著者
前田 仁士
出版者
学校法人 植草学園大学
雑誌
植草学園大学研究紀要 (ISSN:18835988)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.59-65, 2021-03-31 (Released:2021-03-26)

片頭痛の実態は重い神経障害であり,人口の約10%が日常的に悩んでいる。国際頭痛学会では,4 〜72時間続く再発性の原発性頭痛障害を片頭痛と定義している。頭痛は片側性かつ脈動性が多く,中等度から重度の強さが日常的な身体活動によって悪化し,めまいや悪心あるいは羞明および音過敏を伴うことが多い。片頭痛には周期的な病態の変化があり,「予兆期」,「前兆期」,「頭痛発作期」,「postdrome(後発症状)」と移行する。発作の約3 日前から体調の変化を感じる予兆期には視床下部,脳幹,大脳辺縁系,および特定の皮質領域が活性化し,約3 分の1 の患者は視覚,感覚,言語または脳幹の障害からなる前兆を伴う時期があるが,その際大脳皮質に特有の“spreading depression (CSD)”が生じる。Postdrome ではめまい,倦怠感,身体の痛み,集中力の欠如,抑うつ症状などが残存し,これが仕事などに対する意欲の低下にもつながる問題となっている。片頭痛の発症メカニズムは1938 年から研究され始め,現在も治療薬開発のために世界各国で研究が続いているが,近年になって分子生物学や画像解析技術の進歩により,ようやくその病態解明に光明が現れている。
著者
前田 仁一郎 斎藤 清克
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.75-85, 1997-04-24
参考文献数
55
被引用文献数
4

日高火成活動帯では古第三紀の苦鉄質深成岩体が白亜紀後期から古第三紀初期の付加体の中に貫入している。日高山脈には苦鉄質深成岩類・高温型の変成岩類・アナテクサイトからなる日高火成活動帯の地殻断面が露出している。この地殻断面から2つの性質の異なったマントル由来未分化マグマ, Nタイプ中央海嶺玄武岩(N-MORB)質と高Mg安山岩(HMA)質, が見いだされた。N-MORBとHMAの組み合わせは海嶺と海溝の衝突モデルによって説明することができる。すなわちNMORBはクラー太平洋拡大軸にそって上昇するアセノスフェア(レルゾライト質, ε_<Sr>-27. 79, ε_<Nd>-+10. 71)に由来し, HMAは海嶺沈み込みによってもたらされた熱異常によって上盤プレートのくさび状マントル(ハルツバーガイト質, ε_<Sr>=+2.17, ε_<Nd>=+2.84)から発生した。マントル由来未分化マグマの付加体底部への透入によってグラニュライト相に達する高温型変成作用とアナテクシスが発生し, 珪長質の変成岩類とカルタアルカリ質のマグマが形成された。マントル由来未分化マグマの地殻内での分化作用は付加体構成物の同化作用を伴った。マントル由来マグマとアナテクシスによる地殻由来メルトとの混合もまたカルクアルカナ質の火成岩類をもたらした。すなわち, 以上のようなプロセスの複合によって未成熟大陸地殻が前弧域で形成される。付加体と衝突する海洋底拡大軸の火成作用と変成作用は, 玄武岩組成の海洋地殻が形成される通常の中央海嶺でのそれらとは著しく異なる。これら2つのセッティングの比較から, 大陸地殻の形成にとって厚い堆積岩類が本質的に重要な役割を果たしていることが示される。海嶺の沈み込みは始生代の大陸地殻の成長にとって重要な事件であったであろう。日高火成活動帯で観察されたマントル由来マグマの迸入によって誘発される地殻内マグマプロセスは火成弧深部のそれのアナログである。
著者
岡村 聡 坂本 泉 金 容義 石塚 治 湯浅 真人 冨士原 敏也 藤岡 換太郎 倉本 能行 前田 仁一郎
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.7, 2007

孀婦岩構造線は,伊豆・小笠原弧を北部と南部に二分する大構造線であり,北北東―南南西方向の走向を示し,その東側斜面に沿って比高最大1500mの急崖が発達し,地殻の深部断面を観察することができる.<Br> 孀婦岩構造線の南東に位置する沢海山は,鮮新世の活動年代を示す火山フロント帯火山であり,島弧玄武岩の化学組成を示す.<Br> 孀婦岩構造線沿いに観察される地殻断面(孀婦地塊)は,後期中新世を示す塊状の溶岩・貫入岩とハイアロクラスタイト及び,それらを供給するフィーダーダイク・溶岩が観察される.孀婦地塊を基盤とする背弧側には中新世~鮮新世に活動した小海丘群が存在する.孀婦地塊と小海丘群の火成岩類は,いずれも背弧海盆玄武岩の特徴を示す点で共通するが,後者はIndian Ocean MORBタイプアセノスフェアの寄与が大きかったことを示唆する.
著者
松本 剛 宮下 純夫 荒井 章司 森下 知晃 前田 仁一郎 熊谷 英憲 大友 幸子 DICK Henry J. B.
出版者
東京地学協会
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.112, no.5, pp.705-719, 2003-10-25
参考文献数
20
被引用文献数
6 4

To characterise the crust-mantle boundary (petrological Moho) and to find evidence of ophiolite model, we investigated the lithology and the development process of the oceanic crust. We carried out geological and geophysical studies of Atlantis Bank core complex located at the eastern margin of the Atlantis-II active transform in the Southwest Indian Ridge (SWIR) using deep sea submersibles and remotely operated vehicles. Unaltered lower crust and uppermost mantle rocks were observed at the southwestern slope of Atlantis Bank. The lower crust of this part of Atlantis Bank is similar to the ophiolite exposed ashore. On the other hand, a large number of dike intrusions into gabbroic massifs were observed at the eastern wall and at the southern slope of the bank. This corresponds to the dike-gabbro transition in the ophiolite model. Dike intrusions were also observed in the mantle peridotite domains. This may, however, suggest melt intrusions into the bank near the spreading axis posterior to the mantle peridotite that was dragged out along the detachment faults, or may suggest possible horizontal melt intrusion from the segment centre to the segment edge characterised by a thin plutonic layer. The northern ridge-transform intersection RTI of the Atlantis-II active transform presents an L-shaped nodal basin, while the southern RTI presents a V-shaped one. The difference between northern and southern RTI types suggests differences in the structure and basement rock types. A fossil transform fault and RTI relics at the northern side of the spreading axis west of the Atlantis-II active transform were observed, suggesting a sudden change of the spreading direction in SWIR from 20 Ma
著者
日本 PDA 製薬学会技術教育委員会 小島 威 須賀 尚 綱島 大介 橋本 葭人 檜山 行雄 前田 仁 2009-2011 日本 PDA 製薬学会 技術教育委員会メンバー 上田 龍 榎本 将雄 奥村 剛宏 柿木 宏一 鎌田 謙次 紀井 良明 黒田 弘文
出版者
一般社団法人日本PDA製薬学会
雑誌
日本PDA学術誌 GMPとバリデーション (ISSN:13444891)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-24, 2016

QbD<sup>1)</sup>開発を経ていない医薬品を ICH<sup>2)</sup>ビジョンに基づき各社のシステムに取り込むためには,それぞれの製品に QbD による製品・工程理解が必要となる。そのためには,利害関係者間での必要性の共通認識,会社内の連携,経営資源の配分など運営的な課題と具体的な手法の提示,薬事手続きに関する不安という課題がある。これらの課題に取り組み,既存品の置かれている現状解析から,品質・生産におけるリスクのみならず,行政動向を踏まえると薬事的なリスクも抱えることとなることを指摘し,既存品に対する QbD 適用の必要性を考察した。上市後 16 年経過した経口錠剤の溶出性低下をトリガーとした QbD 適用事例を示した。この事例は開発情報・実生産情報を基にした CQA<sup>3)</sup>確認,データマイニング<sup>4)</sup>,追加実験,改善検討,管理戦略の再構築という流れになっている。続いて,変更管理の全体的流れを整理した上で,前出の事例をもとに複数の管理戦略選択肢を上げ,それぞれに対する薬事手続きを考察した。さらに,既存薬に Q8<sup>5)</sup>適用する場合の社内体制とデータの扱いを検討した。変更提案をきっかけとした短期的な取り組みと継続的改善を達成する長期的な取り組みに分け検討を進め,リスクアセスメントのベースとなるデータの種類・所在をまとめた上で必要な社内機能を考察した。検討した既存品 QbD をまとめ,新規開発における QbD との比較検討を行ったところ,双方に共通したベストプラクティスがあることが認識された。その上で,『商用生産 QbD の推進』を総括的な結論とした。<br> 本検討は 2009 年から 2011 年にかけ行われ,2011 年 10 月 4 日に成果発表会を開催した。<br>
著者
渡辺 暉夫 新井田 清信 前田 仁一郎 在田 一則
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

神居古澤変成帯・三都変成帯およびオーストラリアのニューイングランド〓曲帯の泥質片岩の変形についてまとめ、オーストラリアのニューイングランド〓曲帯で認められた典型的シース〓曲の産状をくわしく検討した。その結果、このシース〓曲は形態状むしろ舌状〓曲というべきであって、単にsimole shear成分だけではなく、pure shear成分やshear方向の回転をともなっているものであることを明らかにした。神居古澤ではこのような変形を受けた岩石の石英ファブリックの検討も行なった。このような振動は流体相の存在によっても促進されるので、流体包有物の研究も行なった。この研究からは変形帯がductile-brittle境界を横切る時に形成されたと思われる流体包有物が確認された。全体の研究を通して、変成帯の基質を構成する岩石の変形がsimple shear,pure shear,rotation の複合によることが明かとなり、この変形はメランジュ一般に適用できるであろうことか示唆された。また本研究ではマイクロリアタ-を用いた合成実験から岩石の流動が変成反応に及ぼす効果を明らかにすることを課題としていたが、マイクロリアタ-は5Kbの条件下で2週間圧力を維持できるものしか完成しなかった。原因はガスケットに使った材質が不適当であったためである。今年4月以降、装置の改良を待ち、実験を行う予定であったが、改良されたモデルは圧力の維持がさらに悪くなっており、使用に耐えなかった。現在更に改良を要求している。2週間の実験ではFeパンペリ-石成分のものからモンモリロナイトとザクロ石が生成された。パンペリ-石が生成されない理由はさらに検討しなければならない。