著者
江馬 眞 原 洋明 松本 真理子 広瀬 明彦 鎌田 栄一
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第34回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.5026, 2007 (Released:2007-06-23)

食品添加物として使われているpolysorbate 80 (PS80)のラットにおける発生神経毒性をOECD試験ガイドライン・ドラフトに準拠して実施した。ラットの妊娠0日から分娩後21日まで、0, 0.018, 0.13, 1.0または7.5%のPS80 (0, 0.04, 0.25, 1.86, or 16.78 ml/kg bw/day)を含む飲水を自由摂取させた。妊娠ラットは自然分娩させ、児は21日に離乳させた。妊娠中及び授乳中の母ラットの体重は7.5%投与群で有意に低かった。繁殖指標へのPS80投与に関連した影響は認められなかった。児の生後14-15日、 17-18日、 20-21日、 33-37日及び60-66日の20時、2時、8時及び14時に測定した自発運動量にはPS80投与の影響はみられなかった。耳介開展、毛生及び切歯萌出等の発育指標、性成熟、正向反射、負の走地性、瞳孔反射、耳介反射、疼痛反応、空中正向反射にはPS80投与の影響は観察されなかった。条件回避反応については、生後23-27日の検査において7.5%投与群の雌雄の児で回避反応率の低下がみられたが、生後60-67日の検査ではいずれのPS80投与群にも投与の影響は認められなかった。離乳前及び離乳後の児体重は7.5%投与群の雌雄で対照群に比べて有意に低かった。生後22日及び70日の雌雄の児の主要器官重量にPS80投与の影響はみられず、脳、脊髄及び座骨神経の病理組織学的所見にもPS80投与の影響は観察されなかった。以上の結果から、ラットの妊娠中及び授乳中にPS80を含む飲水を与えたとき、母体及び児の体重低下を引き起こす7.5%投与群において一過性の条件回避反応率の低下が惹起されることが明らかになった。本実験におけるNOAELは1.0% (1.86 ml/kg bw/day)と考えられた。
著者
峯 篤史 松本 真理子 伴 晋太朗 矢谷 博文
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.115-123, 2022 (Released:2022-04-27)
参考文献数
18

CAD/CAMレジン冠が保険導入されて8年をむかえようとしている.この間,本治療法の向上のために日本補綴歯科学会会員は,基礎研究データおよび臨床エビデンスを蓄積してきた.本稿ではその成果である「現在推奨されている接着技法」,「全臨床アウトカム」をまとめ,それらの最新情報から導かれる「具体的な臨床術式」および「患者説明のあるべき姿」を提案する.CAD/CAMレジン冠の治療を成功させる要素は多岐にわたり,歯科医はこれらを総合的にマネージメントする必要がある.さらに,新規メタルフリー治療として日本からの発信を達成するために刷新すべきドグマや臨産官学民連携について吟味したい.
著者
二宮 有輝 松本 真理子
出版者
一般社団法人 日本児童青年精神医学会
雑誌
児童青年精神医学とその近接領域 (ISSN:02890968)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.597-613, 2018-11-01 (Released:2020-02-28)
参考文献数
42

【問題と目的】日本の大学生を対象にSNSの活動データを収集し,抑うつ症状を伴う青年におけるSNS上の特徴を明らかにすることを目的とした。【方法】Twitterを利用している大学生158名(男性94名,女性63名,不明1名,平均年齢18.89,SD=0.90,有効回答率73.8%)を分析対象として,抑うつ得点に基づき,正常群(57名),軽度群(75名),中程度以上群(26名)に群分けした。各参加者のTwitterから1カ月分の活動データを収集し,群間の差異を検討した。【結果および考察】Twitter活動データについて群間の差異を検討した結果,正常群に比して,軽度群および中程度以上群の方が午前中のオリジナルツイート(独り言)の割合が高くなる傾向が認められた。午前中のオリジナルツイート1,919件を対象にテキストマイニングを用い,対応分析により抑うつ群変数と抽出語との関連を検討した結果,「現実生活の多忙さ」と「現実生活からの逃避」の2成分が得られた。また,対応分析の布置図から,軽度群では学業などの現実生活の多忙さが表現されやすく,中程度以上群では学業からの逃避態度や,躁的な防衛と考えられる特徴がTwitter上に表現されやすいことが示された。今後は午前中のツイートだけでなく,対象とする投稿の範囲を広げ,本研究で得られた示唆が投稿全体に認められるのかどうかを検討する必要があるだろう。
著者
杉田 和俊 松本 真理子 稲葉 洋平 遠藤 治 内山 茂久 欅田 尚樹
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.253-257, 2013-03-05 (Released:2013-04-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

This research examined gas chromatograph/mass spectrometer (GC/MS) measurements for nicotine and 4-ethenylpyridine, which are passive smoking markers of environmental tobacco smoke. Since the object ingredient was a polar compound, a comparison examination was performed using both a non-polar column (DB-5) and a mid-polar column (DB-17) for analysis. Of the two columns, as a result of comparing the peak shape, sensitivity, and linearity, it was found that DB-17 is suitable for measuring nicotine and 4-ethenylpyridine, which is a substitute compound of 3-ethenylpyridine. When the nicotine concentration determined by the GC/MS method was compared with that of the GC/FID method, which was the regulating method, the concentration as determined by the GC/MS method was about 30% lower than that of the GC/FID method. It was suggested that measurements by GC/FID include other organic components. When tobacco smoke (the gaseous and particle components of mainstream smoke and sidestream smoke) was measured using this GC/MS condition, nicotine was detected in all samples, except for the gaseous component of the mainstream smoke, and 3-ethenylpyridine was only detected in the gaseous component of sidestream smoke.
著者
丹治 光浩 松本 真理子
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-8, 2014-03

本研究の目的は、わが国の臨床場面において使用されているロールシャッハ技法の実態とそれに対する臨床家の意識について調査し、ロールシャッハ・テスト教育の今後の方向性を探ることである。ロールシャッハ・テスト関連の2 つの学会名簿から無作為抽出した588 名を対象にアンケート調査を実施した結果、最初は片口法で学んだ者が最も多いものの(60%)、現在は包括システムで実施している者が最も多かった(59%)。また、使用技法を変更した者が51%にみられ、そのほとんどが片口法から包括システムへの変更であった。その理由としては、エビデンスの存在、分析・解釈の容易さなどが挙げられた。一方、解釈には形式分析のみでなく、内容分析や継列分析を盛り込むとした回答が多く、わが国の臨床家が統合的な解釈を実践していることが示唆された。ロールシャッハ・テストに対する課題としては、「スコアリングの難しさ」「研修の機会」「職場の理解」「技法の違いをめぐる対立」「大学院教育の充実」などが挙げられ、今後のロールシャッハ・テスト教育のあり方を検討する必要性が考えられる。
著者
峯 篤史 萩野 僚介 伴 晋太朗 松本 真理子 壁谷 知茂 矢谷 博文
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.135-141, 2022-05-25 (Released:2022-06-20)
参考文献数
13

2014年に保険導入されてから8年間で,CAD/CAMレジン冠は日本の臨床に着々と普及してきている.この新規補綴装置の質を向上させるために,わが国は「臨産官学民連携」で奮起してきた.臨床研究の成果として4年予後調査では,小臼歯CAD/CAMレジン冠の生存率は96.4%であり,脱離をトラブルと捉えた場合の成功率は77.4%であった.基礎的データの蓄積も進み,マトリックスレジンを被着対象としたレジンプライマーの有用性が明らかとなっている.このように,CAD/CAMレジン冠の臨床と基礎研究から,さらなるコンポジットレジン系材料としての可能性がみえてきている.今後,「日本独自のメタルフリー治療」が確立されるために,歯科理工学会にも強く期待せずにはいられない.本総説の内容は第78回日本歯科理工学会学術講演会(担当校:岡山大学)における学会主導型シンポジウム「さらなるコンポジットレジン系材料の可能性を探る!」で発表した.
著者
山内 星子 松本 真理子 織田 万美子 松本 寿弥 杉岡 正典 鈴木 健一
出版者
日本学校心理学会
雑誌
学校心理学研究 (ISSN:13465732)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.47-54, 2020-12-31 (Released:2021-04-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本稿の目的は,大学で行われた新型コロナウイルス感染症流行下の学生支援実践を報告することである。2019年度卒業式の中止を皮切りに,大学のほぼすべての活動は制限され,2020年8月現在も登校禁止の状況が続く。筆者の所属する名古屋大学学生支援センターにおいて行われた支援を,不適応を呈した学生,その家族,関係教職員を対象とした三次支援,現時点では不適応を呈していないがその可能性の高い者を対象とした二次支援,全構成員を対象とした一次支援の3つのレベルに分けて報告する。
著者
陳 佳怡 松本 真理子 CHEN Jiayi MATSUMOTO Mariko
出版者
名古屋大学大学院教育発達科学研究科
雑誌
名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要. 心理発達科学 (ISSN:13461729)
巻号頁・発行日
no.66, pp.1-6, 2020-01-31

Asians have shown a tendency of being reluctant to seek help from others. It is important to not only understand what factors affect help-seeking in order to promote help-seeking behaviors, but also necessary to examine the influence of situational differences and cultural background in help-seeking. In the present review, studies of help-seeking in China were classified into 4 categories: 1) demographic variables, 2) personality variables, 3) network variables, and 4) helper and method. In general, the findings from the literature on revealed many studies on gender differences, type of helpers and help-seeking behaviors, but very few studies were found on the psychological factors that affect help-seeking among Chinese students compared to other countries. Consequently, this gap points to the need for more research emphasis on Chinese children and adolescent 1) help-seeking intentions and attitudes 2) the psychological variables which affect Chinese children and adolescent help-seeking behaviors, and 3) help-seeking attitudes among Chinese international students studying abroad.
著者
石井 明子 橋井 則貴 松本 真理子 香取 典子 新井 進 粟津 洋寿 磯野 哲也 井上 友美 永座 明 大山 幸仁 奥村 剛宏 梶原 大介 田熊 晋也 丹下 浩一 塚原 正義 筒井 麻衣子 寺島 伊予 中川 泰志郎 服部 秀志 林 慎介 原 芳明 松田 博行 村上 聖 矢野 高広 巌倉 正寛 大政 健史 川崎 ナナ 広瀬 明彦
出版者
一般社団法人日本PDA製薬学会
雑誌
日本PDA学術誌 GMPとバリデーション (ISSN:13444891)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.15-29, 2017 (Released:2017-12-21)
参考文献数
17

The use of single-use systems has been getting more popular in biologics manufacturing. Utilization of this novel technology enables the efficient manufacturing, including prevention of cross contamination, flexibility to manufacture multiple products, and elimination of the need for cleaning and steam sterilization including those validations. In order to ensure the quality and stable supply of biologics, appropriate risk management considering the characteristics of the system is necessary. However, there is no regulatory document describing the examples or recommendations on it. In 2015, we published the White paper of “Approaches to Quality Risk Management When Using Single-Use Systems in the Manufacture of Biologics” in AAPS PharmSciTech, which was a fruit of discussion in the research group consisting of Japanese pharmaceutical manufacturers, single-use suppliers, academia and regulatory agencies. This review introduces the contents of the White paper with some revision reflecting the comments on it as well as the discussion in our research group after publishing the paper. The basic concept is consistent with ICH guideline on quality risk management. Here we describe the points to consider in risk assessment as well as in risk control when single-use systems are used in biologics manufacturing.
著者
金井 篤子 松本 真理子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、より有効な介入システムを構築するため、実際に中学校で起こってしまった事件後に行った緊急介入の際に、心理的支援を目的に実施したIES-Rデータおよび介入経過を分析した。IES-RはPTSDのハイリスク者をスクリーニングする目的で広く使用されている。その結果、事件直後は事件に暴露した生徒の60%、暴露していない生徒の9%にハイリスク群がみいだされたが、1ヶ月後にはそれぞれ4%、3%となった。暴露生徒の支援は当然ながら、暴露していない生徒の支援も重要であることなどが明らかとなった。
著者
松本 真理子 森田 美弥子 栗本 英和 青木 紀久代 松本 英夫 灰田 宗孝 坪井 裕子 鈴木 伸子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

子どものロールシャッハ法に関する多角的視点からの研究を包括することによって、現代に生きる日本人一般児童のパーソナリティの特徴が解明され、また日本における被虐待児の心理的特徴も明らかにされた。さらに脳画像と眼球運動という生理学的視点からも子どものロールシャッハ反応の意味するものについてアプローチした結果、国内外において初の知見が得られ、さらに発達障害児との比較などについて、現在、研究を継続中である(平成21年度~25年度科学研究費基盤研究(B)(課題番号21330159)にて継続)。これまでに得た知見は国内外の学会および論文として既に発表している。平成21年度中には図書として成果の一部を刊行する予定である(2009年9月刊行予定)。