著者
安井 義和
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第4部門 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.217-232, 2008-02

2001年6月8日に,大阪教育大学附属池田小学校で未曾有の殺害事件が起こり,8人の幼い命が奪われた。この事件を境に学校が安全であるとの神話が崩れた。同時に,普段の児童生徒が学校管理下のみならず,日常生活で如何に危険に晒されているかが各方面で取り上げられ,特に不審者対策が叫ばれ,児童生徒の安全に取り組まれてきている [1]。しかしながら,学校関係者・警察関係者等以外が今児童生徒が如何なる状況・危険の下で通学・生活をしているのかは必ずしも知られていない。そこで,大阪市教育委員会及び奈良県教育委員会が2006年の1年間に配信した不審者情報をもとに,児童生徒がどのような場所でどのような内容の危険に晒されているかを報告・分析し,更に大都市(大阪市)と地方(奈良県)での不審者情況の違いを比較・検討・分析することにより,児童生徒の安全対策の一助になることをこの論文の目的とする。On June 8, 2001, eight children were killed in Ikeda elementary school attached to Osaka Kyoiku University. This unprecedented homicide has collapsed a belief that schools were safe. A variety of sources have reported how students are jeopardized in everyday life not only under schools' observation, and roused measures to dubious characters for childrenユs security. In this paper, for the purpose of the safety measures for the children safety, the situations to which children are exposed are analyzed in detail based on the official information. Actually, it is not always known for people other than those in police or schools what kind of situations children live under, or what kind of dangers children could be exposed to. The dubious character information delivered by the Osaka City Board of Education or Nara Prefecture Board of Education in 2006 is reported and analyzed in detail such as where, when and what dangers children are exposed to.
著者
安井 義和
出版者
畿央大学
雑誌
畿央大学紀要 = Bulletin of Kio University (ISSN:13495534)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.65-72, 2017-12

0(零)は実数の加法演算で単位元という重要な存在でありながら小・中・高等学校ではその定義を論理的に学ぶことが極めて少ない。小学校1年生では1、2、3、・・・、9の並びに10を学ぶ。ここで初めて0 を学ぶが、学び方としては10でなくとも、9の次は極言すれば*でも、♯でもいい。そこで本学の「算数学」なる開講科目で数学的な演算からの観点で自然数から0を論理的に構成し、続いて負の整数を構成する。最後には -(-1)=1、3-(-1)=4などが成り立つことを示した授業実践例である。これら2つの式に4つの「-」が あるが、2つ目の式「3-(-1)=4」における「3」の直後の「-」は演算記号で、他の3つの「-」は正負の負の記号である。従って、「3-(-1)=4」を理解する際に「-(-1)=1」を用いて「3-(-1)=3+1」とするのは論理的ではない。本報告では論理的構成の理解をサポートするためにトランプカードを使用してゲーム的に理解することが特徴的である。
著者
山根 祥雄 小山 健蔵 白石 龍生 安井 義和 YAMANE Yoshio
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

近年、国内外の学校安全が脅かされ、死傷事件が後を絶たない。先例を教訓化して、同様な事件・事故の再発を防ぎ、被害を最小化するために、学校管理の強化、および死傷事件の際における緊急の組織対応のあり方の具体的かつ総合的な検討が本研究の目的である。しかし、学校安全管理、緊急の組織対応に関して、研究調査・情報・知見が決定的に不足しているので、附属池田小学校、アメリカ合衆国・コロンバイン高校、イギリス・ダンブレーン小学校を訪問し、各事件を再検証した。さらに各事件を教訓とする各国の安全管理、予防策、緊急の組織対応に関する全国的方針、および悲惨な事件の被害者のメンタル・ケアなどを学んだ。一方、学校安全を推進する国内の避難訓練にも立会い、安全管理の強化や非常時の組織体制などを調査した。ロサンゼルスの学校安全管理システムは、予防・防止・緊急の組織的対応が包括的実働的であり、参考になる。昨今、学外不審者にとどまらず、児童生徒による事件など、多様な要因、危険の増大と予測の困難な傾向であるので、立地条件に応じた一層の安全管理、迅速即応・臨機応変の対応、情報の共有化・有機的連携などが要請される。リアルな緊急組織対応のための研修や実際訓練によって、危機回避・避難・対応の着想力やスキルを培う機会の設定が不可欠である。こうして、危険性の確認、管理維持・強化、組織体制の点検、地域・家庭・学校の連携、避難訓練の継続などが必要とされる。また、学校・家庭・地域が緊密に連携し、総合的に子どもを守る取り組みが提唱され、いわばグローバルなモデルとされている。本研究が、安全確保を生存の基本として、万一の場合における安全の一層の管理・整備、予備的な対応方法の準備・訓練の契機となり、通常の学校運営への示唆ともなれば幸甚である。