による失読および失書例の神経心理学的研究を紹介した.最後に,日本語の読み書き障害のリハビリテーションにおける神経心理学的意義について述べた.
著者
大石 如香 菅井 努
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.123-133, 2021 (Released:2021-05-19)
参考文献数
29

左側頭葉病巣により健忘失語を呈した2例における二方向性失名辞の呼称の特徴とメカニズムについて検討した.症例1は53歳右利き女性.左側頭葉神経膠腫と診断され,左側頭葉前方を切除した.症例2は70歳右利き女性.左側頭-頭頂葉に脳出血を認めた.2例ともに流暢な発話と良好な復唱,自発話における失名辞,高頻度に見られる空語句や迂言,低頻度語における聴理解障害から二方向性の健忘失語と考えられた.2例に共通する失名辞の特徴として,(1)失名辞を呈した語に対し,名称を聞いても再認できない,(2)語頭音呈示により音韻的類似語が誘発される,(3)語頭音効果が乏しいといった症状が見られた.語彙理解に関する検討では,名詞の聴覚的理解や類似性判断等の言語-言語性課題の成績が低下していた.2例に見られた失名辞の背景として語彙理解障害が語彙選択障害の基盤になっている可能性が示唆された.
著者
大石 如香 石本 豪
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3+, pp.169, 2019-05-01 (Released:2019-07-06)
参考文献数
12

性格特性によって色彩嗜好が影響を受けることが指摘されている.本研究では医療福祉を学ぶ大学生における性格特徴と色彩嗜好の関連性について検討した.方法は191名の大学生を対象とし,色彩嗜好調査ならびに性格特性調査を実施した.色彩嗜好調査では,赤,オレンジ,黄,黄緑,緑,青,紫,ピンク,茶,水色の10色名を提示し,各色の嗜好度を高い順に回答させた.性格特性調査では,アイゼンクの性格理論を基に16項目の性格特性に自分がどれくらい該当するか5段階尺度で評価させた.これらの指標値や得点についてそれぞれ在籍する学科ごとに分析を行ったところ,学科によって性格特性に差があること,性格特性によって色彩嗜好に質的な差異があることが示された.学科ごとの学生の性格特性を踏まえ,各医療専門職の資格を有する教員と臨床心理士の資格を有する教員が連携を取って,学生に対する細やかな指導を実施していく必要があると考える.
著者
大石 如香 今村 徹 丸田 忠雄 鈴木 匡子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.476-483, 2016-12-31 (Released:2018-01-05)
参考文献数
23

左被殻出血後に慢性期まで記号素性錯語を呈した流暢性失語例において, 記号素性錯語の特徴について検討した。症例は 64 歳右利き女性で, 意識障害はなく, 非言語的な認知機能は保たれていた。自発話や呼称において豊富な錯語を示し, 特に呼称における記号素性錯語が特徴的だった。記号素性錯語は発症 1 年後にも認められ, 保続型と非保続型に分類できた。保続型はすでに表出された記号素やその意味的関連語を含む記号素性錯語で, 目標語を含まないものが多かった。一方, 非保続型は目標語や目標語の意味的関連語を含む記号素性錯語が多かった。経時的には保続型記号素性錯語が徐々に減少していく傾向があった。本例にみられた記号素性錯語は, 意味や運動など種々のレベルでの保続や, 目標語に関連して活性化された語の抑制障害など多様な機序により生じていることが示唆された。記号素性錯語の出現には左基底核損傷が関与している可能性があると考えられた。