著者
奈良 里紗
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究では視覚障害児・者の発達段階に応じた発達課題を明らかにすることを最終的な研究目標として実施している。本年度は、16校の視覚特別支援学校から得られた2005年から2009年に実施された教育相談記録1579ケースの分析を行うとともに、学校心理学や教育心理学分野における教育相談や発達課題に関する国内外の先行研究について情報収集を行なった。昨年度までの研究で、乳児期は育児・発達相談、幼児期は就学相談、小学生期は学習相談との関連がそれぞれ明らかになった。今年度の研究では、相談内容と来談回数の関連について分析を行った。結果、乳児期では主要な相談内容である育児・発達相談は来談回数も複数回であり、継続的な支援につながっていることが示唆された。一方、幼児期及び小学生期では、主要な相談内容の来談回数が1回限りであるもの(単発相談)と複数回にわたる相談であるもの(継続相談)がほぼ同じ割合であった。この原因については、今後、さらに相談内容を質的に分析をすることで解明を試みる予定である。幼児期では、見え方・眼疾相談は継続的な相談が多いことから、親が視覚障害児の見え方を理解するためには一度の相談では解消されない内容であることが推察される。また、小学生期では補助具相談で単発相談が多いことが示された。従来より補助具相談は継続的な訓練が必要であることが指摘されていることから、小学生期の補助具相談がなぜ単発相談になることが多いのかについてもさらに検討する必要性が示唆された。なお、本研究の結果は日本特殊教育学会にて発表を行なった。
著者
相羽 大輔 奈良 里紗 増田 雄亮 鈴木 祥隆
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.47-58, 2019

<p>本研究は、弱視学生が見えにくさを補う手段(弱視レンズ条件・接近視条件・タブレット条件)を使いながら学習・生活する様子を画像で提示した場合に、それらが健常学生の態度に及ぼす効果の違いを検討した。382名の健常学生に対し、弱視学生の画像付き説明文に基づく3条件を無作為にひとつ提示し、障害者イメージ尺度(不便さ尺度・尊敬尺度)、弱視学生支援サービス尺度(授業支援尺度・成績評価尺度・組織支援尺度)への回答を求めた。その結果、タブレット条件と接近視条件のときの方が不便なイメージになったものの、弱視学生支援に関するすべての下位尺度でタブレット条件のときの方が他の条件よりも消極的な評価になった。また、健常学生は女子の方が男子よりも肯定的なイメージを持ち、弱視学生支援に対する態度もすべての下位尺度で肯定的であった。これらの結果が弱視学生の障害開示や援助要請を補助する手立ての手がかりになるものと示唆された。</p>
著者
益子 徹 相羽 大輔 奈良 里紗
出版者
日本福祉教育・ボランティア学習学会
雑誌
日本福祉教育・ボランティア学習学会研究紀要 (ISSN:24324086)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.32, 2018 (Released:2019-12-16)

本研究では援助要請者に対する周囲の対応方略とその対人印象の違いを、要請者特性との関係から 明らかにすることを目的とした。対象者は都内の私立大学で障害分野を専攻しない学生144名であり、質問 紙調査を実施した。各要請者(視覚障害のある人・赤ちゃんづれの母子)への対応方略と対人印象につい て尋ねた。対応方略では、視覚障害条件と母子条件の対応には質的な違いが認められ、χ2 検定及び残差分 析の結果、視覚障害条件の方が母子条件よりも【能動的な援助の提供】の人数が多く、【援助への消極的態度】 の人数が少ないことが明らかとなった。対人印象では、因子分析の結果、3 つの因子(社会的不利因子、 反助力因子、交流志向性因子)が示され、視覚障害条件はより不自由で困難な印象が強く、母子条件はよ り交流しにくい印象が示された。要請者特性によって、周囲の対応が異なることが明らかにされたことから、 様々な特性理解に広がる実践の観点を取り入れた教育内容・方法の開発が必要と考えられる。