著者
高橋 薫 保坂 敏子 宇治橋 祐之 我妻 潤子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S42066, (Released:2018-10-04)
参考文献数
7

学習者の多様化が進む日本語教育では,多様な学習者の個人差を保管する一つの手法として,反転授業への関心が高まっている.しかし,反転授業では,デジタルコンテンツを自作することに対する技術的なハードルや,教材をLMS などにアップロードする際に生じる著作物利用の許諾申請など,著作権に関する心理的なハードルもあり,二の足を踏んでしまう人も多い.そこで,他者との対話を通して体験的に著作権を学ぶ,ワークショップ形式の著作権セミナーを開発した.セミナーの前後で質問紙調査を実施したところ,著作権に対する理解が進み,ワークショップ形式の参加型のセミナーが肯定的に評価されたことがわかった.
著者
宇治橋 祐之
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.46-72, 2018 (Released:2018-09-20)

NHK放送文化研究所では,全国の学校現場におけるメディア環境の現状を把握するとともに,放送・ウェブ・イベントなどNHK教育サービス利用の全体像を調べるために,2013年度から「教師のメディア利用と意識に関する調査」を実施している。2017年度は全日制,定時制,通信制課程の高校と中等教育学校を対象として,教師個人の調査を実施した。6月号で全日制(理科,地歴科,国語科,外国語科)の結果を中心に中等教育学校後期課程(理科,地歴科)で特徴的な結果を紹介したのに続き,本稿では定時制(理科,地歴科),通信制(理科,地歴科)の結果について報告をする。調査結果から,定時制ではパソコンやプロジェクターなどのメディア環境は,全日制と同様に整っており,NHKの放送番組や市販のDVD教材などの映像を授業で利用する教師が全日制より多かった。『NHK高校講座』またはNHK for Schoolの,放送番組あるいはウェブサイトの動画などのコンテンツを利用した「NHK高校講座・NHK for School教師利用率」は定時制理科で31%,全日制社会で22%,NHK一般番組の授業利用または,NHKが実施する教育イベント等も含めたNHKの教育サービスのいずれかでも利用した教師は,定時制理科で55%,全日制社会で41%であった。通信制のスクーリング(面接授業)で利用できるメディア環境は全日制,定時制とあまり変わらないが,全体に利用は少ない。その一方で『NHK高校講座』はスクーリング(面接授業)だけでなく,レポート課題作成や授業準備等でよく利用されていた。 定時制,通信制の教師はいずれも,授業に役立ちそうな番組を録画するなど,授業外でのメディア利用も行っていた。また,今後必要なメディアとしてタブレット端末を挙げる教師が多いなど,授業に利用できるメディアを期待する教師が多いことも明らかになった。
著者
宇治橋 祐之 渡辺 誓司
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.30-63, 2023-06-01 (Released:2023-06-20)

NHK放送文化研究所では,全国の学校現場におけるメディア環境の現状を把握するとともに,放送,インターネット,イベントなどNHKの教育サービス利用の全体像を調べるために,1950年から定期的に学校を単位として,あるいは教師個人を対象として全国調査を行ってきた。全国の小・中学校で「児童生徒向けの1人1台端末」と「高速大容量の通信ネットワーク」を一体的に整備するGIGAスクール構想の本格的な運用が始まり2年目となる2022年度は、1人1台端末の授業での利用だけでなく、家庭への端末持ち帰りとその利用状況を把握するために、中学校の教師個人を対象とした。対象教科は初めて5教科(理科、社会、国語、外国語、数学)としている。 GIGAスクール構想前の2019年度の結果と比べると、タブレット端末を利用できる環境にある教師が大幅に増加(63%→91%)、インターネットを利用できる環境にある教師(77%→93%)も増えていた。 また、生徒に1人1台ずつ配付されたパソコンやタブレット端末(「GIGAスクール端末」)を授業で生徒に利用させている教師は、5教科全体で87%であった。さらに授業で「GIGAスクール端末」を生徒に利用させている教師でみると、6割を超える教師が「家庭への持ち帰り学習」を行っていた。 授業でのメディア教材の利用についてみると、「指導者用のデジタル教科書」(33%→49%)の利用と、NHKの学校放送番組あるいはNHKデジタル教材のいずれかを利用していた「NHK for School教師利用率」(38%→49%)が増加していた。また、教科別にみると理科と社会で「NHK for School教師利用率」、外国語で「指導者用のデジタル教科書」と「学習者用のデジタル教科書」の利用が多く、教科による違いがみられた。 教師が生徒の家庭学習に行っている支援については、「紙の市販ドリルやプリント教材」「教科書」を利用した紙教材での支援が7割で多かった。ただし「アプリなどデジタルのドリル教材」など、生徒が家庭でパソコンやタブレット端末を利用して行う「デジタル教材」での支援も6割で、家庭学習の支援が多様化している様子もみられた。 またビデオ会議や資料共有、コミュニケーション機能などがある、授業と家庭学習で利用できる「学習支援ツール」は、84%の教師が利用していた。 GIGAスクール構想の実現で、教室のメディア環境は大きく変わった。家庭のメディア環境の差などの課題はあるが、授業と家庭学習を繋げられる「NHK for School」や「学習者用のデジタル教科書」などのメディア教材と「学習支援ツール」などを利用することで、生徒の学びをどう広げていけるのか、学校と家庭の両方を見渡した学習支援のトータルデザインを考える必要があると考えられる。
著者
宇治橋 祐之
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.46-69, 2021 (Released:2021-05-20)

NHKの学校教育向けサービスのポータルサイト「NHK for School」は、1996年に前身の「学校放送オンライン」が公開されて以来、年々利用者を増やしながら25年の節目を迎えた。 2018年度の「小学校教師のメディア利用と意識に関する調査」では、8割以上の教師がウェブサイト「NHK for School」を認知、7割に授業での利用経験があった。コロナ禍の休校時には、文部科学省の「子供の学び応援サイト」での推奨もあり、多くの家庭からもアクセスを集めた。 ネット展開の歴史を振り返ると、利用者が増えてきた背景には、放送番組を単にネットに置き換えるのではなく、研究者と学習に必要なメディアの要素の再検討を進めて骨格をつくり、利用者のニーズを把握・反映させながら随時改良を加えてきたことがみえてきた。 児童・生徒の1人1台端末が実現しつつあり、「個別最適な学び」と「協働的な学び」が求められる中、学校放送番組のネット展開の歴史を振り返ることで、今後の公共メディアにおける教育サービスのあり方を考える。
著者
宇治橋 祐之 大野 敏明
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.2-25, 2018

2017年、『きょうの料理』が放送60周年、『きょうの健康』、『趣味の園芸』が放送50周年を迎えた。暮らしに身近なテーマを扱ってきたこの3番組は、タイトルやテーマソングとともに、多くの人に親しまれ続けている。共通するのは、豊かな生活を送るために役立つジャンルで、時代に合ったテーマを扱いつつ、少し先んじた内容も取り上げてきたことである。さらにテキストが発行されてきたこともあり、ウェブへの展開も先進的に進められてきた。『きょうの料理』で紹介されたレシピは約4万点。基本の料理を紹介しつつ、時短料理など時代にも対応しながら役に立つレシピにこだわり続け、番組から、レシピ検索サイト、ショート動画、SNSなどにも展開してきた。『きょうの健康』の放送回数は50年間で約1万回程度。伝染病の防疫から、近年の生活習慣病やがん対策まで、健康維持と予防に努めてきた。その積み重ねがウェブサイト「NHK健康ch」に繋がっている。『趣味の園芸』は、時代に合わせて盆栽、ガーデニング、野菜づくりなどをとりあげつつ、育てるだけでなく、飾ったり撮ったりなどの楽しみ方を提案、視聴者のコミュニティ作りも進めている。ソーシャルネットワーク時代を迎え、メディアが多様化する中、現在Eテレで放送中の3番組は、老舗番組のブランド、シンプルな演出を守りつつ、新たなメディアへの展開を続けている。
著者
宇治橋 祐之 小平 さち子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.48-77, 2018 (Released:2018-07-20)

NHK放送文化研究所では、全国の学校現場におけるメディア環境の現状を把握するとともに、放送・ウェブ・イベントなどNHK教育サービス利用の全体像を調べるために、「教師のメディア利用と意識に関する調査」を2013年度から実施している。2017年度は全日制、定時制、通信制課程の高校と中等教育学校を対象として、教師個人の調査を実施した。本稿では全日制(理科、地歴科、国語科、外国語科)の結果を中心に、中等教育学校後期課程(理科、地歴科)で特徴的な結果も紹介する。調査結果から、インターネットに接続したパソコンをプロジェクターなどの提示機器に投影できる教室のメディア環境は、課程・教科に関わらず整いつつあることがわかった。メディア教材の利用は、外国語、理科、社会、国語の順に多く、理科と社会では放送番組などの動画教材の利用が多く、外国語と国語ではラジオやCDなどの音声教材の利用が多い傾向がみられた。『NHK高校講座』またはNHK for Schoolの、放送番組あるいはウェブサイトの動画などのコンテンツを利用した「NHK高校講座・NHK for School教師利用率」は全日制理科で25%、全日制社会で12%であった。また、いわゆるアクティブ・ラーニング「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」をよく実施していると回答した教師のほうが、メディアの機器やメディア教材の利用が活発であることも明らかになった。