著者
原 元宣 清水 武彦 福山 正文 野村 靖夫 代田 欣二 宇根 ユミ 広田 昭彦 矢後 啓司 山田 宏 石原 実
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.645-649, 1987-08-15 (Released:2008-02-13)
参考文献数
13
被引用文献数
8 9

茨城県取手市に飼育されていた犬が1985年3月27日, 激しい掻痒, 自己損傷を伴う症状を発見後に死亡, この地域ではオーエスキー病が1981年以来豚に流行していたことから本病が疑われた。剖検では病巣は検出されなかったが, 病理組織学的に延髄と頚部脊髄に著明な血管周囲の細胞浸潤, 神経膠症, ノイロノファギーを認めた。脳・脊髄の混合乳剤および肺・脾臓の混合乳剤を2頭のウサギに接種したところ, いずれも掻痒症を呈し, 4日後に死亡した。感染犬脊髄をPK-15細胞MA-104細胞に接種することにより細胞病原性を示すウイルスが分離され, 著明な円形化と巨細胞形成が認められ, ギムザ染色で核内封入体がみられた。感染PK-15細胞の電顕観察では, ヘルペスウイルス様粒子が観察され, 蛍光抗体法により抗オーエスキー病ウイルス抗体の結合が確認された。
著者
府馬 正一 宇根 ユミ 久保田 善久
出版者
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、東京電力(株)福島第一原子力発電所事故の高汚染地域における環境リスク評価および環境の放射線防護のための国際的指針作成に資することを目的として、有尾両生類の一種であるトウホクサンショウウオ(以下、サンショウウオ)を対象として高汚染地域由来の個体と実験的な長期低線量率被ばく個体を解析することにより、線量(率)-効果関係を取得するとともに、その影響メカニズムの解明を行っている。平成29年度は以下の成果が得られた。γ線連続照射実験については、これまで約5年間にわたって胚からγ線を照射し続けてきたサンショウウオ成体を、さらに1年間照射した。その結果、非照射対照と比べた体重増加は、線量率33μGy/hではやや促進され、150μGy/hでは影響が見られず、510μGy/hでは明らかに抑制された。また、対照と33μGy/hでは90 %以上の個体で第二次性徴が発現したのに対し、150 と510μGy/hで第二次性徴が発現した個体は皆無であった。汚染底質曝露実験については、福島県の高汚染地域で採取した底質に水を加えた系で1年間飼育したサンショウウオ幼生を変態させたが、幼体の皮膚に異常は生じなかった。有尾両生類であるメキシコサラマンダーで有用とされた方法を用いて造血幹細胞への照射の影響を評価したが、サンショウウオでは、反応がなく適用できなかった。細胞増殖活性については、線量率31~470μGy/hでγ線を連続照射した幼生でPCNA(増殖細胞核抗原)陽性率を調べたところ、肝細胞では31μGy/hで最高となり、腸上皮細胞では線量率依存的に高くなり、脾臓と尿細管上皮細胞では470μGy/hで顕著に高くなった。また、積算線量が2.95~24Gyとなるようにγ線を連続照射した成体では、線量依存的に腸上皮細胞のPCNA陽性率が低下し、24Gyでは肝細胞と尿細管上皮のPCNA陽性率が顕著に低下した。
著者
岩間 公男 宇根 ユミ 吉田 拓郎
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医科学と統計利用 (ISSN:18845606)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.11, pp.21-28, 1983-12-30 (Released:2010-05-31)
参考文献数
5

1962年から1982年の21年間に横浜市食肉衛生検査所で食用としてと殺された牛257, 340頭, 豚2, 408, 286頭, 馬1, 756頭, 緬山羊643頭について, 腫瘍の検出率および発生部位を調査するとともに, 検出された腫瘍 (牛114例, 豚716例) の病理組織学的分類を試みた結果, 次の成績が得られた。1) 牛における腫瘍の検出率 (10万頭あたり) は, 21年間の平均で44.3であったが, 腫瘍の検出されなかった1962, 1963年を除き, 13~102の間で変動した。豚における検出率は, 平均29.7であった。年次別には, それまで20以下であった検出率が, 1974年頃から急速に増加して, 1977年に最高 (104.5) となった後, 35~80の間で変動しながら, 除々に減少の傾向を示した。2) 家畜の種類・用途別にみた腫瘍の検出率は, 牛では乳用種66.9, 肉用種10.0, 豚では, 肥育肉豚14.4, 繁殖豚405.3で, 牛では乳用種, 豚では繁殖豚において検出率が有意に高かった (P<0.05) 。3) 腫瘍の好発器官 (上位5つ) は, 牛では消化器 (9.7) , 造血器 (8.5) , 生殖器 (7.8) および内分泌器 (6.6) , 豚では消化器 (14.3) , 泌尿器 (8.8) , 生殖器 (3.9) および造血器 (1.8) であった。4) 検出された腫瘍は, 病理組織学的に牛では38種類, 豚では25種類, 全体では50種類に分類された。しかし, 1個体に2種類以上の腫瘍が重複して認められた例はなかった。5) 検出頻度の高い腫瘍 (上位5つ) は, 牛では白血病嘲 (8.5) , 顆粒膜細胞腫 (5.8) , 副腎皮質腺腫 (3.1) , 肝細胞癌 (2.3) および肝腺腫 (1.9) , 豚では肝腺腫又は結節性増生 (13.9) , 腎芽腫 (8.7) , 白血病 (1.8) , 卵巣血管腫 (1.7) および子宮平滑筋腫 (1.5) であった。
著者
宇根 ユミ 野村 靖夫
出版者
麻布大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1)「ヒョウモントカゲモドキ由来のクリプトスポリジウムのヘビへの感染性と病原性」第137回日本獣医学会(日本大学・神奈川)申請者はヒョウモントカゲモドキ(LG)由来のクリプトスポリジウム(Cr)の宿主域とその病原性を確認するためヘビへの感染実験を行った。先の報告と同様にLG由来C.saurophilumを接種したLGの腸内容および糞便をナミヘビ科レッドコーンスネーク(Elaphe guttata guttata.CS)幼体3匹、アオダイショウ成体2匹、ボア科ボールパイソン(Python regius.BP)幼体3匹、キューバボア(Epicrates angulifer)若齢1匹計9匹に経口接種し、一部を除き各4,6,9週後(PIW)に剖検、病理学的に検索した。なお、CSとBP各1匹を無処置対照群として実験開始前に剖検した。結果、CSのみで感染が成立した。臨床症状は見られなかったが、原虫は小腸に感染し、経過とともにその数は増加した。PIW4では原虫は食道にもみられた。組織学的に粘膜上皮の過形成、絨毛の萎縮、リンパ・プラズマ細胞性炎症や腸上皮の弧在性壊死が観察され、経過とともに緩慢に進行していた。これらの病変はLGと同質であったが、Crの増殖はLGより高度で、炎症反応は軽度であった。牛のC.parvumを除けば、一般的にCrは宿主特異性が強く、種を超えて感染しないとされているが、今回、国内で分離されたLG由来Crは、トカゲ類に留まらず一部のヘビにも感染性と病原性を示した。今回感染が成立したCSはナミヘビ科のヘビで、在来種のほとんどがこの科に属していることから、広宿主域を持つCrによる飼育下爬虫類の損失と在来種への影響が懸念される病原体と考える。2)「爬虫類におけるCryptosporidiumの保有状況」第37回日本原生動物学会(山口大学・山口)3)「誌上剖検・外科病理シリーズ トカゲのデルマトフィルス症」小動物臨床(23(6):396-398,2004)4)第3回爬虫類と両生類の臨床と病理のための研究会ワークショップ「トカゲ」を2004年10月30日に麻布大学で開催し、本研究室から口頭1題(トカゲのウイルス)、ポスター6題(ヒガシウォータードラゴン(Physignathus lesueuri)の心筋症の2例 グリーンイグアナの全身性細菌性肉芽腫性炎の1例 マラカイトハリトカゲの真菌症Nannizziopsis vriesii(anamorph : Chrysosporium sp.)トカゲ類にみられたDermatophilosisツリーモニターのヘルペスウイルス感染症、フトアゴヒゲトカゲPogona vitticepsの胃原発カルチノイドの2例)を発表した。また、ワークショップで使用するテキストの作成も行った。
著者
宇根 ユミ 共田 洋
出版者
麻布大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、両生類の新興病原体であるカエルツボカビ(Bd)が在来種に与える影響を宿主と寄生体の双方を解析・評価し「なぜ日本の両生類は死なないのか」その機序解明を目的とする。その結果、ITS-1領域の違い基づくBdハプロタイプごとに、その形状、増殖態度および病原性が異なり、国内では弱毒性Bdを主流とした多種類のハプロタイプのBdが自然界で維持されていることを明らかにした。免疫抑制モデルを用いた感染実験で、一過性の不顕性感染であったことから、在来種のBd抵抗性には免疫以外の生体防御機構も働いている可能性が示唆された。また、ツボカビ症でみられる電解質の変化は皮膚の水透過性異常に起因するものと推察した。
著者
宇根 ユミ
出版者
麻布大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、外来/野生動物に流行する感染症および病原体のリスクプロファイリングを行い、その対策を確立して、我が国の生態系および生物多様性の保全に貢献しようとするものである。カエルツボカビは国内に広く、高率に分布し、国内の両生類は海外とは異なる多くのハプロタイプを有していることを明らかにし、併せて非侵襲的検査法と除菌法を確立した。ラナウイルスによる大量死事例の確認と感染実験により本ウイルスの高い病原性を明らかにした。また、国内でラナウイルスが分布を広げ、かつ保有率が急上昇していることを示した。これらの研究活動の成果を公表し、実務的な流行阻止・防除システムの構築に、有用な情報を提供した。