著者
市川 享子 秋元 みどり
出版者
日本福祉教育・ボランティア学習学会
雑誌
日本福祉教育・ボランティア学習学会研究紀要 (ISSN:24324086)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.43, 2018 (Released:2019-12-16)

本研究はサービス・ラーニング(SL)の評価について、SLの理念である社会変容の観点から再構築 した。日本におけるSLの評価研究は非対称な関係を前提にした総括的評価論が中心であった。しかし、SL は市民社会の形成という理念のもとに、多様な主体(コンスティチュエンシー)によって形成されている ため、各主体が対等な立場で評価に関わり、「意味を再構成」していく評価モデルが必要である。本稿では「参 加型評価理論(源2016)」を援用しながら、新たな評価像を探求した。ここでは、多様な主体が評価に関与 することで、主体間のダイナミズムが起こり、ときには葛藤を含めた討議や対話が生じる。その一連のプ ロセスを生成(促進)する場が、相互の学びを生む形成的評価として機能する。参加を重視した評価はメ ゾレベル(中間圏)における相互変容を促進し、社会を再構築する可能性を有する。
著者
坂本 晃一
出版者
日本福祉教育・ボランティア学習学会
雑誌
日本福祉教育・ボランティア学習学会研究紀要 (ISSN:24324086)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.136-145, 2017

小学5年生の総合的な学習の時間(全12時間)として行った、人権課題「同和問題」を扱った授業実践。本校のある墨田区は、同和問題(皮革産業)などの地域の重点課題への理解推進のため、人権尊重教育に力を入れてきた。本校は、東京都教育委員会による「人権尊重教育推進校」の指定を受け、「東京都人権教育プログラム」に基づいて研究してきた。この人権尊重教育実践では、福祉教育で最も大切とされる「差別の心」の変容というアプローチを中心に分析していく。3年生で学習した「皮革産業」を発展させ、5年生はと畜・解体を行う「食肉市場」を取り上げた。単元の前半では、多くの児童が食肉市場で働く人々について「残酷で怖い人」というイメージを持ったが、単元の後半では、従業員の方から話を聞き、食肉市場に対する差別的な手紙について考える授業を通して「大切な仕事。自分の心の中にも差別の心があった。相手を正しく知ることが大切」と気付くことができた。
著者
益子 徹 相羽 大輔 奈良 里紗
出版者
日本福祉教育・ボランティア学習学会
雑誌
日本福祉教育・ボランティア学習学会研究紀要 (ISSN:24324086)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.32, 2018 (Released:2019-12-16)

本研究では援助要請者に対する周囲の対応方略とその対人印象の違いを、要請者特性との関係から 明らかにすることを目的とした。対象者は都内の私立大学で障害分野を専攻しない学生144名であり、質問 紙調査を実施した。各要請者(視覚障害のある人・赤ちゃんづれの母子)への対応方略と対人印象につい て尋ねた。対応方略では、視覚障害条件と母子条件の対応には質的な違いが認められ、χ2 検定及び残差分 析の結果、視覚障害条件の方が母子条件よりも【能動的な援助の提供】の人数が多く、【援助への消極的態度】 の人数が少ないことが明らかとなった。対人印象では、因子分析の結果、3 つの因子(社会的不利因子、 反助力因子、交流志向性因子)が示され、視覚障害条件はより不自由で困難な印象が強く、母子条件はよ り交流しにくい印象が示された。要請者特性によって、周囲の対応が異なることが明らかにされたことから、 様々な特性理解に広がる実践の観点を取り入れた教育内容・方法の開発が必要と考えられる。
著者
菊地 みほ
出版者
日本福祉教育・ボランティア学習学会
雑誌
日本福祉教育・ボランティア学習学会年報
巻号頁・発行日
vol.8, pp.104-126, 2003-12-06

新しい教職課程科目である「福祉科教育法」が開講されてから二年あまりが経過した。来春には「福祉科教育法」第一期受講生が卒業を迎えることになる。筆者は2001年度より、首都圏内の社会福祉学科を有する大学において「福祉科教育法I・II」を担当、今年度は第三期生と共に授業に臨んでいる。本稿では、スタートしたばかりのこの新しい科目のあり方を考える一つの材料として、自らの二年あまりの授業実践をふりかえり、その成果と課題について整理する。さらに長沼実践との比較検討を行った上で、「福祉科教育法」の今後の課題について、若干の考察を試みたい。