著者
安藤 香織
出版者
岐阜大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

茶谷らはRu3(CO)12触媒を用いる(pivaloylaminomethyl)pyridineのメチル基C-H結合の活性化によるエチレンおよび水存在下でのレジオ選択的カルボニル化反応を最近報告した。我々は反応機構に興味を持ち、触媒の初期構造としてRuにピリジン窒素、1分子のCO、1分子のエチレンの配位した錯体Aを用いて分子軌道計算による反応の解析を行った(B3LYP/6-31G*(Ru:lanl2dz))。近傍にあるアミドN-H結合へのRuの酸化的付加、エチレンのRu-H結合への挿入の後、近傍にあるC-H結合のRuへの酸化的付加、還元的脱離によるエタンの生成と2つのCOの配位、COのRu-C結合への挿入と空いた配位座へのCOの配位、還元的脱離によるサクシンイミドの生成により生成物が得られると説明される。C-H結合の酸化的付加の活性化エネルギーは24.6 kcalであり、この段階が律速である。茶谷らはD化された基質を用いて同位体効果を調べ(KIE: 3.8)、C-H結合の開裂が律速段階であると結論しており、我々の計算結果と一致する。また、ピバロイル部分のメチル基を1つエチル基に換えた基質でもメチル部分で反応が進行すると報告されているため、律速段階の遷移状態計算を行った所、6個の構造が得られメチルで反応する最も安定な構造はエチルで反応するものより160 ℃、17気圧下2.84 kcal/mol安定で、ボルツマン分布も考えると99.5:0.5の選択性となり実験結果とよく一致した。立体障害が主な要因であると考えられる。なお、反応系中生成する不活性錯体Bは水との反応でCO配位子がCOOHに変わり、同時にアミドのNがプロトン化されルテニウムから脱離することによって活性錯体Aに変化することが分かった。活性化エネルギーは34 kcal/molで、このために160℃の加熱が必要となる。
著者
安藤 香織 大沼 進
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1607, (Released:2017-09-13)
参考文献数
27

本研究では,北海道,東北,関東,中部,関西の5地域の大学生を対象とした質問紙調査により,東日本大震災後の節電行動の規定因を検討した。東日本大震災後には日本全国で電力供給量不足が深刻となり,節電の呼びかけが行われた。駅や公共施設などでは照明を暗くするなどの節電が行われた。先行研究では,周りの多くの他者がその行動を実行しているという記述的規範が環境配慮行動に影響を及ぼすことが指摘されている(e.g., Schultz, 1999)。本研究では,公共の場での節電を観察することが記述的規範として働いたのではないかという仮説を検討した。質問紙調査の有効回答数は計610名であった。分析の結果,公共施設等での節電の体験,他者の実行度認知共に個人の節電行動に有意な影響を及ぼすことが確認された。また,震災による価値観の変化,エネルギー問題の深刻性認知,計画停電の体験,地域の電力不足の認知も節電行動に有意な影響を及ぼしていた。災害後で電力供給力が逼迫しているという特殊な状況下においても記述的規範が節電行動に影響を及ぼすことが確認された。最後に公共の場で節電が個人の節電行動に及ぼす効果についての議論を行った。
著者
安藤 香織 竹橋 洋毅 梅垣 佑介 田中 里奈
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.2102, (Released:2022-08-20)
参考文献数
35

本研究では,人類にとって新規のリスクである新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について,リスク認知,不安感情と関連する要因を検討した。先行要因として,性別,年代,及び情報接触を検討した。本調査はオンラインによって実施し,1,555名の有効回答を得た。分析の結果,女性の方が一貫して新型コロナウイルスに関するリスクを高く認知しており,不安感情が高かった。年代については,リスク認知は60代が高いが,不安感情は年代による差が見られず,感染確率の評価は60代が最も低くなっていた。リスク認知はテレビ,ネットニュースからの情報接触との関連が強かったが,不安感情はSNSとの関連が強かった。また,自身の感染確率を他者よりも低く見積もるという楽観性バイアスも確認された。本研究の結果からは,性別,年代によって新型コロナウイルスのリスクの捉え方が異なることが示された。新型コロナウイルスをめぐるリスク・コミュニケーションは,これらの差異をふまえて行われる必要があることが示唆された。
著者
安藤 香織 大沼 進 安達 菜穂子 柿本 敏克 加藤 潤三
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1816, (Released:2019-03-26)
参考文献数
40

本研究では,環境配慮行動が友人同士の相互作用により伝播するプロセスに注目し,調査を行った。友人の環境配慮行動と,友人との環境配慮行動に関する会話が実行度認知や主観的規範を通じて本人の環境配慮行動の実行度に及ぼす影響を検討した。調査は大学生とその友人を対象としたペア・データを用いて行われた。分析には交換可能データによるAPIM(Actor-Partner Interdependence Model)を用いた。その結果,個人的,集合的な環境配慮行動の双方において,ペアの友人との環境配慮行動に関する会話は,本人の環境配慮行動へ直接的影響を持つと共に,実行度認知,主観的規範を介した行動への影響も見られた。また,ペアの友人の行動は実行度認知を通じて本人の行動に影響を及ぼしていた。結果より,友人同士は互いの会話と相手の実行度認知を通じて相互の環境配慮行動に影響を及ぼしうることが示された。ただし,環境配慮行動の実施が相手に認知されることが必要であるため,何らかの形でそれを外に表すことが重要となる。環境配慮行動の促進のためには環境に関する会話の機会を増やすことが有用であることが示唆された。
著者
安藤 香織 大沼 進
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.128-135, 2018 (Released:2018-03-03)
参考文献数
27

本研究では,北海道,東北,関東,中部,関西の5地域の大学生を対象とした質問紙調査により,東日本大震災後の節電行動の規定因を検討した。東日本大震災後には日本全国で電力供給量不足が深刻となり,節電の呼びかけが行われた。駅や公共施設などでは照明を暗くするなどの節電が行われた。先行研究では,周りの多くの他者がその行動を実行しているという記述的規範が環境配慮行動に影響を及ぼすことが指摘されている(e.g., Schultz, 1999)。本研究では,公共の場での節電を観察することが記述的規範として働いたのではないかという仮説を検討した。質問紙調査の有効回答数は計610名であった。分析の結果,公共施設等での節電の体験,他者の実行度認知共に個人の節電行動に有意な影響を及ぼすことが確認された。また,震災による価値観の変化,エネルギー問題の深刻性認知,計画停電の体験,地域の電力不足の認知も節電行動に有意な影響を及ぼしていた。災害後で電力供給力が逼迫しているという特殊な状況下においても記述的規範が節電行動に影響を及ぼすことが確認された。最後に公共の場で節電が個人の節電行動に及ぼす効果についての議論を行った。
著者
前田 洋枝 杉浦 淳吉 安藤 香織
出版者
NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.12-23, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
34

環境政策に関する科目において,Covid-19の流行により2020・2021年度に説得納得ゲームをZoomのブレイクアウトルームを使用してオンラインで実践し,2019年度の対面授業での実践と比較した.2020年度は説得納得ゲーム相互観察版を参考にしつつ,独自の改変点として説得者が被説得者に説得を行う説得セッションと観察者が説得者・被説得者に対して気づいた点をフィードバックするフィードバックセッションを交互に行うなどした.2021年度は説得者1名・被説得者2~3名とし,説得者が複数の被説得者に説得できるようにするなどした.最後にオンラインでの実践の成果・長所と課題・展望について,2021年度のゲーム後のアンケートの結果も提示しながら,参加者はオンラインでのゲーム体験からも説得が成功した時の喜びや達成感を感じ,環境配慮行動への理解を深めたことや,ブレイクアウトルームの自動割当機能を使用する利点やアイデアカードの活用について論じた.
著者
安藤 香織 大沼 進 安達 菜穂子 柿本 敏克 加藤 潤三
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1-13, 2019 (Released:2019-08-23)
参考文献数
40
被引用文献数
1

本研究では,環境配慮行動が友人同士の相互作用により伝播するプロセスに注目し,調査を行った。友人の環境配慮行動と,友人との環境配慮行動に関する会話が実行度認知や主観的規範を通じて本人の環境配慮行動の実行度に及ぼす影響を検討した。調査は大学生とその友人を対象としたペア・データを用いて行われた。分析には交換可能データによるAPIM(Actor-Partner Interdependence Model)を用いた。その結果,個人的,集合的な環境配慮行動の双方において,ペアの友人との環境配慮行動に関する会話は,本人の環境配慮行動へ直接的影響を持つと共に,実行度認知,主観的規範を介した行動への影響も見られた。また,ペアの友人の行動は実行度認知を通じて本人の行動に影響を及ぼしていた。結果より,友人同士は互いの会話と相手の実行度認知を通じて相互の環境配慮行動に影響を及ぼしうることが示された。ただし,環境配慮行動の実施が相手に認知されることが必要であるため,何らかの形でそれを外に表すことが重要となる。環境配慮行動の促進のためには環境に関する会話の機会を増やすことが有用であることが示唆された。
著者
安藤 香織 大沼 進 安達 菜穂子 柿本 敏克 加藤 潤三
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
2019

<p>本研究では,環境配慮行動が友人同士の相互作用により伝播するプロセスに注目し,調査を行った。友人の環境配慮行動と,友人との環境配慮行動に関する会話が実行度認知や主観的規範を通じて本人の環境配慮行動の実行度に及ぼす影響を検討した。調査は大学生とその友人を対象としたペア・データを用いて行われた。分析には交換可能データによるAPIM(Actor-Partner Interdependence Model)を用いた。その結果,個人的,集合的な環境配慮行動の双方において,ペアの友人との環境配慮行動に関する会話は,本人の環境配慮行動へ直接的影響を持つと共に,実行度認知,主観的規範を介した行動への影響も見られた。また,ペアの友人の行動は実行度認知を通じて本人の行動に影響を及ぼしていた。結果より,友人同士は互いの会話と相手の実行度認知を通じて相互の環境配慮行動に影響を及ぼしうることが示された。ただし,環境配慮行動の実施が相手に認知されることが必要であるため,何らかの形でそれを外に表すことが重要となる。環境配慮行動の促進のためには環境に関する会話の機会を増やすことが有用であることが示唆された。</p>
著者
安藤 香織 大沼 進 安達 菜穂子 柿本 敏克 加藤 潤三
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1-13, 2019

<p>本研究では,環境配慮行動が友人同士の相互作用により伝播するプロセスに注目し,調査を行った。友人の環境配慮行動と,友人との環境配慮行動に関する会話が実行度認知や主観的規範を通じて本人の環境配慮行動の実行度に及ぼす影響を検討した。調査は大学生とその友人を対象としたペア・データを用いて行われた。分析には交換可能データによるAPIM(Actor-Partner Interdependence Model)を用いた。その結果,個人的,集合的な環境配慮行動の双方において,ペアの友人との環境配慮行動に関する会話は,本人の環境配慮行動へ直接的影響を持つと共に,実行度認知,主観的規範を介した行動への影響も見られた。また,ペアの友人の行動は実行度認知を通じて本人の行動に影響を及ぼしていた。結果より,友人同士は互いの会話と相手の実行度認知を通じて相互の環境配慮行動に影響を及ぼしうることが示された。ただし,環境配慮行動の実施が相手に認知されることが必要であるため,何らかの形でそれを外に表すことが重要となる。環境配慮行動の促進のためには環境に関する会話の機会を増やすことが有用であることが示唆された。</p>
著者
安藤 香織 大沼 進 安達 菜穂子 柿本 敏克 加藤 潤三
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
2019

<p>本研究では,環境配慮行動が友人同士の相互作用により伝播するプロセスに注目し,調査を行った。友人の環境配慮行動と,友人との環境配慮行動に関する会話が実行度認知や主観的規範を通じて本人の環境配慮行動の実行度に及ぼす影響を検討した。調査は大学生とその友人を対象としたペア・データを用いて行われた。分析には交換可能データによるAPIM(Actor-Partner Interdependence Model)を用いた。その結果,個人的,集合的な環境配慮行動の双方において,ペアの友人との環境配慮行動に関する会話は,本人の環境配慮行動へ直接的影響を持つと共に,実行度認知,主観的規範を介した行動への影響も見られた。また,ペアの友人の行動は実行度認知を通じて本人の行動に影響を及ぼしていた。結果より,友人同士は互いの会話と相手の実行度認知を通じて相互の環境配慮行動に影響を及ぼしうることが示された。ただし,環境配慮行動の実施が相手に認知されることが必要であるため,何らかの形でそれを外に表すことが重要となる。環境配慮行動の促進のためには環境に関する会話の機会を増やすことが有用であることが示唆された。</p>