著者
大野 婦美子 笠井 八重子
出版者
くらしき作陽大学
雑誌
くらしき作陽大学・作陽短期大学研究紀要 (ISSN:13438581)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.43-50, 2005-12-28

でんぷんの混合が「精粉」こんにゃくの力学的性状に及ぼす影響を明らかにすることを目的に,物性試験及び微細構造観察により検討した.でんぷんはジャガイモ及びサツマイモでんぷんを使用し,配合比は,「精粉」(S):でんぷん(D)=1:0,0.3,0.5,0.8,1.0,1.5の6水準とした.でんぷんの配合方法として,「精粉のり」を調製後,加熱したでんぷん液を混合する方法(A法)と,「精粉」とでんぷん粉を混合して「のり」を調製する方法(B法)を設定し,その影響についても検討し,以下のような結果を得た.1)こんにゃくの破断特性に及ぼすでんぷん配合の影響は,A,B法により相反した.A法は,「精粉こんにゃく」の破断応力を減少の方向へ,B法は増加の方向へ作用した.でんぷん配合量の影響は,「精粉」に村し5割までは少なく,8割配合で顕著に示された.でんぷんの種類による差異はみられなかった.2)でんぷん配合の影響は,精粉濃度3.0%,2.2%で差異はなかった.しかし,A法の1.7%濃度では,でんぷん添加の増加による量的影響は小さくなった.3)粘弾性については,A法では,でんぷん量の増加により,各要素の物性値は低下した.フック体弾性率は,3〜5割のでんぷん配合で約80〜90%に,同量以上の配合で50〜60%に減少した.これに村しB法では,フック体弾性率は等量までの配合で約1.2倍に,等量以上の配合で約2倍に増加し,A法と相反した結果を与えた.4)A,B法による物性変化の差異は,「のり」の網目構造が充分形成されてから,でんぷんが混合されたかどうかが重要な要因として認められた.「いもこんにゃく」がもつ滑らかさや粘性の付与には,糊化したでんぷん液の混合が有効であると示唆された.
著者
藤井 わか子 藤堂 雅恵 小川 眞紀子 山下 広美 我如古 菜月 人見 哲子 槙尾 幸子 畦 五月 青木 三恵子 大野 婦美子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】岡山県は,地形からみると県北の中国山地,県中部の吉備高原,県南の平野・丘陵地帯,瀬戸内沿岸・島しょ地帯の四地域からなる。各地域には異なった作物が生み出され,特色ある食文化が伝承されていると言われている。一方で歴史的には,岡山県は備前,備中,美作と呼ばれてきた。そこで,現在の県民局(備前,備中,美作)の管轄で分け,年中行事・通過儀礼の地域による違いを把握することを目的とした。【方法】平成21~23年日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学-行事食・儀礼食-」の調査データから,岡山県に10年以上居住している者334名を対象に,岡山県を3地域に分けて認知度・経験度・喫食経験等について集計し検討した。検定はカイ二乗検定を行った。【結果】岡山県の年中行事・通過儀礼の認知・経験度は,全国調査結果と類似していた。3地域でみると,認知度では秋祭りと人日,重陽の節句(p<0.01)に,経験度ではお月見(p<0.05),秋祭り(p<0.01)で3地域間の差がみられた。正月では,お雑煮の喫食割合は地域差がみられなかった。すまし仕立てが最も多く,丸もち,茹でて食べており,3地域において差異がないことがわかった。お節料理は,黒豆,かまぼこが全体的に最も高い結果であった。次いで,数の子,昆布巻き,煮しめが高かった。その他の年中行事の食べ物は,節分のいわし料理(p<0.01),端午の節句のちまき(p<0.01),盂蘭盆と七夕の麺 (p<0.05),お月見のだんご(p<0.01),大晦日の尾頭付きいわし料理(p<0.01)等で地域間に差が認められた。通過儀礼の認知・経験度は,出産祝い(p<0.01),百日祝い(p<0.01),厄払い(p<0.05)で,またその食べ物では,お七夜と初誕生の赤飯・小豆飯,厄払いのもち(p<0.01)において差がみられた。