著者
野々田 岳夫 細田 泰男 大谷 真喜子
出版者
Japan Rhinologic Society
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.450-454, 2012 (Released:2012-12-27)
参考文献数
16

鼻腔の重要な機能に加温・加湿機能があるが,日常診療で簡便に検査できる方法はない。一般に冷たい外気を鼻で吸入しても,上咽頭では温度30°C前後,湿度90%前後に加温加湿され,潤いある空気が下気道に入る。一方,口には鼻腔ほどの加温・加湿機能はないため,冷たい乾燥した空気が直接下気道に入りやすく,気管を痛める原因となる。鼻腔の加温・加湿機能を評価するためには,狭い鼻腔内にセンサーを挿入する必要があるが容易ではない。そこで我々は,呼気に着目した。呼気で肺から鼻や口で呼出されるまでに,どれくらいの呼気中の水分が粘膜に回収されたかを水分回収率と定義した。この呼気の水分回収率が高いほど次の吸気の加湿に有利ではと考えた。(対象と方法)今回,我々は鼻腔所見が正常な18人(男性8人,女性10人)を対象に,鼻と口の水分回収率,鼻へ血管収縮薬噴霧後の鼻の水分回収率を測定し比較した。(結果)鼻の水分回収率は,口より有意に高くなった(p<0.001)。また,鼻に血管収縮薬を噴霧すると,鼻の水分回収率は噴霧前に比べて有意に低下することがわかった(p<0.01)。(まとめ)このことは,通常鼻呼吸のみでは鼻が乾いた感覚は出現ないのに対し,口呼吸や鼻へ血管収縮薬を噴霧すると,口や鼻が乾きやすくなることと矛盾しない。呼気の水分回収率は,次の吸気で利用できる水分を反映するため,鼻腔での加温・加湿機能評価の一助になると考えた。
著者
大谷 真喜子
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.123-129, 2012 (Released:2013-06-21)
参考文献数
5

数十年間の耳管開放の経験をもとに、症状、開放症分類、治療法、そして開放機序の仮説を、内視鏡所見とともに紹介した。開放症状にレベルがあり、そのレベルによって病的開放は、分単位の発作型と数十分単位の持続型の2種類に分類できる。発作型は体重減少時に下顎挙上して会話した際に突然発症する。持続型は急性中耳炎後に徐々に発症する。治療も異なり、発作型には、嚥下のみ、または、下顎角の内側を上方に圧迫しながら嚥下する方法が著効する。反対に、持続型には嚥下は無効で、同部位への圧迫を持続する方法や生理食塩水を点鼻する方法など症状が消失するまでの時間稼ぎの方法しかない。発作型は内視鏡所見より、耳管軟骨内側板と挙筋との位置異常が原因と考えられるため治療には嚥下が必須であるが、持続型は耳管構成物の体積減少が原因と考えられるため嚥下によっては改善するはずもなく原因が解消されるまでの対処療法しかないと推察した。
著者
大谷 真喜子
出版者
日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.123-129, 2012-05-25
参考文献数
5

数十年間の耳管開放の経験をもとに、症状、開放症分類、治療法、そして開放機序の仮説を、内視鏡所見とともに紹介した。開放症状にレベルがあり、そのレベルによって病的開放は、分単位の発作型と数十分単位の持続型の2種類に分類できる。発作型は体重減少時に下顎挙上して会話した際に突然発症する。持続型は急性中耳炎後に徐々に発症する。治療も異なり、発作型には、嚥下のみ、または、下顎角の内側を上方に圧迫しながら嚥下する方法が著効する。反対に、持続型には嚥下は無効で、同部位への圧迫を持続する方法や生理食塩水を点鼻する方法など症状が消失するまでの時間稼ぎの方法しかない。発作型は内視鏡所見より、耳管軟骨内側板と挙筋との位置異常が原因と考えられるため治療には嚥下が必須であるが、持続型は耳管構成物の体積減少が原因と考えられるため嚥下によっては改善するはずもなく原因が解消されるまでの対処療法しかないと推察した。