著者
奥村 剛宏
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第43回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S11-3, 2016 (Released:2016-08-08)

医薬品の製造業界においては、バイオ医薬品や再生医療等医薬品の製造にシングルユースシステム(SUS)が使用されるようになっている。製造の生産性向上や交叉汚染の減少などの利点がある一方、SUS由来の抽出物・溶出物、微粒子に加え、完全性、無菌性などバイオ医薬品の品質に直接的、間接的に与える影響が懸念される。SUS製品(バック、フイルター、チューブなど)の特徴は、その品質がサプライヤーの品質保証システムに依存していることである。従って、サプライヤーへの技術訪問や監査によりリスク評価を行い、その結果にもとづいて適切にサプライヤーを管理することが求められる。医薬品の品質や製造に影響を与える製品のサプライヤー/製造サイトとは品質契約を締結し、定期的に監査をすることが望ましい。また、単回使用であるため、ユーザーは、通常、受入れ試験で使用前に品質を確認することができない。SUS製品の設計段階からユーザーとサプライヤーで緊密に協議してユーザー仕様要件を確立することが、SUSに対する品質管理の重要な要素である。サプライヤーから、当該SUS製品の適格性評価データ、抽出物・溶出物に関する評価結果、リーク試験条件や無菌性保証のバリデーションデータなどの技術情報の提供を受け、サプライヤーと協議を行ないながら、その品質管理戦略を構築する。抽出物・溶出物についても各サプライヤーが取得したデータをもとにリスク評価を行ない、追加実験の要否や毒性評価の結果を判断する必要がある。また、バイオ医薬品の安定供給のためには、SUS製品の入手性などビジネス面での評価も必要になるため、試験部門だけでなく製造部門や購買部門を含めた総合的な戦略が必要である。2015年、厚労省研究班では、産官学の共同で、「シングルユースシステムを用いて製造されるバイオ医薬品の品質確保に関する提言書」がまとめられ、現在、国内外の関係者から広く意見を求めている。
著者
石井 明子 橋井 則貴 松本 真理子 香取 典子 新井 進 粟津 洋寿 磯野 哲也 井上 友美 永座 明 大山 幸仁 奥村 剛宏 梶原 大介 田熊 晋也 丹下 浩一 塚原 正義 筒井 麻衣子 寺島 伊予 中川 泰志郎 服部 秀志 林 慎介 原 芳明 松田 博行 村上 聖 矢野 高広 巌倉 正寛 大政 健史 川崎 ナナ 広瀬 明彦
出版者
一般社団法人日本PDA製薬学会
雑誌
日本PDA学術誌 GMPとバリデーション (ISSN:13444891)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.15-29, 2017 (Released:2017-12-21)
参考文献数
17

The use of single-use systems has been getting more popular in biologics manufacturing. Utilization of this novel technology enables the efficient manufacturing, including prevention of cross contamination, flexibility to manufacture multiple products, and elimination of the need for cleaning and steam sterilization including those validations. In order to ensure the quality and stable supply of biologics, appropriate risk management considering the characteristics of the system is necessary. However, there is no regulatory document describing the examples or recommendations on it. In 2015, we published the White paper of “Approaches to Quality Risk Management When Using Single-Use Systems in the Manufacture of Biologics” in AAPS PharmSciTech, which was a fruit of discussion in the research group consisting of Japanese pharmaceutical manufacturers, single-use suppliers, academia and regulatory agencies. This review introduces the contents of the White paper with some revision reflecting the comments on it as well as the discussion in our research group after publishing the paper. The basic concept is consistent with ICH guideline on quality risk management. Here we describe the points to consider in risk assessment as well as in risk control when single-use systems are used in biologics manufacturing.
著者
日本 PDA 製薬学会技術教育委員会 小島 威 須賀 尚 綱島 大介 橋本 葭人 檜山 行雄 前田 仁 2009-2011 日本 PDA 製薬学会 技術教育委員会メンバー 上田 龍 榎本 将雄 奥村 剛宏 柿木 宏一 鎌田 謙次 紀井 良明 黒田 弘文
出版者
一般社団法人日本PDA製薬学会
雑誌
日本PDA学術誌 GMPとバリデーション (ISSN:13444891)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-24, 2016

QbD<sup>1)</sup>開発を経ていない医薬品を ICH<sup>2)</sup>ビジョンに基づき各社のシステムに取り込むためには,それぞれの製品に QbD による製品・工程理解が必要となる。そのためには,利害関係者間での必要性の共通認識,会社内の連携,経営資源の配分など運営的な課題と具体的な手法の提示,薬事手続きに関する不安という課題がある。これらの課題に取り組み,既存品の置かれている現状解析から,品質・生産におけるリスクのみならず,行政動向を踏まえると薬事的なリスクも抱えることとなることを指摘し,既存品に対する QbD 適用の必要性を考察した。上市後 16 年経過した経口錠剤の溶出性低下をトリガーとした QbD 適用事例を示した。この事例は開発情報・実生産情報を基にした CQA<sup>3)</sup>確認,データマイニング<sup>4)</sup>,追加実験,改善検討,管理戦略の再構築という流れになっている。続いて,変更管理の全体的流れを整理した上で,前出の事例をもとに複数の管理戦略選択肢を上げ,それぞれに対する薬事手続きを考察した。さらに,既存薬に Q8<sup>5)</sup>適用する場合の社内体制とデータの扱いを検討した。変更提案をきっかけとした短期的な取り組みと継続的改善を達成する長期的な取り組みに分け検討を進め,リスクアセスメントのベースとなるデータの種類・所在をまとめた上で必要な社内機能を考察した。検討した既存品 QbD をまとめ,新規開発における QbD との比較検討を行ったところ,双方に共通したベストプラクティスがあることが認識された。その上で,『商用生産 QbD の推進』を総括的な結論とした。<br> 本検討は 2009 年から 2011 年にかけ行われ,2011 年 10 月 4 日に成果発表会を開催した。<br>