- 著者
-
伊藤 千尋
戸嶋 一郎
大脇 成広
清水 猛史
- 出版者
- 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
- 雑誌
- 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌 (ISSN:24357952)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, no.1, pp.71-75, 2021 (Released:2021-08-31)
- 参考文献数
- 23
放線菌症は,Actinomyces属により腫瘤性病変を形成する疾患である。症例1は74歳男性。2ヵ月前からの嗄声,1ヵ月前からの嚥下困難と咽頭痛を主訴に紹介受診した。喉頭内視鏡検査で,右梨状窩に潰瘍を伴う腫瘤を認め,造影CTでは下咽頭,頸部リンパ節,肺,副腎に造影効果を伴う腫瘤があり,PET-CTで同部にFDG集積を認めた。下咽頭病変の生検から放線菌症と診断した。関節リウマチに対し使用していたメトトレキサート内服を中止し,アンピシリン点滴を6週間行い全ての病変は消失した。その後アモキシシリン,続いてクリンダマイシンを10ヵ月間内服した。症例2は64歳男性。10日前からの咽頭痛と口臭を主訴に紹介受診した。喉頭蓋に白苔を伴う腫瘤を認め,生検で放線菌症と診断した。生検1週間後には喉頭蓋病変は自潰し,縮小した。アモキシシリンを3ヵ月間内服した。2症例とも再発なく経過している。