著者
大草 敏史
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.169-179, 2013 (Released:2013-09-10)
参考文献数
23

潰瘍性大腸炎(UC)の病因については,以前から細菌原因説があり,1920–40年代までは盛んに研究がなされていたが,その後,自己免疫の概念が提唱され,炎症性腸疾患も自己免疫性疾患とされて,細菌原因説は見向きもされなくなった.しかし,1983年H. pyloriが発見され,胃,十二指腸潰瘍の原因菌として認められるようになってから,再び,UCの病因として,腸内細菌に注目が集まってきている.また,最近,Toll-like receptor(TLR)ファミリーが次々と発見され,TLR4をはじめ,TLR2,TLR5,TLR9などが細菌をリガンドとして認識して炎症性サイトカインの産生に至るといった自然免疫系が解明されてから,腸管炎症発生に関する腸内細菌の役割についての研究がますます盛んになってきている.本稿では,我々が原因菌の一つとして提唱しているFusobacterium variumとUCについて,同菌をターゲットとした抗菌薬多剤併用療法も概説し,あわせて,最近報告された大腸癌とFusobacteriumとの関係についても述べる.
著者
大草 敏史 小井戸 薫雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.42-47, 2015-01-10 (Released:2016-01-10)
参考文献数
18

fecal microbiota transplantation(FMT)は中国や欧米で昔から行われていた.最近になり,腸内細菌叢のDNA解析によって腸内細菌叢の乱れ,すなわちdysbiosisが消化器疾患をはじめ,種々の疾患に関与しているということがわかってきた.そのdysbiosisを是正する目的で,FMTがClostridium difficile感染症をはじめとして,炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD),過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS),慢性便秘,肥満などのメタボリック症候群に施行されてきている.
著者
大草 敏史
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.193-201, 2009 (Released:2009-08-04)
参考文献数
34

炎症性腸疾患(IBD)は,狭義には原因不明の小腸,大腸の炎症性疾患,すなわち,潰瘍性大腸炎とクローン病をさしている.両者ともに,我が国では,欧米に比べ患者数は1/5-1/10と少ないが,近年になり,その患者数は年10%弱と増加しつづけ問題となっている.また,IBDは,従来は自己免疫疾患と言われていたが,最近の研究の進歩により,その炎症は腸内細菌によって引き起こされていると考えられるようになってきた.また,炎症性腸炎を自然発症するIL-10ノックアウトマウスや我々の開発したDSS腸炎で,乳酸菌やビフィズス菌といったプロバイオティクスが腸炎発症を予防し,発症後の腸炎を改善することが報告されてから,治療法の1つとして,プロバイオティクスの有用性が注目されてきた.さらに,最近では,乳酸菌に代表されるプロバイオティクスが潰瘍性大腸炎やクローン病などに実際に投与され,潰瘍性大腸炎では有効で,クローン病では効果がないといったという報告が多く出されている.本稿では,それらの最新の報告を中心に,プロバイオティクスによるIBDの治療の概括を述べる.
著者
伊藤 善翔 小井戸 薫雄 大草 敏史
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.13-18, 2021 (Released:2021-02-03)
参考文献数
25

膵疾患は急性膵炎といったcommon diseaseから自己免疫性膵炎や癌まで様々である.そのなかで,膵臓癌は我が国においてだけでなく,全世界的に未だ予後不良の疾患であり,その対応には急務が求められている.近年,様々な消化器癌において腸内細菌(Gut microbiota)の関与が報告されているが,膵疾患領域においても細菌叢の解析が蓄積されてきている.膵疾患においても良悪性疾患を問わず細菌が疾患に関係することが示唆されてきており,細菌叢から疾患を考察することは,未だ解明されていない癌化プロセス等の解明に繋がると考える.
著者
檀原 高 岡田 隆夫 高宮 信三郎 藤岡 治人 大草 敏史 藤沢 稔 前田 国見 深沢 徹 榎本 冬樹 藤本 幸雄 高崎 覚 各務 正 木南 英紀
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.502-508, 2004-01-30

平成15年6月6日に順天堂医学教育ミニワークショップが開催された.80名を越える教員が参加し,良質の多肢選択問題を作成するために討議を行った.会議に先立ち,平成14年度医師国家試験成績・共用試験のCBTと学内試験(基礎医学・臨床医学および卒業試験)との良好な正の1次の相関があることが示された(相関係数:0.65〜0.80).これらの結果が示すように,本学の学内試験は医師国家試験とCBTにとって良質な問題が作成されていることが示唆される.