著者
湯田 厚司 小川 由起子 鈴木 祐輔 有方 雅彦 神前 英明 清水 猛史 太田 伸男
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.1323-1333, 2015 (Released:2015-12-29)
参考文献数
11

【背景】本邦初のスギ花粉症舌下免疫療法(SLIT)薬が発売された.  【目的】スギ花粉症SLITの初年度の臨床効果を検討する.  【方法】初年度(2015年)のスギ花粉飛散ピーク時にSLIT191例,皮下免疫療法(SCIT)48例(治療開始後1年目の他に36例の2年目以降を含む),初期療法191例,飛散後治療141例,未治療169例で,日本アレルギー性鼻炎QOL調査票,visual analog scale,各症状スコアおよび症状薬物スコアで評価した.  【結果】軽微な副反応を40.5%に認めたが,治療中止例はなかった.ドロップアウトは5例(2.2%)で,やむを得ない理由での中断が3例(1.3%)であった.薬剤服用率は89±12%であった.ほぼ全ての項目の平均値でSCITはSLITより良かったが有意な差ではなかった.SCITとSLITは他の薬物療法より有意に良好であった.併用薬の無い,鼻眼症状スコアが1点以下の例はSLITの16.8%であった.  【結語】SLITは,SCITより若干効果で劣るが有意ではなく,初期療法などの薬物治療より有意に良好であった.
著者
小河 孝夫 加藤 智久 小野 麻友 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.8, pp.1016-1026, 2015-08-20 (Released:2015-09-04)
参考文献数
34
被引用文献数
2

当科を受診した先天性嗅覚障害16例について臨床的検討を行った. 診断は主に問診から行い, 診断補助としてMRI検査が有用であった. 20歳代までの受診が多く, 性差はなかった. 受診契機は, 自覚症状がなく家族など周囲から嗅覚障害を指摘され受診する症例が多く, 嗅覚については,「生来においを感じたことがない」という症例を多く認めた. 嗅覚障害に関連する合併症がない非症候性の先天性嗅覚障害の割合が81% (13例) と高く, 症候性の先天性嗅覚障害である Kallmann 症候群は19% (3例) であった. 基準嗅力検査は88% (14例) の症例でスケールアウトであったが, 検査上残存嗅覚があった症例も12% (2例) 認めた. アリナミンテストは実施した11例全例で無反応であった. MRI 検査による嗅球・嗅溝の定量化が診断に有用であった. 嗅球体積は, 0mm3~63.52mm3, 平均値10.20mm3, 嗅溝の深さは0~12.22mm, 平均値4.85mmで, 嗅球・嗅溝の形態異常を高率に認めた. 嗅球には, 両側または片側無形成例が69% (11例), 両側低形成例が25% (4例), 嗅溝は片側無形成例が6.7% (1例), 片側または両側低形成例は73% (11例) であった. 先天性嗅覚障害患者に対する治療方法はないが, 適切な診断を行い嗅覚障害に伴う弊害を説明することと, 性腺機能不全の精査を考慮することが重要である.
著者
湯田 厚司 小川 由起子 荻原 仁美 神前 英明 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.12, pp.1493-1498, 2018-12-20 (Released:2019-01-16)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

スギ花粉はトマトと共通抗原を有する. 口腔内に抗原投与する舌下免疫療法 (SLIT) ではトマト抗原陽性例への影響も考えられる. スギ花粉 SLIT 220例でトマト IgE 抗体 (s-IgE) 陽性例の1年目副反応を検討した. 107例の s-IgE 変化を2年間追跡した. 2例のトマト口腔アレルギー症候群 (OAS) の経過を観察した. 治療前トマト s-IgE でクラス2 (20例) と1 (18例) では, クラス0 (182例) と比べて副反応の増加がなかった. トマト s-IgE は治療前0.29±1.08, 1年後0.34±0.89, 2年後0.27±0.87UA/mL であった. 治療前クラス0 (92例) は1年後に10例でクラス1に, 4例でクラス2になった. クラス0でも55例中12例で検出閾値未満から検出可能になり, 37%に多少の変化を認めた. トマトとスギ s-IgE 変化は連動し, 交叉抗原の影響を示唆した. トマト OAS の2例は問題なく治療を継続できた. トマトアレルゲン陽性例でも安全に SLIT を行えた.
著者
湯田 厚司 神前 英明 新井 宏幸 清水 猛史
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.398-405, 2020 (Released:2020-12-23)
参考文献数
12

舌下免疫療法では薬剤で維持量が異なり,アレルゲン量が増えれば副反応も多くなり,治療スケジュールに影響しえる。【対象と方法】各薬剤の最初の例から1年以内の治療開始例で,シダトレン®(CT群)207例,シダキュア®(CC群)69例とミティキュア®(MT群)82例の副反応と治療経過を検討した。MT群では翌年治療87例も追加調査した。【結果】CT群では全例が順調に最大維持量で治療した。CC群では1例(1.4%)が局所ピリピリ感で減量したが再増量でき,全例で最大維持量となった。MT群では20例(24.4%)が減量し,浮腫17例が原因を占めた。18例が再増量でき,97.6%が最大維持量にできた。翌年追加調査では減量例が12.6%と半減し,同等の97.7%が最大維持量にできた。副反応率はCT群40.6%,CC群56.5%,MT群62.1%であった。浮腫と咽喉頭不快感はアレルゲン増加で増え,MT群の局所浮腫は41.5%と高率であった。局所そう痒感はCC群とMT群に多く,CC群で耳そう痒感が21.7%と特に多かった。全副反応は重篤でなく,対応不要であった。【結論】アレルゲンが多いと副反応も高率であったが,スギ治療薬では全例で最大維持量にできた。ダニでは主に浮腫の副反応で一時的減量例も多くなったが,数%例を除いて最大維持量にできた。治療経験が増えると減量例も少なくなった。
著者
松本 晃治 有方 雅彦 神前 英明 清水 猛史
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.155-159, 2014 (Released:2015-02-11)
参考文献数
12
被引用文献数
2

涙囊由来の腫瘍はまれであるが,その約70%が悪性腫瘍である。流涙や涙囊部腫脹を主訴として眼科を初診することが多い。今回,慢性涙囊炎を発生母地とした涙囊癌症例を経験し,眼窩内容摘出・皮膚を含めた上顎部分切除,耳下腺全摘術・頸部郭清術と術後放射線照射を行った。病理検査で唾液腺導管癌に相当する涙囊原発腺癌と診断された。涙囊癌の手術治療においては,涙囊,鼻涙管,涙囊周囲骨,眼窩内容,鼻副鼻腔を含めた切除術が必要であり,頭頸部の解剖に精通している耳鼻咽喉科医が担当する必要がある。
著者
湯田 厚司 小川 由起子 鈴木 祐輔 有方 雅彦 神前 英明 清水 猛史 太田 伸男
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.1, pp.44-51, 2017-01-20 (Released:2017-02-10)
参考文献数
9
被引用文献数
4

舌下免疫の最初の数年間の効果は治療年数により高まるとされる. スギ花粉舌下免疫の同一患者での症状を, ともに中等度飛散であった2015年 (花粉総数2,509個/cm2) と2016年 (同3,505個/cm2) の2年間で検討した. 【方法】発売初年に開始した舌下免疫132例 (41.8±17.5歳, 男女比75: 57) と対照に初期療法56例 (44.9±13.5歳, 同25: 31) を選択した. 2015年と2016年の両方のスギ花粉飛散ピーク時に, 1) 症状スコアと症状薬物スコア, 2) Visual analog scale, 3) 日本アレルギー性鼻炎標準 QOL 調査票 (JRQLQ No1) で調査した. 主目的に舌下免疫療法2年目に効果が増強するか, 副次目的に舌下免疫と初期療法の比較とした. 【結果】推定周辺平均ですべてに治療方法と年度に交互作用はなく, くしゃみ, 鼻汁, 鼻閉, 眼のかゆみなどの眼鼻症状において, 初期療法には2年での差はなく, 舌下免疫療法の多くで2年目は1年目より有意に良かった. 全般症状の項目も同様であった. QOL (quality of life) は, 舌下免疫の17項目中2項目のみで有意に2年目が良かった. また, ほとんどの項目で舌下免疫は初期療法より有意に効果的であった. 【結論】初期療法を対照にした中等度飛散の2年の比較で, 舌下免疫の治療効果は治療1年目より2年目で高まっていたと考えられる.
著者
伊藤 千尋 戸嶋 一郎 大脇 成広 清水 猛史
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌 (ISSN:24357952)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.71-75, 2021 (Released:2021-08-31)
参考文献数
23

放線菌症は,Actinomyces属により腫瘤性病変を形成する疾患である。症例1は74歳男性。2ヵ月前からの嗄声,1ヵ月前からの嚥下困難と咽頭痛を主訴に紹介受診した。喉頭内視鏡検査で,右梨状窩に潰瘍を伴う腫瘤を認め,造影CTでは下咽頭,頸部リンパ節,肺,副腎に造影効果を伴う腫瘤があり,PET-CTで同部にFDG集積を認めた。下咽頭病変の生検から放線菌症と診断した。関節リウマチに対し使用していたメトトレキサート内服を中止し,アンピシリン点滴を6週間行い全ての病変は消失した。その後アモキシシリン,続いてクリンダマイシンを10ヵ月間内服した。症例2は64歳男性。10日前からの咽頭痛と口臭を主訴に紹介受診した。喉頭蓋に白苔を伴う腫瘤を認め,生検で放線菌症と診断した。生検1週間後には喉頭蓋病変は自潰し,縮小した。アモキシシリンを3ヵ月間内服した。2症例とも再発なく経過している。
著者
湯田 厚司 小川 由起子 荻原 仁美 鈴木 祐輔 太田 伸男 有方 雅彦 神前 英明 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.6, pp.833-840, 2017-06-20 (Released:2017-07-15)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

スギ花粉舌下免疫療法のヒノキ花粉飛散期への効果を検討した. 方法: スギ花粉舌下免疫療法 (SLIT) を行ったヒノキ花粉症合併180例 (平均37.0 ± 17.0歳, 男性105例, 女性75例, CAP スコアスギ4.6 ± 1.1, ヒノキ2.7 ± 0.8) を対象とした. スギ・ヒノキ花粉とも中等度飛散の2016年に日本アレルギー性鼻炎標準 QOL 調査票の QOL およびフェーススケール (FS) と, 症状薬物スコア (TNSMS) を花粉ピーク期に調査した. また, 花粉飛散後に両花粉期の効果をアンケート調査した. 結果: 飛散後アンケートで, 治療前にはスギ期で症状の強い例が多く, SLIT の効果良好例はスギ期68.7%とヒノキ期38.7%でスギ期に多かった. 両花粉期を比較すると, 同等効果42.2%であったが, ヒノキ期悪化が半数以上の54.9%にあった. 各調査項目の平均では両花粉期に有意差がなかったが, 個々の例で TNSMS スコア1以上悪化例が27.2%あり, スギ期軽症の FS 0または1の43.4%で FS が悪化した. 治療前にスギとヒノキ期に同等症状であった例の30.4%でヒノキ期に TNSMS が悪化した. 一方で, 治療前にヒノキ期症状の強かった8/30例 (26.7%) でヒノキ期に改善し, 効果例も認めた. 結論: スギ花粉舌下免疫療法はヒノキ花粉症に効果例と効果不十分例があり, ヒノキ期の悪化に注意が必要である.
著者
湯田 厚司 小川 由起子 新井 宏幸 荻原 仁美 神前 英明 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.2, pp.126-132, 2019-02-20 (Released:2019-03-01)
参考文献数
10
被引用文献数
4 3

本邦でのスギ花粉とダニが原因のアレルギー性鼻炎合併例は多い. スギ花粉とダニを同時に用いた皮下免疫療法は行えるが, 舌下免疫療法の併用治療 (併用 SLIT) に関する知見は十分ではない. 併用 SLIT が行えれば有用であり, 安全性を検討した. 当院で2017年6月以降にスギ花粉 (シダトレン ®) とダニ (ミティキュア ®) で併用 SLIT を行った53例 (男性31例, 女性22例, 年齢12~53歳, 平均21.7±11.6歳, スギ花粉先行39例) を対象とした. 先行と後行 SLIT の間隔は1カ月以上あけ, 朝夕に分けて開始した後に5分間隔でスギ花粉・ダニの順で行った. 併用 SLIT 後6カ月まで受診毎に副反応を確認した. 完遂率は51/53例 (96.2%) で, 脱落2例の理由は副反応によるものではなかった. 副反応はすべて軽度で, 処置不要であった. 併用 SLIT 期の副反応は, 全副反応で増加せず, 口腔咽頭感覚症状で有意に減少した. 投与間隔による副反応は変わらず, 投与順で副反応は変わらなかったが, ダニ後行 SLIT で維持アレルゲンを減量する例が増えた. 併用 SLIT は1~2カ月以内の短期間間隔で安全に行えた.
著者
湯田 厚司 小川 由起子 鈴木 祐輔 荻原 仁美 神前 英明 太田 伸男 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.1011-1019, 2018 (Released:2018-09-21)
参考文献数
9
被引用文献数
13

【背景・目的】スギ花粉舌下免疫(SLIT)の開始後4年が経過した.花粉多量飛散年にSLIT1~4年治療例を検討した.【方法】2018年(飛散総数5041個/cm2)飛散ピーク時にSLIT4年目83例,3年目72例,2年目48例,1年目67例と比較対照の初期療法320例,未治療群424例を対象とした.JRQLQ No1の鼻眼症状,薬物・総鼻症状薬物スコア,視覚的症状尺度(VAS)で評価した.【結果】SLIT各治療年は全てで未治療より,総括症状で初期療法より有意に良かった.治療3・4年目は鼻眼症状で初期療法より有意に良かった.併用薬なしで鼻症状スコア1以下の寛解率はSLIT4年目から1年目の順に41.0%,31.9%,18.8%,20.9%で,症状スコア全て0点の例は順に12.0%,12.5%,4.2%,4.5%であった.SLIT全例で処置を要する副反応は無かった.【結語】スギ花粉多量飛散年のSLITは初期療法や未治療より効果的であった.治療は短期よりも4年の長期に行う方が良いと考えた.
著者
小河 孝夫 清水 志乃 戸嶋 一郎 神前 英明 清水 猛史
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.221-227, 2011 (Released:2011-09-30)
参考文献数
41
被引用文献数
1

近年,好酸球性副鼻腔炎などの難治性上気道炎症の病態形成に凝固線溶系が深く関与していることが明らかになり,凝固線溶因子を標的とした治療法の開発が注目されている。一方,ヘパリンは抗凝固作用を有し,臨床上も血栓症治療などに古くから使用されてきたが,同時に抗炎症作用も有することが知られている。ヘパリンは陰性荷電とその特異な分子構造により炎症過程における多くの生理活性物質と結合することが作用機序として考えられている。実際の臨床においても,気管支喘息,炎症性腸疾患,熱傷などで有効性が報告され,様々な疾患モデル動物においてもヘパリンの抗炎症作用が報告されているが,鼻副鼻腔疾患に対する検討はほとんどない。筆者らはヘパリンの持つ抗凝固作用と抗炎症作用の両者に期待して,難治性上気道炎症に対する治療薬としての可能性を検討している。 ラット鼻粘膜炎症モデルを使用した未分画ヘパリンや低分子ヘパリンの点鼻投与の検討では,LPS刺激やアレルギー性炎症により生じたラット鼻粘膜の杯細胞化生や粘液分泌,炎症細胞浸潤はヘパリン投与により有意に抑制された。培養気道上皮細胞を用いた検討でも,TNF-α刺激や好酸球性細胞株との共培養によるムチンやIL-8分泌を有意に抑制した。これらの結果より,ヘパリンはステロイド以外に有効な薬物療法のない好酸球性副鼻腔炎などの難治性上気道炎に対する新たな局所治療薬としての可能性が期待できる。
著者
大江 祐一郎 神前 英明 松本 晃治 清水 猛史
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.478-482, 2017-12-25 (Released:2018-01-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1

唾液腺導管癌は局所再発や遠隔転移を生じやすいが,再発・転移例に対する確立した治療法はない。また,アンドロゲン受容体(AR)の発現が高率に認められる特徴を有する。今回,唾液腺導管癌の局所再発・多発骨転移に対し,抗アンドロゲン療法が奏功した1例を経験したので報告する。症例は64歳,男性。右顎下腺癌T3N2bM0に対し手術加療を行い,唾液腺導管癌と診断され,病理学的にARの過剰発現を認めた。術後に化学放射線療法を施行したが,6ヶ月後に局所再発を認めた。17ヶ月後には多発骨転移が出現し,ビカルタミド(80mg/日)内服投与を開始した。腰痛に対して30Gy/10Frの緩和照射も行った。ビカルタミド投与6ヶ月後のPET-CTで局所の腫瘍は消失し,7ヶ月後の腰椎造影MRIでも大部分で腫瘍の造影効果が消失した。遠隔転移から1年経過し,乳房腫脹を認めているが,その他大きな副作用はない。AR陽性の唾液腺導管癌に対して,抗アンドロゲン療法は有用な治療選択肢の一つである。
著者
谷 鉄兵 瀬野 悟史 花満 雅一 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.1053-1060, 2008-08-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1

【背景】レーザーによる下鼻甲介粘膜焼灼術は,保存的治療のみでは症状を充分改善し得ないアレルギー性鼻炎に対する外科的治療として広く行われている.レーザーによる手術は鼻粘膜表面を焼灼するが,近年鼻粘膜上皮には影響を与えずに粘膜下を焼灼する高周波手術装置(ENTECコブレーター2サージェリーシステム^[○!R],以下コブレーション)を利用した下鼻甲介手術が報告されている.【方法】対象は,当科にて平成16年11月から平成19年5月までにコブレーションを用いて下鼻甲介粘膜焼灼術を行った29例(男性17例,女性12例,平均年齢37歳)で,手術前後のくしゃみ・鼻汁・鼻閉・日常生活支障度の症状スコアの検討を行い,レーザー手術50例(男性27例,女性23例,平均年齢25例)の術後成績と比較検討した.【結果】手術1ヵ月後の治療成績には差が認められないが,1年後にはレーザー手術では症状が再燃することが多いのに対してコブレーション手術では高い症状改善率(くしゃみ65%,鼻汁71%,鼻閉76%)が維持され,2年後にも同様の良好な成績が得られた.【結果】アレルギー性鼻炎に対してコブレーションによる下鼻甲介粘膜焼灼術により良好な長期成績を得ることができた.
著者
神前 英明 柴山 将之 大脇 成広 清水 猛史
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6Supplement2, pp.S162-S166, 2007-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
14

頸椎原発の悪性リンパ腫に対し、プレート併用前方固定術後、遅発性の咽頭穿孔と嚥下性肺炎が生じた1例を経験した。症例は72歳、男性。2002年6月に頸椎原発の悪性リンパ腫に対し、C4-6までプレート併用の前方固定術、放射線治療、化学療法を行い寛解に至っている。2006年3月に嚥下性肺炎にて入院。咽頭後壁より金属プレートが露出、右梨状部に唾液貯留がみられた。VF所見では、右食道入口部開大不全とそれに伴う嚥下運動後誤嚥がみられた。頸椎プレート抜釘、咽頭縫縮を施行した後、瘢痕狭窄と思われる食道入口部開大不全によるバリウム誤嚥が認められた。バルーンカテーテル訓練法を行い、常食摂取可能となった。本例のような瘢痕狭窄による嚥下障害に対してもこの方法は有用であると考えられた。
著者
瀬野 悟史 柴山 将之 有方 雅彦 戸嶋 一郎 小河 孝夫 星 参 藤田 文香 花満 雅一 清水 猛史
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.99, no.11, pp.967-977, 2006-11-01 (Released:2011-10-07)
参考文献数
11

We evaluated the efficacy of early treatment by ramatroban and antihistamine in patients with Japanese cedar pollinosis by comparing treatment before the start of the pollen season and treatment after the pollen had been dispersed. A pollinosis diary and Japanese allergic rhinitis standard QOL questionnaire (JRQLQ No. 1 and No. 2) were used to evaluate the effectiveness.Huge amounts of Japanese cedar pollen and Japanese cypress pollen were disseminated in Shiga prefecture in 2005. The nasal symptom score, medication score, and symptom medication score showed better outcomes in the early treatment group not only during the Japanese cedar pollen season but also the Japanese cypress pollen compared to the other group. The early treatment group also showed better results in every category of JRQLQ No. 1 and No. 2 compared with the late treatment group. No harmful side effects were observed through the course of this study.We concluded that early treatment by ramatroban in combination with antihistamine in patients with Japanese cedar pollinosis was useful not only for improving symptoms but also retaining the quality of life during such a heavy pollen-producing year.