- 著者
-
太田 好次
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬学会
- 雑誌
- ファルマシア (ISSN:00148601)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.3, pp.187-192, 2015 (Released:2018-08-26)
- 参考文献数
- 19
栄養素(正常な生命活動維持のために体内に取り入れる物質)には,糖質,タンパク質,脂質,無機質(ミネラル)およびビタミンがある.食物として摂取された糖質,タンパク質,脂質などの栄養素が消化,吸収され,細胞内でそれぞれ特有の必要な化合物が合成される.ところが,体内で新たに作ることができないか,作られても量が十分でない有機化合物で,しかも生命に必須な微量化合物がビタミンと呼ばれる化合物である.すなわち,ビタミンは正常な生理機能を営むために必要不可欠であるが,その必要量を体内で作れないので体外から取り入れなければならない有機化合物のうち,必要量が微量であるものの総称で,微量有機栄養素である.表1に示すように13種類のビタミンがあり,生体内での働きは種類により異なっている.すなわち,ビタミンは物質名ではなく,機能で分類されている.ビタミンには,水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンが存在する.水溶性ビタミンには,ビタミンB1,B2,B6,B12,ナイアシン,葉酸,ビオチン,パントテン酸などのビタミンB群とビタミンCの9種類がある.脂溶性ビタミンには,ビタミンA,D,EおよびKの4種類がある.また,生体内で化学的変化を受けてビタミンとなることができる天然化合物のプロビタミン(ビタミン前駆体)がある.プロビタミンとしては,ビタミンAになることができるα-カロテン,β-カロテン,γ-カロテンなどのカロテノイドおよびビタミンDになることができる生椎茸などに含まれるエルゴステロールとコレステロールから生じる7-デヒドロコレステロールがある.エルゴステロールは紫外線照射でビタミンD2となるので,プロビタミンD2といわれる.7-デヒドロコレステロールは皮膚に移行し,日光を浴びるとビタミンD3となるので,プロビタミンD3といわれる.