著者
安川 康介 野村 恭子
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.315-319, 2012-08-25 (Released:2014-01-09)
参考文献数
9
被引用文献数
4

1)医師における性役割分担の実際について検討するため,都内某私立大学医学部同窓会に所属する医師を対象に,診療時間と家事労働時間に関する任意無記名の質問紙調査を実施した.2)週当たりの診療時間は男性の中央値が50時間,女性では40時間と女性の方が短いが,週当たりの家事労働時間は男性の中央値3時間に比べ女性は30時間であった.3)診療時間に家事労働時間を加えた労働時間は,男性医師よりも女性医師の方が長かった.4)本研究では,医師という専門職においても性別役割分担が存在していることが認められた.
著者
安川 康介 野村 恭子
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.275-283, 2014-08-25 (Released:2016-05-16)
参考文献数
66
被引用文献数
3

近年, 女性医師の勤務継続支援に関しては活発に議論されるようになってきたが,ジェンダー平等へ向けたより包括的な議論は不十分である.本稿では,日本の医学界におけるジェンダー不平等をめぐる現況について概観し,ジェンダー平等に向けた課題について考察する.医学界のジェンダー不平等の主な原因として,性役割分業を前提とした医師の長時間・不規則な勤務体制,女性医師の家庭と仕事の二重負担,女性に対する固定観念・偏見・差別等があげられる.女性であることが,医師として不利にならない労働環境を構築するために,ジェンダー平等へ向けた取組みが必要である.
著者
曽宮 正晴 岡田 玲緒奈 木下 喬弘 安川 康介 曽宮 正晴 岡田 玲緒奈 木下 喬弘 安川 康介 曽宮 正晴 岡田 玲緒奈 木下 喬弘 安川 康介
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.29-38, 2022-09

2019 年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,人類に甚大な影響を与えた未曾有のパンデミックであり,COVID-19 に対する最も有効な対策としてワクチンが注目された.新型コロナウイルスに対するワクチン(以下,新型コロナワクチン)の開発は,mRNA ワクチンやベクターワクチンという新しい技術を基にしたものが先行した.このことも影響し,国内承認を目前にメディアやSocial Networking Service(SNS)では連日,不安を煽る不正確な情報が氾濫する状況にあった.パンデミックの収束の大きな鍵となるワクチンの接種率を高めるためには,こうしたワクチン忌避を解消する取り組みが喫緊の課題であった.「こびナビ」は,日米の医師を中心とした新型コロナワクチン啓発プロジェクトであり,新型コロナワクチン及び新型コロナウイルス感染症に関する正確な情報を発信する目的で,2021年2月に設立した.特徴は専門家集団が議論を通じて科学的根拠に基づく情報を提供したことであり,発足当初より様々なSNS を活用して,より多くの人に正確な情報を発信する活動を行なってきた.本報告では特に,Clubhouse やTwitter,Instagram 等のSNS を利用した,科学的根拠に基づいたタイムリーな科学・医療コミュニケーションの実践について述べる.本活動の実践の記録が,今後の科学・医療コミュニケーションの一助になるものと期待する.
著者
安川 康介 William Stauffer
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.101-109, 2013-06-20 (Released:2013-07-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1

第三国定住の過程において、難民の健康診断は人道的及び公衆衛生学的な観点から重要である。2010年より、日本はアジアで初の第三国定住の試験的プログラムを開始し、今後受け入れる難民の数が増加する可能性がある。日本でのより充実した難民受入医療体制を整備していくための有用な資料となるように、本稿では、多くの難民を受け入れてきた実績を有する米国の難民受入体制の概要及び難民の健康診断についてまとめた。米国への難民の審査及び受け入れはUnited States Refugees Admission Programを通して、国連難民高等弁務官事務所や国際移住機関などの国際機関、米国の関係省庁、非政府組織の密な連携のもとで実施されている。入国前の健康診断では、米国疾病予防管理センターの作成するマニュアルに基づいて、活動性肺結核や未治療の性感染症などの公衆衛生学的に問題となりうる疾患、危険な行為を伴う身体疾患・精神疾患、薬物依存・乱用等の有無が診断される。2007年以降、従来の胸部X線と喀痰塗抹による結核検査に加え 培養検査と感受性試験が追加されたことにより、米国内での難民結核症例数は減少傾向にある。米国に定住した難民には、90日以内の健康診断が推奨されており、検査項目は入国前の推定治療の有無や難民の出身地を考慮したものとなっている。Voluntary agenciesによる支援や医療通訳サービスが、難民の医療受診に重要な役割を果たしている。難民の健康診断ガイドラインの存在や医療通訳制度など、様々な長所を有する米国の難民受入医療体制だが今後の課題として、国内外の医療従事者間のコミュニケーションの向上、各州における受入医療体制の標準化、精神疾患の診断・治療の向上などが必要である。