著者
畦 五月
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.308-319, 2015 (Released:2015-09-05)
参考文献数
43
被引用文献数
3

本研究では近現代に焦点をあてて,サメの食習慣を食用地域とその調理方法の観点から,あるいは特性の類似するエイとの対比において明らかにした。 現代においてサメは東北地方で,エイは中四国を中心に利用されている地域性のみられる魚である。サメの調理法は時代の変遷とともに若干多様性を示しながら変化したものの,刺身・湯引きや煮物を主な調理法とし現代まで受け継がれている。一方,エイは煮物を主な調理法として食べられている特徴が見られ,サメとエイでは若干調理法に違いが見られた。 含有される尿素によって鮮度低下が遅れるため長期間保存ができる共通した特徴を両魚は持つ。そのため山間部でも刺身を食べることができること,また様々な調理法で食べられること,地理的要因などが関係し,類似した地域性を維持しながら,今日まで両魚がハレの日の食材となりその食習俗を継承してきたと考えられる。
著者
岡本 洋子 畦 五月 田口 田鶴子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.166-177, 2000-05-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
11

We investigated the effect of the eating behavior of infants on their taste sensitivity and development. The study was carried out on a total of 130 children between the ages of one and three years (74 males and 56 females in the age range from 18 months to 41 months) who were enrolled at three approved nursery schools in the prefecture of Okayama. The study involved observing the eating habits at mealtimes in households according to Enjoji's Developmental Questionnaire for Infants, and using flavored aqueous solutions for evaluating taste sensitivity. At least half the children lived in households in which they were provided with home-cooked food and were able to enjoy eating while taking with their family during the meal. The majority of the children in this study were sensitive to sweet, sour and salty tastes within a range of concentration of 0.2-0.8% for an aqueous sucrose solution,0.02-0.06% for an aqueous citric acid solution, and 0.04-0.16% for an aqueous sodium chloride solution. We did not observe any statistical correlation between the eating situation and taste sensitivity of the children, except in the case of sensitivity to a salty taste. However, there existed a significant correlation between the eating situation and the development of the children in four to five categories among the total of six categories. It was clear that a healthy eating situation in infancy did play a positive role in development (for example, in such areas as basic habits, language formation and language comprehension). The results indicate that eating patterns in the household during the early stages of infancy did not have a significant effect on taste sensitivity, except for a salty taste, but suggest that there may have been some effect on the children's development.
著者
畦 五月 中田 理恵子
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

レクチンは主に生の食品から精製され、加熱して後、つまり食用の食品からのレクチンの精製やその生物学的性質の研究は管見の限りみられない。そこで、材料にキントキマメ、ナタマメ、サトイモを選択し、加熱後にも食品中に残存するレクチンを精製しその性質を、食品として摂取した場合に期待できるガン細胞抑制作用及び、免疫賦活作用の両側面から明らかにした。加熱したキントキマメとサトイモにはレクチンが失活せずに残存し、タンパク質分解酵素にも耐性を示した結果から、人体に取り込まれた場合の機能性を検討した。その結果、一部のガン細胞に対する増殖抑制作用並びに、免疫賦活作用を有することが明らかになった。
著者
畦 五月
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.362-370, 2016 (Released:2016-12-19)
参考文献数
49
被引用文献数
1

岡山県南部地方で食用とされているヒラ,サッパ,コノシロの食習慣に注目した。これら三種の魚は分類学上極めて類似し,白身が多く,しかも小骨が多いという特徴を示す。酢の物,すし,焼き物,煮物などの多彩な調理方法で三種は食べられるが,昭和初期から大正時代には,稲作行事や祭りの行事に合わせ使い分けがされている魚であった。その食習慣が形成されている背景を,江戸時代の岡山藩の文献より明らかにした。三種は岡山藩の産物として認定され,幕府に届け出をされた魚であった。後楽園での各種行事の饗応膳にも使用された魚であったが,藩主など身分階級の高い人の膳にはのらない魚であった。この江戸時代からの食習慣は,調理法を伝承しながら,現代も他の魚の食習慣とともに岡山県南部地域に継承され,岡山県独自の食習慣を形成している。
著者
藤井 わか子 藤堂 雅恵 小川 眞紀子 山下 広美 我如古 菜月 人見 哲子 槙尾 幸子 畦 五月 青木 三恵子 大野 婦美子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】岡山県は,地形からみると県北の中国山地,県中部の吉備高原,県南の平野・丘陵地帯,瀬戸内沿岸・島しょ地帯の四地域からなる。各地域には異なった作物が生み出され,特色ある食文化が伝承されていると言われている。一方で歴史的には,岡山県は備前,備中,美作と呼ばれてきた。そこで,現在の県民局(備前,備中,美作)の管轄で分け,年中行事・通過儀礼の地域による違いを把握することを目的とした。【方法】平成21~23年日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学-行事食・儀礼食-」の調査データから,岡山県に10年以上居住している者334名を対象に,岡山県を3地域に分けて認知度・経験度・喫食経験等について集計し検討した。検定はカイ二乗検定を行った。【結果】岡山県の年中行事・通過儀礼の認知・経験度は,全国調査結果と類似していた。3地域でみると,認知度では秋祭りと人日,重陽の節句(p<0.01)に,経験度ではお月見(p<0.05),秋祭り(p<0.01)で3地域間の差がみられた。正月では,お雑煮の喫食割合は地域差がみられなかった。すまし仕立てが最も多く,丸もち,茹でて食べており,3地域において差異がないことがわかった。お節料理は,黒豆,かまぼこが全体的に最も高い結果であった。次いで,数の子,昆布巻き,煮しめが高かった。その他の年中行事の食べ物は,節分のいわし料理(p<0.01),端午の節句のちまき(p<0.01),盂蘭盆と七夕の麺 (p<0.05),お月見のだんご(p<0.01),大晦日の尾頭付きいわし料理(p<0.01)等で地域間に差が認められた。通過儀礼の認知・経験度は,出産祝い(p<0.01),百日祝い(p<0.01),厄払い(p<0.05)で,またその食べ物では,お七夜と初誕生の赤飯・小豆飯,厄払いのもち(p<0.01)において差がみられた。
著者
畦 五月
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

<b></b><b>目的 </b>調理実習は小中高校の家庭のカリキュラム内容の一つに位置付けられ、小学校学習指導要領ではその手法としてグループ学習が明記されている。本報告では、調理実習を指導者提示の課題に対して、個々のグループがそれに適した献立を作成し実習する問題解決的な手法で行った。その結果としてグループでの協働の営みが、多様な人と仕事をするために必要な社会人基礎力の育成へ如何なる影響を及ぼすかを検討した。 <b>方法</b> 広島県内B大学在籍の学生で、「子どもの食と栄養Ⅰ」(講義)を終了し、「子どもの食と栄養Ⅱ」(実習)受講者を対象とした。この授業は調理実習を主体とする授業である。実習は幼児のための献立作成とその実習を目的としているが、グループで献立を作成し食材を購入し目的に適合した調理をするという一連の作業を学修者自身が企画・運営することも指導者として目標とした。授業1回目と授業終了時にアンケートを配布して、その場で記入し回収する方式を採用し、その回答の提出は自由で、回答内容は一切成績には影響しないことを口頭と文面双方で伝えた。 調査内容は①居住形態 ②実習前後の料理頻度と料理への関心 ③実習課題に対する試行錯誤の取り組みについて経済産業省による『社会人基礎力』(『アクション』『チームワーク』『考え抜く力』)の概念を基に作成した19項目、グループ活動での自己認識や関係性の7項目などを4段階で評価してもらった。分析にはSPSSを用い、クロス集計後カイ二乗検定を、分散分析後多重比較を行った。 <b>結果 </b>回答率は98%、その属性は自宅生43.5%、単独56.5%、男性4.2%、女性95.8%であった。居住形態と実習前の料理頻度(<i>p</i><0.01)は有意であったが、実習後には居住形態と料理頻度は有意ではなくなった。しかし実習への意気込みと食への関心度(双方とも実習後評価)は有意(<i>p</i><0.01)となり、実習の教育効果が認められた。既習の家庭科及び家庭での知識と実習への役立ち度は、共に平均点3.26を示した。 調理実習に問題解決的な学修を導入した結果、学修に対する意気込みと意欲の向上が図られること、さらにこれらの要因には仲間の存在が有意に関連することを畦(2013)は明らかにした。そこで、本報告ではグループ活動の学修効果をさらに検証するため、『社会人基礎力』の3能力の育成状況を詳細に検討した。 『アクション』『シンキング』『チームワーク』の3能力を構成する12の下位能力のうち、『アクション』の中の「働きかけ力」が最も低い2.96の平均を示した。逆に高い能力は『チームワーク』の「柔軟性」の3.43、『アクション』の「主体性」の3.31であり、全体平均は3.19であった。分散分析による3能力内での群内有意差が確認された(順に<i>p</i><0.01、 <i>p</i><0.05 、<i>p</i><0.05)。さらにその中でも特に『アクション』の「主体性」と「働きかけ力」(<i>p</i><0.05)、『シンキング』の「課題発見」と「計画力」(<i>p</i><0.05)、『チームワーク』の「発信力」と「柔軟性」(<i>p</i><0.05)が有意であった。対象は、主体性・柔軟性を持ち課題発見力を発揮しながら学修したが、計画力が不足し、相手への働きかけ力や、意見の発信力が低かったことが裏付けられた。 次にグループ内での自己認識や関係性を確認する7項目と『社会人基礎力』との関連を調べた。特に自己認識を問う項目の「仲間から期待される存在」「仲間の中で役割を担う」「仲間に対して何かできる」に対して、『アクション』『シンキング』『チームワーク』の11の下位能力は有意性を示した。一方で、関係性評価である「仲間とのつながりが深まる」「責任の公平性が保たれる」「グループで貢献度した」と『社会人基礎力』の下位能力間では有意な下位能力が極めて少なく、特に『シンキング』とは全く関連性はなかった。以上から、調理実習でのグループ学修では『シンキング』に関連する活動を意識し、学修者の変容に関与するような視点を学修内容に導入設定する必要があると考えられた。