著者
羽田 貴史 安原 義仁 黄 福涛 大場 淳 杉本 和弘 荒井 克弘 成定 薫 米澤 彰純
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の成果として,(1)アメリカにおける高等教育の市場化の構造を日本と比較して,日本の高等教育市場化の課題を明らかにしたこと(ローズ論文),(2)イギリスにおける大学団体の動向と課題を始めて体系的に明らかにしたこと(ロック論文),(3)アメリカ,イギリス,オーストラリア,北欧,中国,フランスの大学団体・専門団体の現状と課題を始めて明らかにし,今後の研究の基礎を作ったこと,(4)大学基準協会,国立大学協会,公立大学協会,日本私立大学連盟,日本私立大学協会という主要大学団体がはじめて参加し,大学団体の在り方を講論し,課題を整理したこと(2007年8月7日シンポジウム),(5)高等教育の市場化を支える装置である大学評価制度について,認証評価をはじめとする体系的な研究を行ったこと,(6)市場化のもとで,大学がガバナンスや組織変容を通じて適応していく方向や力学を明らかにし,調整団体・大学団体の役割を明確にしたこと,(7)国立大学関係学部長会議の資料収集と目録作成により,高等教育政策の形成過程において,これらの大学団体や組織が果たす役割を検討する基礎情報を明らかにしたことがあげられる。また,高等教育政策の形成にあたっては,大学内における学長(機関レベル),部局長(中間レベル),学科長(基礎組織レベル)の各層ごとで,統合の価値規範が異なるコーガン=ベッチャーモデルが日本でも検証でき,階層構造での葛藤を調整するガバナンスが求められることを明らかにした。大学団体・調整団体の役割は,こうしたガバナンスの構築に寄与することが期待される。
著者
喜多村 和之 大膳 司 安原 義仁 手塚 武彦 潮木 守一
出版者
広島大学
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1987

アメリカ合衆国:アメリカ合衆国の高等教育機関の設置認可は、従来は大学の自由設立の原則にもとづき、その認可機関たる州政府の関与はゆるやかで、認可の基準や手続きも簡素であったが、近年では学位の乱造の防止や消費者保護の見地から、州政府の関与の度合いもつよまり、規制が厳格化される傾向にある。いくつかの州では設置認可基準の厳格化や法制度の整備、さらには新設大学の視察・監督の強化が進行しつつある。また、アメリカ合衆国においてはすでに1930年代より民間の基準協会が一定の質的基準に到達した大学のみを会員校としてみとめ、一定期間の実地調査や事後審査にもとづいて大学の質的向上をはかる基準認定活動(Accreditation)を行なっている。連邦政府や州政府は、基準協会の認定をうけた会員校のみに公費援助の受給資格を認めており、このことが更には大学内部に自己点検と自己改善を刺激する源泉ともなっている。連合王国:イギリス高等教育の水準維持方式にはチャータリング方式とCNAA方式の2つがあり、前者は自治権を有する大学セクターにおいて、また後者はパブリック・セクターにおいて採られているものである。これらのうちCNAA方式は1964年に始まって以来20有余年間、パブリック・セクター高等教育の水準の維持・向上に大きな役割を果たしてきた。しかし最近では、形式化・官僚化の弊もみられるようになり、その改革が論議されるようになってきた。本研究ではCNAA方式によるパブリック・セクター高等教育水準維持方式の実際(とくにコース認定の手順)とその問題点および改革の基本方向について現地調査に基づき、具体的に解明した。西ドイツ:大学の設置主体はほとんどが州政府であり、私立大学の存在は例外的である。私立大学としては、従来、教会系の大学が若干存在するにすぎず、その設置根拠は、法的に明確になっていなかった。しかしながら、1976年に「大学大綱法(Hochschulrahmengesetz)」が制定されたことにより、州立大学と同等の内容を有する私立大学については、州政府により国家による認可が与えられることとなり、そのために必要な規程が、州の大学法で定められることとなった。現実に州政府が私立大学の設置認可を行うかどうか決定する際に、最も大きなウエイトを占めるものは財政状況である。西ドイツで現在最も注目されている私立大学であるヴィッテン/ヘアデッケ大学の設置認可に当たっては、所管の州であるノルトライン・ヴェストファレン州学術研究省は、最低5年間大学を運営していくに十分な資金を有しているかという点から審査した。また、認可後も、毎年その後5年間の財政計画を提出させ審査させている。しかしながら、同大学の財政状況は厳しく、一部を除き学部の大半をバーデン・ヴュルテンブルク州に移転するとともに、授業料を徴収することを計画している。フランス:ローラン・シュヴァルフ教授を委員長とする全国評価委員会(CNE)を政府レベルで設置し、既存大学の評価の作業に着手した。評価の方法に関しては、「大学の作成資料」「運用の指標12項目」「指標」の具体的項目が判明した。残された課題として、この委員会の活動が各大学の評価を一巡すればそれで終了するのか、恒常的大学評価機関として存続するのか、またその評価の結果が評価を受けた大学にどのような形でどの様な方法による改善ないし効果をもたらしたのか、さらにはCNEの評価活動が国の高等教育行政にどのようなフィード・バックするのか、等が残されている。
著者
喜多村 和之 大膳 司 安原 義仁 手塚 武彦 潮木 守一
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1987

日本の高等教育の改革と質的水準の向上にとって, 高等教育機関とくに大学の設置認可のありかた, 設置のための基準の弾力化, 適切な大学評価の方法に関する知織は緊要の課題である. しかるにこの問題に関しては, 日本国内の実態はもとより, 諸外国の事例についても情報が欠如しており, 改革実施の障害になっている. この研究は, 主要先進諸国における大学設置および大学評価の方法と実態について外国の教育情報に詳しい専門家による現地調査を行ない, 今後の日本の高等教育の改革と水準向上の施策のために資することを目的とする.(1)アメリカ合衆国の高等教育機関の設置認可は, 従来は大学の自由設立の原則にもとづき, その認可機関たる州政府の関与はゆるやかで, 認可の基準や手続きも簡素であったが, 近年では学位の乱造の防止や消費者保護の見地から, 州政府の関与の度合いもつよまり, 規制が厳格化される傾向にある. いくつかの州では設置認可基準の厳格化や法制度の整備, さらには新設大学の視察・監督の強化が進行しつつある.(2)アメリカ合衆国においてはすでに1930年代より民間の基準協会が一定の質的基準に到達した大学のみを会員校としてみとめ, 一定期間の実地調査や事後審査にもとづいて大学の質的向上をはかる基準適用活動(Accreditation)を行なっている. 連邦政府や州政府は, 基準協会の認定をうけた会員校のみに公費援助の受給資格を認めており, このことが更には大学内部に自己点検と自己改善を刺激する源泉ともなっている.(3)今年度においては, アメリカ合衆国における大学設置と大学評価システムの実態調査を実施し, 収集情報およびデータの分析は次年度において行なわれる. なお新年度にはさらにヨーロッパ諸国(イギリス, 西ドイツ, フランス)の実態調査と分析を行う予定であり, 以上の欧米諸国の関連情報とデータの比較・分析をふまえて, 日本の土壌にふさわしい大学設置と大学評価システムのありかたを考察する予定である.